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読了のおっさん53 寄生獣(岩明均/月刊アフタヌーン)

今日も、筆者が全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。

概要的なネタバレは含みます。

寄生獣(岩明均/月刊アフタヌーン)
1989年~1995年 全8巻(完全版)

■ タイプやテーマなど

 怪奇、生命、弱肉強食、共生、進化、人間社会、バトル(共闘)、秘匿、恋愛、人間を超える、存在意義

■ 簡単な内容

 高校生になったばかりの普通の少年、泉新一は、ある日、謎の生物の襲撃を受ける。生物は新一の右腕に寄生し、本能の赴くまま成長と闘争を繰り返そうとするが共生関係にある新一の意思との折り合いを繰り返しつつ、ミギーと名付けられ、新一の相棒として人間を理解していく。
 一方で新一は、寄生獣によって己の心身が人間離れしていく中、様々な経験を通じて悩み、成長する日々を送ることになる。
 やがて街では、ミギーと同種族で、別の人間に寄生した者達が徒党を組み初め、新一の周囲でさまざまな事件が巻き起こっていく。

■ 読みどころ
 絵が良い。リアルな殺戮シーンのビジュアル、気持ちが反応せざるを得ない心理描写、これらが読者の内外両側面から迫ってきて、読み始めると最後まで止まらなくなる。
 表現が巧みである。血しぶき、人体の切り口、こぼれる内臓など、表現が寄生獣の主観で描かれているように思う。言い換えれば、人間目線での経済動物(牛や豚)のそれに近いものになっていると感じる。
 また、寄生獣の内面、本能にも、ストーリー展開や台詞を通じて多々触れており、人間ではない、彼ら独特の行動原理や思考回路を読み取ることができる。そしてそれらが、全く人間らしくない場合は恐怖や焦燥感、人間らしい場合は共感や希望、即ち人との共生が可能かどうかへの期待などになり、読者の心を揺さぶる。

■ 雑多な感想
 筆者は読んで数ページで引き込まれた。太めのミミズのような生物が、寝ている男性の耳から入り込んで寄生し、「くわっ」と眼を見開いて寄生された男性が起き上がる。
 次いで奪った肉体の様々な表情を鏡で試し、次いでいきなりその肉体の妻であった女性を捕食する。それは、リアルな絵と相まってあまりにも恐ろしく、急な展開であり、怖いもの見たさに次々とページをめくってしまう。いくらも読まないうちから「これは読め」と思わず友人にメッセージを送ってしまった程、この衝撃は大きかった。

 こうしたホラー要素は終始繰り返されるが、本作は同時に、非常に生々しい性描写も含まれている。と言っても男と女の単なるセックスシーンというわけではなく、人間の性愛や生殖機序について、その心的内面まで深く意識させられる意味でのそれである。

 例えば、寄生獣に脳を支配された女性が、別の寄生獣に支配された男性と交わって身籠るという展開がある。ホラーであり、なんとも気持ちが悪い。映画ザ・フライやエイリアンシリーズを思い出す。
 なんと大胆な展開かと、それだけで度肝を抜かれ、そしてその寄生獣が、人間の子を産み、守り、育て、そして死んでいくという、一連の、ある意味人間らしい生き方を経ることになる。
 その人生の中で、寄生獣が何を思い、どう変わって行くか。その物語がまた、たまらなく興味深いものになっている。

 寄生獣を右腕に棲まわし、人間でありながら、人間以上の力を持った進一もまた大きく悩む。そして、母親や、ガールフレンドとの関係性に根差した展開が多々繰り広げられる。変わっていく自分に反比例して、距離が遠くなっていく周囲の女性達。その距離を埋めようと、愛を発揮して、理解しようとする女性達。これもまた性描写の範疇ではなかろうか。
 こうしたやりとりの中で、人間と寄生獣との精神的な融合が、作品の中で終始双方から試され、発展を繰り返すように思う。終始先が気になって仕方がないのだ。

 作者の岩明均先生は、本作執筆時に30代であったから、若さ溢れるこの種のエネルギーを作品に上手く昇華させたのではなかろうか。そう捉えると、非常にチャレンジングな意欲作だったと筆者は思うところだ。
 リアルであるからこそ、ドキドキムラムラするかと思いきや、最後に主人公の進一が恋人と熱く結ばれるシーンですら、むしろ考えさせられ、終始二人を応援したくなる。

 一方で、人類の存在そのものへのアンチテーゼも多々含まれている。寄生獣の本能には「この種を食い殺せ」というメッセージが刻まれていると作中にある。これは、一つは増えすぎた人類を間引くという、20世紀から続く人類社会の根本問題に根ざした極論でもある。
 人口爆発と地球環境悪化の果てに生まれた反人類的存在。宇宙人、或いは人類の叡智を超えた立場からの警告や処断としての存在。読者は寄生獣を概ねそのように
捉えることもできる。
 尚、この点は作者はあえてぼかしている。そこがまた様々な憶測や議論を生み、多くの読者が結末を予想しつつ、のめり込む要因にもなったと思う。

 このテーマは、なんとなく手塚治虫作品を連想させられる内容ではなかろうか。本作は手塚治虫文化賞受賞作品でもある。むべなるかなと、面白さと人気に納得するところである。

■ その他

 アニメ化・実写化もされている。しかも映像化は比較的近年である。改めて発掘された名作としてであったのか、或いは独特の表現による映像化が難しく、近年の技術と経験でようやく叶った結果なのか。
 
 筆者は未視聴ではあるが、あらすじや、写真等での雰囲気を確認すると、当時とは少々設定が異なり、時代背景が進んでいるようだ。
 分かりやすい、昔のヤンキー風の高校生は出てこない。スケバン風の女の子も出てこない。服装やヘアスタイル、男女の機微もちょっと違う感じが見て取れる。
 それはそれで意味のある改変であるとは思うが、原作のあの時代、あの雰囲気が好きな筆者からすると、少々視聴は躊躇するところがある。逆に言うと、筆者とセンスや年代が同じ人ならば、原作が入口で良いとも思うところだ。
 
 好みはあるだろうが、アニメが好きという友人も何人かおり、そうなると、これはこれで見るべきと考察を付け加えたい。原作の着地も非常にきれいだったので、より気軽に見れるであろう映像作品にも期待を寄せて良いだろう。

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