あと2メートルやねん
おばあちゃん。
おばあちゃんっていうか、デイサービスの利用者さんなんだけども。
「Aさん」にしよか。
いや、Womanの頭文字で「Wさん」にしようか。そうしよう、男性の場合はManの「Mさん」にしよう。そうしよう。
でね、Aさん。
「Wさん」ちゃうんかい!(つかみ)
Wさん。腰が「つの字」くらいに曲がっててね、背丈はぼくの腰ぐらい。ぼくはちなみに170センチ。
デイサービス内を移動する時は常にシルバーカーを押して歩くのね。
お顔が地面と並行移動してるような感じで。誰かに頭突きしにいくんかな?って感じにも見える。(ぼくだけかも)
顔が地面を向いているのに進行方向はしっかりわかってて、壁にぶつかって前に進めなくなるようなことはないのね。
頭頂部に目がついてんのか?それとも気配を感じ取る量子センサーがついてるのかは定かではないけども、長年そういう移動をしてると感覚が研ぎ澄まされるのだろうかね。デイサービスでの交通事故はない。
見守る介護職員としては「つの字」が前のめりになって、「への字」にならないかとヒヤヒヤもんでごぜーやすがね。
んで、
Wさん、デイサービスのフロアの椅子に座ってて。
もとろんトイレに立ち上がるんだけど、
その時はフロアの隅に縦列駐車してあるシルバーカーを近くまで介護職員が持っていくのね。
車(シルバーカー)でトイレまで行って、
トイレには車ごと入ってもらって、ぼくはトイレの手すりが掴める位置まで案内してからトイレのドアを閉めて外に出るわけ。振り向くことはできないからドアを閉めて出てくる。だからトイレ介助はしない。
ん?ということはよ。
Wさん、ズボンと下着を下ろすわけだよね、つまり一瞬シルバーカーや手すりから手を離すってことだよね。
つまり、「つの字」の状態でバランスよく立っている時間があるってことよね。
あれ?
木下大サーカス出身だったけかな?
え?
もしくは、その時だけスタンド(ジョジョの奇妙な冒険)が発動してる?「トイレクィーン!」みたいな。
ぼくはトイレの前で「神田川の歌詞」のように待ちぼうけしてね。せやけどトイレのナースコールは聞いたことがない。無事に用を足せたってことよね。
やがてトイレの引き戸は開いて、素知らぬフェイスで颯爽とトイレの後ランウェイを歩き出すWさん。
「手を洗っていこうね〜」
蛇口が見えない。
蛇口は頭頂部の先にある。
神頼みみたいに手を洗う。
そしてみんなのいるフロアへ戻っていくWさん。アルマゲドン。
迷うことなく自分の席へ向かっていく。
ダウジングしてるのかな?椅子の位置関係を正確に把握してる。
ただね、椅子2メートル手前でシルバーカーを乗り捨てる癖があってね、その2メートルをいわば手すりなしで歩こうとする癖があるのね。あれ?やっぱ木下大サーカス出身か?綱渡してたか?
癖というか習慣かな?コアファイター(シルバーカー)を切り離すタイミングがはえぇ〜のよ。
「もう少し前まで行って、テーブルに手が着くところまで行きましょうか。」
結局そのタイミングだけ、ぼくは両手引きをして案内するんだけど。
あと2メートルやねん。
あと2メートルやねえぇぇぇん。
やっぱすっきゃねん。(やしきたかじん)
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介護は大変。介護職はキツイ。そんなネガティブなイメージを覆したいと思っています。介護職は人間的成長ができるクリエイティブで素晴らしい仕事です。家族介護者の方も支援していけるように、この活動を応援してください!よろしくお願いいたします。