なぜ外国人の「在留資格」を厳格化するのか~危うい「なし崩し的」対応~
政府は昨年、外国人が日本で起業する際に必要な在留資格「経営・管理」の資本金や出資総額の取得要件を500万円から3千万円に引き上げました。
そもそもは、国内企業で経営に関わる外国人を広く迎えたいとのねらいで始まった在留資格だったはずが、廃業検討やエスニック料理店などの閉店といった死活的な影響が出ています。
さらに、在留資格の更新や変更は現行の6千円から最大7万円程度へ、永住許可は1万円から20万円程度へ大幅に値上げされる方向です。
この一連の動きは、参政党の伸長など排外的な世論の動静に呼応したものと思われますが、どうしても違和感があります。
なぜならば、急激な人口減により深刻な人手不足が顕在化していて、その穴埋めに外国人労働者は必要ではないかと思うからです。にもかかわらず、外国人が働きにくい国になろうとしています。
一方、経済界からは相次いで、外国人労働者をさらに迎え入れるべきだという声が上がっています。
日本商工会議所は、「あらゆる産業・地域で人手不足が常態化する中、外国人材を含む多様な人材の活躍推進が重要」とし、経済同友会は、「少子高齢化による労働力不足、とりわけエッセンシャルワーカー不足が深刻化しており、外国人材の活躍促進が急務」と政策提言をしています。
もちろん、外国人労働者を受け入れることには、治安、雇用、文化摩擦への不安がつきまといます。
興味深いことに、スイスで6月14日、憲法で人口の上限(キャップ)を1千万人に制限するかどうかを問う国民投票が実施されました。
狙いは、移民の流入を抑えることです。国内の人口はこの12年間で100万人ほど増え、915万人に。その多くを移民が占め、早ければ34年にも1千万人に達するとの予測もあります。
国民から「人口が急激に増えたことで、家賃は上がり、道路は渋滞するようになった。移民による殺人事件も起きた。高齢者は夜に外を出歩けなくなった」という声が上がっていることへの動きです。
結果は、反対:約55%、賛成:約45%となり、「2050年までに人口を1000万人以下に抑える」という憲法改正案は否決されています。しかし、賛成が国民の約5割近くもいたことは注目に値します。
スイスにおいても、経済的成長と社会問題の相克があります。しかし、重要なことは、スイスは移民問題を国民投票という形で直視していることです。
日本政府はいまだに「移民政策」という言葉を使いません。しかし、実際には在留外国人はすでに400万人を超えています。そして、日本経済の中で、不可欠な労働力になりつつあります。
実際、「特定技能」の外国人は右肩上がりで増え、25年末時点では16分野で計約39万人になりました。特定技能へのステップアップを前提にした在留資格「育成就労」も27年度から導入します。
ほかの「永住者」「技術・人文知識・国際業務」「留学」「技能実習」といった在留資格も含めた外国人全体では、日本の人口の約3%を占めるまでになっています。つまり、すでに我が国は「多文化社会」の入り口に立っていると言っても過言ではありません。
ならば、スイスのように、現実を直視して、外国人と共生する多文化社会をどう構築するのか、今こそ、そのグランドデザインを描くべきではないでしょうか。なし崩し的に対応することほど危ういことはありません。
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