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アオハルを辿る

11月最後の週末。大学時代のアルバイト仲間とお出かけをした。

大学一年の秋、地方百貨店のオープンと同時にテナント出店するケーキ屋の、喫茶店員として始めたアルバイト。厨房も売場も喫茶も若い社員が中心で活気があり、オープニングスタッフということもあって、職場は和気あいあいとしていた。
とくに喫茶アルバイト組の、Fくん、Mくん、Yちゃん、そしてわたしは、性格がバラバラかつ恋愛感情がない男2女2という気負わずいられる組み合わせで、一昨年の冬にSNSを通して30年ぶりの再開を果たして以降、わたしとYちゃんは定期的にランチなどして会うようになった。

今回のお出かけは、当時のシェフパティシエさんが個人でやっているお店に4人で顔を出して、びっくりさせようというわたしの提案だった。
気乗りしないのかMくんは、3人で行ってきてという返事。春から仕事がゴタゴタしているらしい。
むかしの私なら、気分転換になるかもよ、とか言ったりしていたと思うけど、周りに合わせて無理をする癖がついた大人は、こういうとき一人にしてあげるほうがいいことを、今は身に染みてわかっている。


集合場所は店舗があった建物の前にした。
当時は気取った百貨店だったが、今は無印良品やニトリ、ダイソーなど、時代の需要に合わせたテナントに様変わりし、ケーキ屋だった場所は輸入食品雑貨の売り場になっていた。

ここはパン屋さんだった
よく豚まん買ってバイトが終わってから食べたよね
社員食堂のラーメン安くて美味しかった

とかとか言いながら、一通り懐かしんだ後、Yちゃんが運転する軽自動車でシェフのお店がある町へ向かった。


同い年で短大生だったYちゃんは、サラサラロングヘアのおっとり美人で随分とモテていて、地味な四大に通い、しっかり生えた黒髪に薄顔のわたしと、雰囲気が対照的だった。
成人式の着物は、赤が一番映えるらしいから赤にしたとYちゃんに聞き、わたしも赤にした。
成人式の日、晴れ着を見せにYちゃんもわたしもバイト先に立ち寄った。Yちゃんは真紅の着物がほんとうに似合って華やかで、同じ赤を着ているわたしの仕上がりとは格段の差があった。
親にお金を出してもらって写真館で撮った記念写真も、赤に着られている自分のぎこちない姿に複雑な気持ちになって以降、ほとんど開けることもなく、しまい込まれている。
そんな思いもあったり、わたし友達が少ないねん、とかYちゃんは言っていたりしたのだけど、不思議と居心地が良かった。

最近、二人でランチに行くようになってわかった。
Yちゃんは正直だ。
クソがつくほど真っ直ぐな(と言われる)わたしの本質と似ている気がする。人からしたら自慢に聞こえる話も、そんなふうに自分を落とす発言も、包み隠さないことに安心するのだ。



走る車からは、秋の紅葉がいっぱい見えた。
 赤、みどり、だいだい、黄色、みどり、赤、
 みどり、みどり、黄色、赤、だいたい、赤、

YちゃんがSpotifyでわたしの好きなスピッツをシャッフルでかけてくれていた。
 スピッツ♩スピッツ♩スピッツ♩スピッツ!

とっても気持ちがよくなって「車の中でスピッツ聴くの最高やわ〜」とため息混じりに歓喜した。

ランチは最近オープンした和食屋さんで、12種の小鉢がいただける定食を食べた。
おばんざいをちょっとずついろいろ食べれる贅沢…どれもこれも美味しくて、白いご飯も、会話も進んだ。

シェフのお店は和食屋さんの近く。
お店に入ると厨房にいたシェフが、おー!という口をして満面の笑顔で出てきてくれた。「懐かしいなあ〜!」

もちろん、ケーキを幾つか買っていく。
「ミルフィーユ、むかしのままやで」とシェフが勧めてくる。
そう、シェフのミルフィーユは絶品なのだった。サクサクのパイとカスタードクリームといちごの絶妙なハーモニー。
近況をしゃべりあって、店を出た。

珈琲が 飲みたいね となって、Googleで調べたレトロ喫茶へ。
お店は中高年で賑わっていた。

3人とも50代。
自分のことじゃなく、親や子供の話が多くなった。
とはいえ、周りに翻弄されながらも自分の人生の整理みたいなものもはじめているような気もする。
両手で淹れたて珈琲のカップを包み、まったりと時間を過ごした。
とてもいい日だった。


夜、シェフからこんなラインがあった。

ー みんなの顔を見て、当時の情景を思いだしました。アオハルやったなあ。キラキラしてた。ちょっと前に膝に人工関節を入れて人生観が変わり、したいことを一生懸命しようと思うようになってます。
と、バス釣りをしている写真が送られてきた。


若いときはいっぱい欲しいものがあったけど、今はそんなにたくさん抱えられない。
いるものいらないものを仕分け、限られた時間の中で、目に映るもの、肌をかすめるものを愛おしく、丁寧に味わいたいと思っている。

そんな記憶のカケラや、こんな日の残像が、いつかこの世を去るときに、目の奥で煌めいてくれるような気がするから。

久しぶりに食べるシェフのミルフィーユは、変わらず最高に美味しかったけど、カスタードクリームがむかしよりも、ちょっぴり優しくなっている気がした。


こちらが12種のおばんざい 白いご飯が進んだ



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