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あいの塩焼きと勝男製造機

「あー体重増えてるわ」

帰省した子どもの決まり文句である。

子どもが帰ってくる時は、それぞれの好物を食べさせてあげたい一心で、つい張り切りがちだ。胃袋を親の愛で満たす攻撃。体重なんか気にするな。育ち盛り増やしてなんぼ!

長男はハンバーグ、長女は春巻き、次男はロールキャベツが定番。すき焼き、おでん、サムギョプサル、チーズフォンデュ、たこ焼き、バーベキューに手巻き寿司。みんなで食べると美味しいし楽しい。9歳の次女はお兄ちゃんお姉ちゃんが帰ってきたのが嬉しいばっかりで食欲は二の次、遊びたくて仕方がない。早く食事を終わらせてと急かす。

「みんな帰ってきてくれたらご馳走が食べられるなぁ」と夫が言う。そういえば私の母も孫が来る日は好きなものを用意していた。父が食べようとして「それはいま食べたらあかん!」とブレーキをかけられていたのを思い出す。

我が家の長男(23)、長女(20)、次男(18)は中学卒業と同時に15歳で実家を出て、県立の寮から高校に通い、卒業後はひとりぐらし。自炊の大変さがわかり、実家のごはんがおいしいと言ってくれる。「そう?」とほくそ笑み、まんまと調子に乗る私。

TBSドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」がおもしろい。

しかしこのドラマを観ているとほんの少し胸が痛い。服に刺さった髪の毛くらいのチクっとした痛みを感じ、手放しで観ていられないところがある。それは、もしかして私は(初期の)勝男を量産してはいないか?という不安からくるものだ。自分は何もしないのに誰かが作ってくれた料理を批判するような人になってはいないか。

子どもたちが小さい頃、レトルト、冷凍食品、インスタント食品の類をあまり使わずに食事を作っていた。こだわっていたわけではなく、私がそう育ってきたのと、純粋に自分で作った方がおいしいと思っていたからであるのだけど、長男が中学生の時に友だちと初めてカップヌードルを自分で作ったという事実にこれはさすがにやばいと感じた。(食べたことはあったけど、私が作っていた)

手作りの料理がイコール愛情の証であるとは言わない。ジャンクなものは身体によくないからと手作りの食事にこだわることも親の愛であるし、ハッピーセットが食べたいという子どもと、休日に家族で朝マックするのもまた愛だと思う。ただ、私は女だから、母親だから作ってるんじゃなくて、あなたが、料理が好きだから作っているのだけは間違いない。

私は子どもたちが小さい頃から好きだったメニューを作る。そしてまた夫もこだわりの一品がある。自分で育てた高菜を漬物にして作るめはり寿司(高菜のおにぎり)と、冷凍庫にストックしてある地元の釣り好きからまとめて購入させてもらった鮎の塩焼きだ。鮎の塩焼きは長女の大好物で4匹でも5匹でも焼いただけ食べる。この辺りの方言では、鮎の塩焼きを「あいの塩焼き」という。まさしく父から娘への愛の塩焼きに他ならない。

あいの塩焼き

喜んで欲しいという気持ちが愛情。喜ぶ顔を見てこちらも幸せな気持ちになる。

(1236文字)

#モノカキングダム2025

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