未来の私は、この何でもない休日をきっと思い出す。
ある休日の午前。
夫が、長男と次男を習い事の体操教室へ連れて行ってくれた。
家に残ったのは、三男と私。
外は朝からよく晴れていたけれど、暑すぎて、とても外で遊べるような気温ではなかった。
さて、何しようか。
そう思っていると、
「ままとあぽぶー!」
三男が嬉しそうに寄ってきた。
「あそぶ」がまだうまく言えなくて、「あぽぶ」になる。
絵本を出してきたと思ったら、今度はおもちゃのピアノを弾く。
ボールを投げっこして、トランポリンで一緒にジャンプして。
「つぎ、これやるー!」
私はただ、三男の言うままについていった。
しばらくすると、さすがに疲れたのか、
三男がプレイマットの上に、ごろんと横になった。
「ふわふわはー?」
大好きなブランケットを探している。
少し離れたところにあったそれを渡すと、自分のほうへ引き寄せて、
「ねんねー」と言った。
はいはい、ねんねするのね。
そう思った数分後。
本当に寝た。
ついさっきまで跳ねたり、走ったり、ボールを投げたりしていたのに。
ふわふわを抱えたまま、すうすう眠っている。
私もその隣にごろんと横になった。
冷房のきいた涼しい部屋。
外から差し込む、夏の明るい光。
静かになったリビング。
私はぼんやり天井を見上げていた。
そのとき、急に思い出した。
ああ。
育休のとき、こんな時間を過ごしていたな。
子どもと家にいて。
午前中にたくさん遊んで。
お昼を食べて。
眠くなった子どもの隣に寝転んで。
外は明るくて、いい天気なのに、
冷房のきいた部屋だけが、世界から切り離されたみたいに静かで。
小さな寝息を聞きながら、一緒にお昼寝をする。
あの頃は、それが日常だった。
毎日のことだったから、そんなに特別なことだとは思っていなかった。
むしろ育休中なんて、今日も何もできなかったな、とか。
一日中子どもとしか喋ってないな、とか。
もう少し一人になりたいな、とか。
そんなことも、たくさん思っていた気がする。
もちろん、大変だった。
ずっと幸せを噛みしめて過ごしていたわけじゃない。
それでも。
今になって思う。
あれは、ものすごく贅沢な時間だったんだな。
平日の昼間。
外は明るいのに、予定もなくて。
小さな子どもが自分の隣で安心しきって眠っている。
その寝息を聞きながら、
自分も少しだけ目を閉じる。
もう、あの頃と同じ毎日には戻れない。
長男も次男も大きくなって、三男だって、いつか昼寝をしなくなる。
「ままとあぽぶー!」
なんて言いながら、一日中私を追いかけてくることもなくなるんだろう。
そう思ったら、隣で眠る三男の顔を、しばらく眺めていたくなった。
懐かしいと思ったこの時間も、きっと数年後には、
「あの頃は三男がまだお昼寝してたな」なんて思い出す時間になる。
幸せな時間って、過ぎてから初めて気づくものなのかもしれない。
特別なお出かけでもなく、記念日でもなく、写真に残すほどでもない。
ただ、
冷房のきいた部屋で、
子どもの隣に寝転がって、
天井を見ていた。
そんな何でもない休日の午前を、未来の私はきっと、
とても懐かしく思うんだろう。
