ロビンフッドの予測市場の収入が爆増している
■ 過去最高の四半期に、暗号資産は4番手へ落ちた
ロビンフッドの2026年4-6月期は、総収入が前年の$989Mから$1,308M(約2,054億円)へ32%増、純利益は$573M(約900億円)で48%増。いずれも過去最高だった。ただし純利益には、傘下ファンドを連結から外したことによる一時的な利益$129M(約203億円)が入っている。これを除けば15%増で、48%とはかなり違う。
取引で得た収入は、1年で順位が入れ替わった。オプションは416億円から537億円、株式は104億円から203億円、暗号資産は251億円から157億円。そして予測市場のイベント契約が16億円から245億円である。

去年の暗号資産は全社収入の16%を稼ぐ2番目の柱だった。今回は8%まで落ち、4番手である。
相場のせいだけではない。四半期報告書は減少要因を3つ挙げている。暗号の値付けをするマーケットメーカーから受け取る手数料還元(リベート)の率が下がったこと、暗号を売買したユーザー数の16%減、1人あたり平均取引高の20%減。しかもこの157億円には買収したビットスタンプ分が乗っているので、自前の落ち込みはもっと深い。
■ 空いた席に座ったのは予測市場だった
イベント契約は、選挙結果や経済指標などの将来事象に1ドル未満で賭ける商品だ。全社収入に占める比率は1%から12%へ跳ねた。取引契約数は136億で、前年の10倍を超える。
ロビンフッドは6月、ロセラ(Rothera)を立ち上げた。CFTC(米商品先物取引委員会)の認可を受けた取引所であり、清算機関でもある。米国のオプション市場で大手のサスケハナとの合弁で、四半期報告書は「完全所有でも運営支配でもない」と書く。ロセラを通った契約は累計35億超だから、四半期136億の大半はまだ他社の取引所を通っている。
それでも位置は動いた。株式やオプションでこの会社が得ているのは、注文を取り次いだ見返りにマーケットメーカーが払うリベートである。取り次ぐ側は場を持たない。ロセラで、場を持つ側に足をかけた。
■ 量は29%増えたのに、利ざやは0.44ポイント縮んだ
同じ入れ替えが、金利で稼ぐ側でも起きている。

伸びたのは顧客に貸す2本で、信用取引の金利が338億円で89%増、クレジットカードが63億円で208%増。減ったのは他人の金利に乗る2本で、キャッシュスイープが32%減、証券貸株が81%減。
キャッシュスイープは、顧客が使わずに置く現金を提携銀行の預金へ自動で回し、銀行が払う金利と顧客に渡す金利の差を取る仕組みだ。ロビンフッドは2026年2月、この設計を変えた。$60億(約9,400億円)を超える残高を提携銀行から引き上げ、自社のバランスシートに移して信用貸付の原資に充てている。信用残高は$9.5Bから$21.6B(約3.4兆円)へ2.3倍になった。
預ける側から貸す側へ回った、という話に見える。だが損益はそう動いていない。金利を稼ぐ資産の平均残高が29%増えたのに、金利収入は611億円で9%しか増えなかった。資産全体に対する利回りは2.78%から2.34%へ0.44ポイント縮んでいる。

同じ四半期、チャールズ・シュワブの金利収入は19%増え、利ざやは2.66%から3.00%へ0.34ポイント広がっている。金利が下がれば調達コストも下がるので、銀行の形を持つ証券会社では利ざやがむしろ広がる。金利低下が業界すべてに同じ向きで効いているわけではない。両社の数字は各社の開示値で算式は完全に同一ではないが、方向が真逆である点は動かない。
縮んだ理由は2つ。証券貸株は残高が2倍になってもレートが取れず収入が5分の1以下に落ちた。もう1つは60億ドルの移動そのもので、提携銀行に預けている間は帳簿の外だったが、自社に移せば顧客へ利息を払う義務が生じる。自社で持つ現金の利回りは4.16%から2.02%へ半減した。
■ 米国の個人の信用残高は過去最高にある
この量を積む判断が成り立つのは、借りたい相手がいるからだ。
FINRAが毎月集計している全米の信用残高は、2026年6月に1兆5,021億ドル(約236兆円)で過去最高を更新した。1年前は1兆80億ドルだから49%増えている。同じ集計で顧客が証券口座に置いている待機現金は4,409億ドル。証券口座の中だけで見れば、借金のほうが1兆612億ドル(約167兆円)多い。この差も統計のある1997年以降で最大である。

同じ期間のS&P500は20.9%上昇した。信用残高は担保の時価に連動するため、49%のうち一部は指数上昇で説明がつく。それでも差の分だけ、実際にレバレッジが積み上がっている。
ロビンフッドの2.3倍はこの流れの中で起きた。全米に占める割合は0.94%から1.44%へ上がっている。ただし伸ばしたのはこの会社だけではない。インタラクティブ・ブローカーズの顧客向け与信も67%増え、絶対額は5倍ある。ロビンフッドは全米平均の49%も、絶対額で5倍あるインタラクティブ・ブローカーズの67%も上回るペースで積んだ。
■ 決算は「単価が増えたか、量が増えたか」で分ける
7月30日の3.6%安は単発ではない。4月28日の決算でも翌29日に13.2%下げた。ただし1-3月期は総収入$1,067Mで前四半期から17%の減収だったから、4月は減収を受けた下げだ。7月は、過去最高を出した上での下げである。
8月3日終値$90.34は、52週高値$153.86から41%下にある。増収32%を市場が素直に買っていないのは、その32%が単価ではなく量から来ているからだ。利ざやが縮んでも量が29%増えれば収入は伸びる。だがそれは量が伸び続ける限りの話になる。信用残高2.3倍は、上げ相場では収益、下げ相場では担保割れの連鎖になる同じ一本の数字だ。
会社側も危うさを並べている。四半期報告書は、イベント契約が規制当局と訴訟の対象で、その結果次第では「提供を継続できなくなる可能性」があると書く。FRBの追加利下げは金利収入にマイナスに働くと自ら明言している。クレジットカード債権の貸倒引当金は$24Mから$104M(約163億円)へ4倍を超え、実際に償却した額も$3Mから$16Mへ増えた。痛みが先に出ているのは信用取引ではなくカードのほうである。
10月下旬のQ3決算で見るのは、利回りが2.34%から戻るかどうかだ。9月中旬に出るFINRAの8月分が1兆5,021億ドルを超えるかも、同じ問いの裏側にある。
自分の持ち株の増収を見た時も、同じ分け方ができる。単価が上がったのか、量が増えたのか。量だけで伸びている会社は、量が止まった時に手元に何も残らない。
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本記事は公開情報にもとづく個人の見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
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