あまり強い言葉を使わない方がいい理由(「弱く見えるから」以外で)
Xでフォローしている方が、使わないようにしている言葉として「地雷、飯テロ」などの言葉を挙げていた。そのときは言葉狩りの一種かと思い身構えたが、冷静に考えたら確かにあまり使わない方がいいような気がしてきて、私も使わないようにしている。
「冷静に考えた」とは以下のような感じ。
まず根本的に、ある出来事を伝えるとき、なるべく言葉が強い方が、その衝撃や感動が伝わりやすい。これに異論はないだろう。先ほど例に挙げた「飯テロ」も、空腹時やギルティな時間に美味しそうな食事の写真を見せられることの辛さを考えれば、まあ意味としては伝わりやすいし、とても上手い言い回しだとは思う。インターネットに投稿していれば、「無差別」という点でも「テロ」ではある。その言葉の便利さから、正直私も使っていた。
一方で世界のどこかでテロ(原義)は起こっているわけだし、それは日本とて例外ではない。最近世界情勢がきな臭くなってきた。私も留学中に「イスラエルのガザ侵攻を受けてのテロへの警戒」というメールが外務省から来たときは、部屋から出るのが怖くなった記憶がある(ちょうどインドネシア留学中にガザ侵攻があった。インドネシアはイスラム教国家なので、何かしらのテロが起こる可能性は否定できない。)。このように自分もその被害を受ける可能性も否定はできないし、だとしたら無邪気に「テロ」という言葉を使うのは少々恐ろしいことに感じられる。たとえ原義じゃないとしても。
こんな風に考えた結果、確かに使わない方がいい、という結論に達した。そして、私も使いたくない言葉があるな、と思い出した。その言葉の1つに「予後が悪い」というのがある。Xでも、「◯◯な学生は予後が悪い」みたいに使ったりするが、見るたびに気分が悪くなる。
たまに書くように私は競馬が好きだ。競走中、馬に万が一事故が発生して、治療して復活する見込みのない場合、「予後不良」として安楽死処置がなされる。これは「使えない動物は殺すという人間のエゴ」というわけではない。ここで私がいくら説明しても伝わりにくいと思うので、とりあえず「テンポイント」と検索して調べてみて欲しい。というか、Wikipediaを貼っておくので見てみて欲しい。
もちろん、現在の競馬のやり方に問題がないわけではない。活躍できる馬の割に生まれてくる馬の数はあまりにも多すぎるし、可能な限り全ての馬が天寿を全うできるようにすべきだ(そして、JRAやさまざまな競馬関係者はそのための努力も行なっている)。だからといって競馬関係者やファンを叩けばいいという単純なものでもない。長年の品種改良の結晶であるサラブレッドを野に放ったら、自然界の遺伝的なバランスが崩れる危険性があるし、あれほど大きな産業がなくなった場合、雇用や国の収入等の問題も生じる。だから単に廃止するのは無理がある。人間が馬を家畜化してから4000年、人と馬がどうあるべきかは慎重な議論が必要だと私は考えている。少なくとも感情論では解決することは不可能だし、競馬を批判している動物愛護の方々にはその視点が足りていないように見受けられる。
閑話休題
私が「予後が悪い」という言い回しを嫌うのはこうした理由だ。そして、この言い回しに、なんか競馬を知ったばかりの浮かれイキリ大学生が、耳にしたばかりの「予後」という言葉を使いたくて仕方がないような感じがして、とても気持ち悪いのだ。「お前の考えすぎだよ」と言われればそれまでなのだが、どうも言葉の持つ重さを理解せずに使っている感がかなりある。それに「予後が悪い」というのは馬だけではなくもちろん人に対しても使われる。それは病態などに対してなのだが、配慮やリスペクトが明らかに欠けているような気がして不快になる。
あまり強い言葉を使うなよ
弱く見えるぞ
というのはあまりにも有名なBLEACHの藍染惣右介のネットミーム名言であるが、強い言葉を使うのには「弱く見える」以外にもデメリットが多いように感じる。
言葉というのは人によって様々な解釈をされる場合がある。「テロ(原義)」に無縁(だと考えている)人は「飯テロ」という言葉を簡単に使えるし、使われても不快感は覚えないはずだ。「予後不良」という言葉に重みを感じない人は「予後が悪い」と平気で言える。使うことや使う感覚を否定するつもりはないが、その言葉を向ける相手が、自身と同じ視座であるとは限らない。この文章からお分かりの通り、もし相手が私だったら若干「ぬ?」となってしまうだろう。
強い言葉、それも攻撃的・暴力的な意味を秘めていたり、あるいは生死に関わり得たりする言葉は、何かしら人を傷つける可能性がある。もし傷つけてしまうと、本来の意味とは別の伝わり方がされてしまい、それは伝えたい側にとってもお互いに不本意なことだと思う。インターネット(主にTwitter)のような場所なら日々お互い傷つけ合っているので、まだ目立たないし、いいのかもしれないが、日常会話だとその傷は重いものになり得る。
かくいう私もここまで文章を書いていて、無意識にそういった言葉を使っている可能性は十分にある。こんなチラシの裏みたいな文章ばかり書いている人間でも、ある程度の人格と名前を出して不特定多数に向けて文章を書いている以上、注意したいというかしなければならないと思う。別にこれを読んでいる方が、「飯テロ」などの言葉を使うのをやめる必要はないと思うし(「予後が悪い」は使わないでいただけると嬉しいのだが)、ゆくゆくは日本語の表現の多様さにもつながるのかもしれない。数十年後には多義語になっているのかもしれない。ただ少なくとも、今のうちはもっと(例えばインターネットでの用法よりは)慎重に使うようにしたいな、と思った次第である。
ちなみに、インドネシアに留学中、「日本に行ってみたい」という女性の方がいた。その方曰く「『地雷系』?ってファッションしてみたい!あれ可愛い!!』とのこと。日本のファッションがそこまで広まっていることに驚かされる出来事だったし、もはや文化として(あるいは言葉として?)定着してしまっているのかもしれない。というエピソードで締めくくらせていただく。
ということで、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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