測った人は登ったのか/山の名前の話③【アワイノハナシ#6】

K2の話を調べていて、ふと気になったことがありました。
K2は山の名前ではなく、もともとは測量番号だった。
そして、その山を測ったのは19世紀のイギリス人たち。
ここまでは前回のお話です。
でも、その先で私は素朴な疑問を持ちました。
「その人たちは、登って測ったの?」
高さを測った、と聞いて実際に登って測ったんだろう。
そんな気がしていたのです。
測った人と登った人は違った

ところが実際は違いました。
K2の高さが測量されたのは1856年。
初めて山頂に立った人が現れたのは1954年。
約100年もの隔たりがあります。
しかも初登頂したのはイギリス人ではなくイタリア隊でした。
私は少し驚きました。
測った人が登ったわけではなかったのです。
しかも初登頂の国も違うし、誰かが登るまで100年かかるなんて。
彼らの目的は山頂ではなかった
当時の測量士たちは、山頂を目指していたわけではありません。
遠く離れた場所から角度を測り、高さを計算する。
三角測量という方法で、地図を作っていたのです。
そうでした。登らなくても測れるのでした。
むしろ登っていたら高さがわかりにくいかも。
彼らの目的は、
「どこまで行けるか」ではなく、
「そこに何があるかを知ること」
だったのかもしれません。
知ることと行くこと

私たちは、知っている場所をたくさん持っています。
本で読んだ場所。
写真で見た場所。
SNSで見た景色。
でも、その多くは実際には行ったことがありません。
人についても似ています。
名前を知っている。
経歴を知っている。
投稿を読んでいる。
けれど、本当にその人を知っているかと言われると、少し迷います。
知ることと、行くこと。
知っていることと、出会うこと。
その間には意外と大きな距離があります。
旅が始まる前に
でも、こんなことも思います。
もし誰もK2の高さを測らなかったら。
もし誰も、その山の存在を伝えなかったら。
そこへ行こうと思う人は現れたのでしょうか。
人は、知らない場所を目指すことはできません。
まず誰かが、
「ここに何かある」
と教えてくれる。
そのあとで旅が始まる。

K2の高さを知った人たちは、山頂には立っていませんでした。
でも、その高さを知ったからこそ、
いつかそこへ行きたいと思う人が現れたのかもしれません。
知ることと行くことは違う。
けれど、
知ることがなければ旅は始まらない。
私たちもまた、
本や地図や誰かの話をきっかけに、
まだ行ったことのない場所へ向かっているのかもしれません。
その間には、
「知っている」と「行ったことがある」のあいだにある、
「行ってみたい」という気持ちがあるのかもしれませんね。
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