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【決算理事会シーズン】社会福祉法人の理事会ガバナンスを改めて考える

いま、全国の社会福祉法人では決算理事会のシーズンを迎えている。

決算承認。
事業報告。
監事監査。
評議員会の招集。
そして登記手続き。

社会福祉法人の経営に携わる方々にとっては、一年で最も慌ただしい時期の一つだろう。
とても note記事を投稿している場合ではない (笑)。

しかし、そんな時期だからこそ、改めて考えてみたいことがある。

「私たちの理事会は、本当に理事会として機能しているのだろうか」


一番偉い人が「理事長」、という誤解

社会福祉法人の経営について話をすると、
「理事長が決める」
という前提で語られることが少なくない。

しかし、社会福祉法上の建付けはそうなっていない。
社会福祉法人の最高意思決定機関は理事会である。

「理事長」は理事会から選定され、法人を代表する立場にはあるが、
単に理事会から、ごく一部の権限を委任され、業務を執行している存在に過ぎない。

極端な言い方をすれば、理事長は法人内での「王様」ではない。
あえて「王様」という表現を当てはめるのであれば、
「理事長」という一個人ではなく、
「理事会」という合議体こそがその立場にある。

理事会が決定し、理事長が執行する。
一部の事案については理事会から権限の委任を受け、
その範囲内で理事長が判断・執行を行う。

そう考えると、理事長とは法人の支配者ではなく、理事会の意思を実現するための執行責任者である。
少々極端な比喩を用いるなら、「理事会」という「王様」に仕える「執事」に近い存在なのかもしれない。

本来の構造はそのはずである。
私は理事長という立場にあるが、だからこそ常々思う。

理事長が全てを決める組織は、一見すると強そうに見える。
しかし、その理事長がいなくなった瞬間に機能しなくなるのであれば、それは強い組織ではなく、単に特定の個人に依存しているだけである。

だからこそ私は、理事長がいなくても回る組織を目指したいと思っている。


2017年改革で何が変わったのか

かつて社会福祉法人には、職員が理事に就任できる人数に制限が設けられていた。
その背景には、理事会の中で相互牽制を働かせようという考え方があったのだと思う。

しかし2017年の社会福祉法人制度改革によって状況は大きく変わった。

全法人に評議員会の設置が義務付けられ、理事会とは別のレイヤーでガバナンスを担保する仕組みが整備された。
その結果、職員理事数の制限は撤廃された。

これは単なる制度変更ではない。
私は、ガバナンスの重心が変わったと理解している。

理事会内部の個々の理事による牽制だけでガバナンスを確保しようとするのではなく、

  • 評議員会

  • 監事

  • 会計監査人等

を含めた法人全体の各機構間での統治構造で、ガバナンスを担保するという発想への転換である。


外部理事は本当に機能しているのか

ここで改めて考えたい。
外部理事には何が期待されているのだろうか。
理事長や他の理事を監督することだろうか。

私はそうは思わない。
それは本来、監事の役割である。

理事は外部・内部を問わず、法人の意思決定に責任を負う立場である。

しかし現実にはどうだろう。
多くの外部理事は本業を持ちながら、限られた時間の中で理事会へ参加している。

社会福祉法人特有の制度や会計、人事、施設運営を十分理解するためには相当な学習と時間が必要になる。
それにもかかわらず、理事報酬は決して高額ではない。
高額でないどころか、多くの場合は、ほぼ無償に近い。

もちろん、熱意を持って職責を果たしている外部理事もいる。
だが、世の中、それらの高い知見を有しながら、そこまで余裕を持っている人は極めて少ない。

そのため、制度全体として見たとき、
「外部理事を置けばガバナンスが強化される」
という発想には疑問を感じる。

本当に必要なのは肩書ではなく、機能ではないだろうか。


理事会に必要なのは実務能力ではないか

私は、理事会とは法人の重要事項について議論し、決定する場だと考えている。

そのためには、

  • 現場を知っていること

  • 財務を理解していること

  • 人事を理解していること

  • 事業の課題を理解していること

が必要になる。

だから私は、業務執行責任を持つ職員が理事として参加することには大きな意味があると思っている。

少なくとも、
「理事長が説明し、他の理事は承認するだけ」
という理事会よりは、
それぞれが担当領域について説明し、議論し、相互に質問を投げかける理事会の方が健全である。

理事長は理事会の決定を執行することが主たる役割である。
その上で、他の理事の議論が、短期的視点、法人内部的な視点に偏り、
利用者の利益、地域社会の福祉サービスの低下につながりかねない場合は、
長期的視点に基づいて、修正を促す。

それこそが理事長の役割ではないかと思う。

重要なのは外部か内部かではない。
理事会が最高意思決定機関として機能しているかどうかだ。


ガバナンスは理事会だけで成立しない

もちろん、職員理事だけで理事会を構成すれば全て解決するわけではない。

だからこそ、

  • 評議員会

  • 監事

  • 会計監査人

の存在が重要になる。

特に私は、公認会計士による監査は積極的に活用すべきだと考えている。

会計監査は単なる数字合わせではない。
内部統制や組織運営の仕組みそのものを点検する機会でもある。

外部理事を一人増やすことよりも、専門家による継続的な監査の方が実効性のあるガバナンスにつながる場面は少なくないだろう。


形式ではなく機能を見たい

外部理事を否定したいわけではない。
外部理事が活躍している法人もあるだろう。

しかし、
「外部理事を置いているから安心」
という発想には違和感があるし、
それがゆえに、職員自身の当事者意識育成に障害となる部分、
いや、職員の成長へ活用できていない部分が認められるのであれば、
外部理事から、職員という内部人材を、業務執行理事として登用することも見直す必要があるのではないか。

理事会は機能しているのか。
理事は本当に議論しているのか。
理事長だけが全てを知る構造になっていないか。
そして、理事長がいなくなっても組織は回るのか。
理事長一人だけで理事会を回したりしていないか。

私たちが問うべきなのは、そうしたことではないだろうか。

決算理事会シーズンの今だからこそ、改めて理事会の役割について考えてみたい。

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