広瀬氏の「毎朝まっさらな気持ちで市場を見る」をデータで裏付けてみた
広瀬隆雄氏のnote記事をAIに読み込ませて「広瀬AI」を作りました。
大量の記事を分析して面白かった発見は、分析の中身ではなく構造の方でした。プロの投資家は市場をどういう手順で読んでいるのか? その「型」をデータで可視化できたのです。
ただし、見えた型は予想とは違うものでした。
■投資戦略記事を並べたら、毎回バラバラだった
広瀬氏の記事のうち約1割が「投資戦略」記事です。これが読者の印象に最も残るタイプの記事で、マーケット全体の見通しと銘柄を語る、いわば広瀬氏の「真骨頂」です。
この投資戦略記事の構成をAIに分析させました。記事ごとに「何の話から始まって、どう展開するか」
これが書き出しからして毎回バラバラなのです。
3月の記事はイラン戦争の話から始まって、原油→インフレ→金利→為替と展開する
1月の記事はラテンアメリカへの資金流入から始まって、途中でモンロー主義の歴史講義が入り、最後に個別銘柄。金利の議論はほぼゼロ
7月の記事は邱永漢氏との思い出話から始まって、バングラデシュの人口ピラミッドの話になる。マクロ分析ゼロ
4月の記事は先週の値動きの振り返りから始まって、関税の税率表を整理し、ゴールドの話に飛ぶ
同じ「投資戦略」というタイトルなのに、ある回はマクロ分析から入り、ある回は歴史の講義から入り、ある回は地政学から入る。「第1章はマクロ、第2章は金利…」のような記事内の固定した展開パターンがないのです。
■「毎朝まっさらな気持ちで市場を見る」の正体
広瀬氏は「毎朝まっさらな気持ちで市場を見る」とよく言います。
データを見る前は、これを「バイアスを排除する心構え」と捉えていました。
しかし投資戦略記事を読み比べると、これが実際の行動パターンだと分かります。
先月イランの話をしていても、今月ラテンアメリカの話を始める。関税の話の翌月に邱永漢の思い出を語り出す。前回の分析を引きずって「先月の続きですが…」とは決して書かない。
つまり「まっさらな気持ちで見る」とは:
- 昨日の自分の分析に縛られない
- 「今日、マーケットで一番重要なことは何か?」を毎朝ゼロから選び直す
- 選んだテーマを、どこまでも深く掘る
固定のフレームワークを持っていると、フレームワークに合わない現実を見逃します。「まずマクロを見なきゃ」と思っていると、イーロン・マスクのツイートが市場を動かしている日にマクロ指標を眺めて時間を浪費する。
広瀬氏は「フレームワークを持たない」ことで、その日の市場で本当に重要なことにフォーカスできているのです。
■では私たちはどうすればいいのか
「フレームワークを持つな」と言われても困ると思います。広瀬氏には40年以上のウォール街経験があるから「今日何が重要か」が直感で分かる。初心者にはそれがない。
そこで提案したいのは、固定の「順番」ではなく、「道具箱」を持つというアプローチです。
広瀬氏の投資戦略記事を分析すると、テーマは毎回変わっても、使っている「道具」は共通しています。その道具をリストにして手元に置いておく。毎朝まっさらな気持ちでニュースを見たとき、「今日はどの道具が必要か?」を選べばいい。
# 道具箱:マクロを読むための道具
| 道具 | 見方 | 頻度 |
|------|------|------|
| ISM製造業指数 | 50超=景気拡大、50未満=収縮 | 月1回(第1営業日発表) |
| 雇用統計 | 非農業部門雇用者数が増えているか減っているか | 月1回(第1金曜日発表) |
| GDP成長率 | 前期比プラスなら拡大 | 四半期に1回 |
これらは「毎日チェックする」ものではありません。**「景気の話が出てきたときに引っ張り出す」道具**です。ISMが前月49だったのか52だったのかを把握していれば、景気関連のニュースが出たときに自分のポジションを確認できます。
# 道具箱:金利を読むための道具
| 道具 | 見方 | 頻度 |
|------|------|------|
| 米10年国債利回り(Yahoo Finance: ^TNX) | 3ヶ月前と比べて上昇中か下降中か | 週1回 |
| FOMC日程 | 年8回の会合前後は市場が動きやすい | 把握しておくだけ |
| CME FedWatch Tool(無料) | 市場が利上げ/利下げをどの程度織り込んでいるか | 月1回 |
金利は「水準」より「方向」が大事です。4%が高いか安いかは専門家でも意見が割れますが、「3ヶ月前から上がっている」という方向は事実です。
# 道具箱:リスクを嗅ぎ取るための道具
| 道具 | 見方 | 頻度 |
|------|------|------|
| 原油価格(Yahoo Finance: CL=F) | 急騰していたら何かが起きている | 週1回 |
| VIX(Yahoo Finance: ^VIX) | 20超=市場が不安を感じている | 気になったとき |
広瀬氏の投資戦略記事で一番真似しやすいのは**ニュースの読み方**です。ニュースを見たとき「で、これは金利に影響するか?」と1回だけ自問する。中東の戦争→原油高→インフレ圧力→FRBが利下げしにくくなる→株にネガティブ。この因果の連鎖を追うのが広瀬氏のスタイルです。
# 道具箱:個別銘柄を見るための道具
広瀬氏の記事の約半分は、実は個別銘柄の決算分析です。決算を1社ずつ丁寧に解体する職人的な作業を積み重ねています。
決算の見方(EPS・売上高・ガイダンスの3点チェック)は広瀬氏が繰り返し教えてくれているので、ここでは省きます。大事なのは、この決算分析の道具も毎日使うものではなく、決算シーズンに引っ張り出す道具だということです。
■「道具箱」と「固定フレームワーク」の違い
固定フレームワークは「毎回この順番でチェックしろ」と言います。ステップ1→2→3→4。
道具箱は「必要なものを必要なときに使え」と言います。
今日のニュースがイラン情勢なら、原油価格と金利を引っ張り出す。今日のニュースが大型決算なら、EPS・売上高・ガイダンスを引っ張り出す。FOMCの翌日なら、FedWatch Toolを見る。
毎朝「今日は何が一番重要か?」を考えて、それに合った道具を選ぶ。 これが広瀬氏の実際の市場の読み方です。
順番を決めると楽です。でも、市場は人間の決めた順番に沿って動いてくれません。
広瀬氏が40年かけて辿り着いたのは、型を持たないことが最強の型だ、ということなのかもしれません。
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