サッカーのクラブアイデンティティやグッズについて考える【26/8/11】
今日はサッカークラブにおけるクラブアイデンティティ(ユニフォームやエンブレム等)やグッズ類など、クラブとファンを繋ぐ要素について色々と考えます。
日本と欧州におけるクラブカラーの違い
Jリーグにおけるクラブカラーを並べたツイートが興味深いと感じたので、それに関して個人的に思うことを。
Jクラブのクラブカラーは多様に満ちており、赤や青はもちろんのこと、欧州(特に5大リーグ)では少数派のオレンジや紫、緑を採用したクラブが多く存在する。
また同系統の色であっても微妙な違いもあり、青系統は横浜FMや町田のようなロイヤルブルー系の青や福岡や栃木Cのような藍色・紺色系、そして磐田や横浜FCのように水色系など様々だ(正確に色分けするならば、さらに細分化される)。当該ツイートには青系統が多いとの指摘があるが、そもそも青系色自体のバリエーションが多い所に背景がある。
一方でJクラブのユニフォームは単色のみを用いるケースが多く、縦縞や横縞のユニフォームが(特にイングランドやスペインと比較して)少ない傾向にある。これを継続してこれらを採用しているのは札幌、G大阪、山形ぐらいで、稀にFC東京が青とのツートンで赤の主張を強める程度だ。これについては、複数色を使うことにより色被りが発生し、ユニフォームの視認性に関する規定に引っかかりやすくなるのも背景にあるだろう。
なお神戸に関しては三木谷氏が経営に参画した直後の2005年に、創設当初の白黒からクリムゾンレッド(濃赤)に変更している。
そして他国との最大の違いとして、メインカラーとして白が使われていない点にある。一応韓国でも白をホームとするクラブはないが、欧州と比較しても白の割合が驚くほどに低い。
過去に白をホームとしてきたクラブはいくつかJリーグにはいたものの、横浜フリューゲルスの消滅(1999年)にはじまり、アビスパ福岡のホーム用カラーの変更(2004年、白→濃紺)、いわてグルージャ盛岡のJFL降格(2024年)など、複合的な要因の結果にあると考えている。
Jリーグのアウェイユニフォームのカラーがほとんどのクラブで白が用いられているのも、視認性は勿論のこと、それらによる結果だろう。
海外においては白をホームとするクラブが数多くあり(レアル・マドリー、スパーズ、マルセイユのほか、ライプツィヒ等のレッドブル系クラブも)、また2色の縦縞(ストライプ)や横縞(ボーダー)をホームカラーとしているクラブも数多い。
後者においてよく見かける例として、イングランドにおける赤白縦縞(サンダーランド、ブレントフォード、サウサンプトン、シェフィールド・U等)やスペインにおける青白縦縞(レアル・ソシエダ、エスパニョール、アラベス、レガネス等)もあり、これらは時折日本のファンを悩ませることも。
逆に希少な例として、クレモネーゼ(イタリア)の赤と灰色やレアル・バジャドリー(スペイン)、シャフタール(ウクライナ)のオレンジと黒のケースもあり、Jクラブでも見かけるカラーながらユニフォームデザインとして引用された事例が無い。
なお、当該ツイートのリプ欄で指摘されている茶色はJクラブにはないどころか世界的にも少ない方で、有名な例としてはドイツのザンクト・パウリくらいとなっている。
クラブカラーやユニフォームに関する考え方は国内外で大きく異なっており、特に白の扱いに決定的な違いがみられる。
これらについて専門的に検証している書籍やWebサイトを見つけたことは無いものの、アメリカンスポーツにおいてカラーユニフォームとホワイトユニフォームを用意するルールがあり、様々な出来事を経てJリーグがこれに近い文化を踏襲したものと思われる(これが正しいやこれが有力など、知っている人がいたらコメント等でお願いします)。
氾濫した円形エンブレムと最近のトレンド

中央にはマンチェスターの運河産業を支えた船と、ランカスター家に由来する赤いバラを添えた。
今から10年前の2016年、マンチェスター・シティは鷲と盾と3つ星を基調としたエンブレムから円形を基調としたエンブレムに変更した。このエンブレムは1997年まで使用されていたエンブレムをモダンアレンジしたものであり、以後現在に至るまで使われている。
この前年にシティはペップが監督に就任し、以後プレミアリーグを席巻したために世界的なビッグクラブとして認知されるようになった。2010年代の終わりに入ると、それにあやかって、世界各国のクラブはシティと同じ特徴を持つ、地域やクラブに関する意匠を中央に配置し、図形は円形(ラウンデル)に、そして円形周りにはクラブ名と創設年を配置するエンブレムが氾濫した。シティと同じCFG所属のメルボルン・シティ(オーストラリア)をはじめ、トゥールーズ(フランス)、インテル・マイアミ(アメリカ)などがこれにあたり、英国内でもブレントフォード(イングランド)がこれに追随した。
同じ形のエンブレムが氾濫することによってクラブの個性が薄れることは以前より懸念しており、個人的にもエンブレムを混同するおそれがあるため避けて欲しいと思っているが、強いモノに惹かれてしまうのは避けられない運命なのだろうか。
ただ最近に入りこの流れは留まりつつあり、むしろシティが目指した旧エンブレムのモダンデザイン化の流れが加速している。Jリーグにおいては、清水エスパルスがこの理想形として評価されているが、FC東京のように「T」ロゴを削除したこと等で物議を醸すケースもあり、形だけでなく細部の取捨選択も評価基準に入ってくるだろう。
また、鹿島アントラーズやジェフ千葉のように、創設当初から「変えない」という判断を取るクラブもある。
日本においてシティ型のエンブレムデザインを流用したクラブは皆無で(FC琉球が一度上記デザインに準ずるエンブレムに変更したが、反発を受けて再度変更)あるのは幸い。Jリーグの場合は盾形が多すぎるとの指摘があるものの、その中でも各クラブがホームタウンに関する意匠をふんだんに盛り込んでおり、クラブエンブレムの「形」そのものに個性を出そうと努力している所は評価したい。
ちなみに、ユベントスやガンバ大阪などが採用している、極端にシンプル化したエンブレムもあまり好きではないです。クラブの歴史を蔑ろにしているのもあるし、シンプル化によって逆にユニフォームから埋もれかねない、という懸念もあるので。そしてクラブ自体がある程度有名でないと成功しないのもありますし、それを理解しないまま強行した結果元に戻した奈良クラブの例もありますし。
そういう意味で、インテルの現行エンブレムはそのラインのギリギリを攻めた良いエンブレムだと思います(それでも、「FCIM」の図案から大きく変えたことで最初は慣れませんでしたが)。
「ハーフ&ハーフ」グッズへの規制と炎上
イングランドのウェストハムは2部に降格した今シーズンより、ホームスタジアムであるロンドン・スタジアム内にハーフ&ハーフのスカーフ(マフラー)の持ち込みが禁止になることが明らかになった。スタジアム内に持ち込まれた場合はスタッフにより没収され、返却はされないとの事。
このスカーフは日本では馴染みがない(日本語でこれを検索しても、サッカーとは無関係のマフラー類または混血選手に関する画像しか出てこない)ためピンとこない方も多いが、欧州では試合により有志が作成した対戦相手同士のロゴや文字が入ったマフラーが作成され、会場前で販売される。これらは応援グッズの一環として試合会場で掲げるサポーターも少なからずいる。
ただしこれらは権利上の問題があるため、基本的にクラブ公式によって製造・販売されるものではない。つまり買ってもクラブの収益にはならない訳だ。
そしてそれ以前にサッカー界ではバルサvsマドリーのように、ライバル以上の存在と見做されている対戦カードが少なからず存在しているため、サポーターから見れば不快な気分になるのも無理はない。SNS上でも、ハーフ&ハーフを掲げる現地サポーターを中傷する声も散見される。
個人的にも、ハーフ&ハーフのそれを掲げたり、それらが製造販売されている文化が理解しがたいと感じており、もしJリーグにこれらが輸入されて「浦和レッズvs鹿島アントラーズ」のハーフ&ハーフなんてものが売られていたら、真っ先に燃やしに行くだろう。
そういう意味で、ウェストハムが今回取った判断は至極真っ当であり、今後他クラブも追随して欲しいとすら感じている。リバプールもやって欲しいですね。
ハーフ&ハーフ系グッズはマフラーにかかわらず、シャツ(ユニフォーム)においても作成される例がある。こちらは製造コストの問題から販売される例は少なく、基本的には着用者またはその関係者による自主制作品。なお本題からは外れるが、引退したサッカー選手が現役時代に所属したクラブのユニフォームの一部を組み合わせるシャツが受注生産で販売されるケースも。
上記のリンク(BBCの記事)から見て分かるように、こちらもサポーター感情を害するものとして、またサッカーを「消費」しているとの視点から批判している。また同じく記事中にあるが、タイミングによりその時の対戦相手がライバルチームと順位争いで直接競合しているなどの理由により、刺激を増大することも。
なお本件は日本でもサッカー系のポップアップストアを開催した時に、Jリーグのライバル関係にあるクラブ同士のユニフォームのハーフ&ハーフを制作し、炎上した事例がある。日本の事例に関しては、サッカー文化の不理解(ライバルチーム同士を「一緒にして欲しくない」という感情など)が絡んでくるだろう。
いずれにせよ、観客席内はおろか、スタジアム内でこのようなグッズ類は身に着けるべきではないだろう。そのうえ、試合が終わったら使い所が無くなりますし資源的な面でもあまり良くないですし(欧州はここら辺にうるさいはずなのに、何故?)。
