見出し画像

家族の齢

子が一歳の誕生日を迎えた。

当日は家族三人で過ごした。本当だったら家族や親族たちに囲まれ盛大にお祝いをするところなのだろうが、僕たちはバンクーバーに住んでいてそれは叶わないので、母・父である僕たちが子を挟んで盛大にお祝いをした。書ききれないくらいたくさんの催しが詰め込まれていた一日だったから、子もきっと「何事だ…?」と訝しく思ったことだろう。覚えておくといい、誕生日っていうのは、こんなふうにスペシャルなんだ。


プレゼントを開封する


メッセージビデオに映った涙目の母(妻)に手を振る子


じいじの田んぼでできたお米10合で作ったスマッシュおにぎり


母が作ったスマッシュケーキ


トッピングは大好きなバナナ


近くの公園でお揃いのオーバーオールを着た


とてもいい日だった。子にとっても、とてもいい日になっていたらいいなと思う。

あらためて、誕生日おめでとう。



この一年は本当に特別な時間だった。

子を持つということが初めてである僕たちにとって、子にまつわる出来事は当たり前にすべてが初めてのことだ。試行錯誤の日々の中には、戸惑いがあり、疲弊があり、難しさがあった。一つ一つが大事おおごとだった。

けれどもそれ以上に、とてつもなく大きなしあわせやよろこびがあった。

妻とふたりだった頃もたくさん笑ったが、子が生まれてからのこの一年で僕たちはもっとたくさん笑ったように思う。くしゃみで笑い、おならで笑い、初めて手を振った仕草に泣き笑い、街ゆく人にいつも愛嬌を振りまくその様がおかしくて笑い、寝相の悪さに笑い、その寝顔を見ては「世界一かわいい…」と自分たちの親バカっぷりに半ば呆れながらも笑った。

夏の木々が風で揺れるのを興奮した様子で眺めている子に「はっぱがざわざわしとるのがすきなんやねぇ」と話しかける。ただただそういう時間が無数にもあって、その一つ一つが本当にしあわせだった。些細なできごとも子のことが分かっていくための大事だいじなピースであり、だからどの一欠片すらも取りこぼしたくない、とそう思った。

子はいつの間にか大きくなるものだということも分かった。

月齢写真を撮り、前月のものと見比べる。そこでやっと「大きくなっている…!」と気がつく。毎日一緒にいるのに気がつかない。本当に不思議だ。

子が生まれながらに持っていた "小ささ" のようなものが、いつの間にか、着実に、失われていく。それはすなわち「成長」で、だから喜ばしいことだというのは大前提なのだけれど、ほとんどが不可逆ということもあり同時に寂しさも感じるわけだ。二回目のくしゃみで「エイ!」と言ったりすることも、プップッとひっきりなしにおならをしたりすることも、以前と比べて間違いなく回数が減った。寂しい。
やっぱりこれからも、一つだって取りこぼしたくないと思う。


これまでの一年を妻と一緒に振り返っているとき、妻が「"もっとできることがあったんじゃないか" と思うことが多い」と言っていた。

分かる。ものすごく分かる。

いつだって全力でいたいけれど、そういられない日もあった。
後悔はないけれど、最善であったという確信はなかった。

すべてが手探りで、それでいて答えの分からない毎日だった。だから "もっとできることがあったんじゃないか" と思うのだ。

でもふと考える。"もっとできることがあったんじゃないか" と思えているそれこそが、自分たちが親になったという何よりの証なんじゃないか。だって人様の子に対してそんなことを真剣に考えたりはしない。自分の子だからこそ、何よりも誰よりも大切にしているからこそ、もっとできたかもしれないという可能性に思いを馳せるのだ。極めて「親」である。

だから、そのことをどうかネガティブには捉えないようにしよう。そう妻と決めた。「親」の意識が僕たちには既にあって、その意識が手探りとはいえ子に向いている。結果、ここまで子が大きくなったんだから、きっとそれはもう、充分なのだ。

これからも、泥臭く「親」をやっていこう、一緒に。



子の誕生日の翌日、机の上には一通の手紙が置いてあった。

それは妻から僕に宛てた手紙で、父としての一歳の誕生日を迎えたことの祝福が綴られていた。かなわないと思った。妻は、母という役割だけでなく、妻という役割も同じくらい大切に全うしてくれていた。それがどれだけ大変なことか。たった一日の疲れだけで主役の子よりも先に爆睡をかましていた父兼夫は身に沁みて分かる。

自分も、まずは、夫でありたい。

あらためてそう思った。一日遅れで手紙を書き、その気持ちを伝えた。返事みたくなってしまいちょっと間抜けだけれど、しっかり伝わっていたらいいなと思う。

いつもありがとう、妻。



野外に風船を設置すると風で流れる


はー。あっという間だった。一年。突っ走った。みんなで。怒涛の日々だった。疲れもした。簡単じゃなかった。

でもやっぱり、先にも書いたとおり、とてつもなく大きなしあわせやよろこびを感じられた。最高だったな。


子へ。
一歳の誕生日、おめでとう。僕たちのところにきてくれて、本当にありがとう。

妻へ。
母としての一歳の誕生日、おめでとう。一年間、一緒に走ってくれて、引っ張ってくれて、本当にありがとう。

これからも三人一緒に、家族のよわいを重ねていこう。


一歳のここからの一年にもわくわくしている。楽しむよ、目一杯!

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集