掌編怪談『アルバム』


 家族のアルバムをめくると集合写真に見知らぬ男の子が写っていた。

 母に見せると青ざめた顔で「そんなはずはない」と首を横に振る。

 半ズボンに黄色いTシャツを着た男の子は、親戚が肩を並べている写真の中に存在感なく黒い眼をこちらに向けて立っていた。

 気が動転した母は憑き物に憑かれた様にしばらく寝こんでいたが、恐る恐る布団から這いだして真実を語ってくれた。

 何でもあの少年はミチル君といって、母が炭鉱夫だった私の祖父と暮らしていた団地にいた男の子らしい。

 しかし、ミチル君のお父さんが炭塵(たんじん)爆発に巻きこまれて亡くなってからその後、彼がどこでどんな風に育ったのかも知られていない。

「変わった子でね。よくイタズラをして、大人達に叱られていたのを覚えているわ」

「あれ?」

 改めて写真を見ると何か違和感を感じた。

 ミチル君の丸い目は白目の部分も真っ黒でまるで鳥のようだ。

「こんな顔だったの?」

「そうねえ……」

 顎に手を触れながら母は考えこんでしまったが、よく見ると炭鉱夫に有毒ガスの危険を報せるカナリアのように見えなくもない。

 もしやと思い図書館で調べてみると、炭塵爆発でミチル君のお父さんが亡くなってから炭鉱での事故は無くなっていた。

 安全対策がしっかりしていたのかもしれないが、ひょっとするとミチル君はカナリアに生まれ変わって炭鉱の事故を未然に防いでくれていたのかもしれない。

 今となっては手がかりもなく憶測に過ぎないが。

 それから何度アルバムを開いてもミチル君の姿は見つけられなかった。