理事長が書くマンション大規模修繕日誌㉚足場が、外れていく
今日、足場の解体が始まった。
その一言を監督から聞いたとき、思った以上に気持ちが動いた。
着工から、この日まで
足場が組まれたのは、工事が始まった頃のことだ。
あの日から、このマンションはずっと足場とシートに覆われていた。外から見れば工事中の建物。住民からすれば、ベランダの景色が変わり、エントランスの雰囲気が変わり、毎日の生活の中に足場が当たり前のように存在していた。
それが今日から、少しずつ外れていく。
上から、徐々に
解体は上から始まる。


最上階の足場から順番に、一段ずつ下へ向かって解体していく。建物の頂上から、少しずつ姿が現れてくる。
今日の作業は一部のみだった。全体が見えるわけではない。まだ大半は足場とシートに覆われたままだ。
でも上の方の一部が外れて、壁面が顔を出した。

タイルが補修された外壁。汚れが落とされた壁面。その一部が、足場の向こうから現れた。
見たことのない高揚感
その光景を見たとき、自分でも少し驚くような気持ちになった。
高揚感、という言葉しか見つからない。
これまで工事の節目に、様々な感情があった。タイルの浮きが出たときの緊張。工法変更を決断したときの責任感。42%の報告を聞いたときの安堵。ゴンドラに乗って外壁を確認したときの実感。

でも今日感じたものは、それらとは少し違う種類のものだった。
建物が戻ってくる。
ずっと足場に隠れていたものが、少しずつ姿を現す。その瞬間を見ているという感覚が、胸の奥から湧いてくる何かを動かした。
あまり感じたことのない種類の感情だった。
まだ、全部は見えない
今日見えたのは、ほんの一部だ。
足場はまだほとんど残っている。シートもまだかかっている。リニューアルしたマンションの全体像を確認できるのは、もう少し先になる。
全部の足場が外れたとき、このマンションがどんな姿で現れるのか。
補修されたタイル。打ち直されたシーリング。コーティングされた外壁。水切り金物が収まった壁の上端。新しくなった共用部。
それらが全部揃った状態を、まだ見ていない。
一部だけでも、伝わってくるもの
それでも今日、一部だけ顔を出した外壁を見て、伝わってくるものがあった。


きれいだ。
シートの向こうで想像していたものが、目の前に現れた。想像通りでもあり、想像以上でもある。
この仕上がりのために、どれだけの工程があったか。タイルを一枚ずつ確認した職人の手がある。ピンニングの穴を一箇所ずつ開けた時間がある。養生を丁寧に施した準備がある。アンケートで拾った声を修正につなげた誠実さがある。
その全部が、あの壁面の中に詰まっている。
解体が進むにつれて
これから足場は、上から順番に解体されていく。
一段外れるたびに、建物が少しずつ姿を現す。
その過程をできる限り見ていたいと思っている。完成した瞬間を一度に見るのも感慨深いだろう。でも少しずつ現れていく過程にも、この工事を見続けてきた者にしか感じられない何かがある気がする。
足場が組まれたあの日から、ずっと見てきた。
解体されていくこれからも、ちゃんと見ていたい。
高揚感の正体は、きっとそこにある。
この工事の完成に向かっている。
次号に続く
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