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先回りをせず、後ろ姿を見守る。

子がとにかく成長する。

毎日成長する。嘘だと言う人もいると思う、けれど本当に毎日だ。昨日できなかったことが今日できていたり、昨日やっていなかったことを今日やっていたりする。笑ってしまうくらい、一日一日何かしらの発見がある。

これまでには一切なかった性質が表出するということ。一歳ほどの始まったばかりの命にとってそれは「変化」と呼ぶよりも「成長」と呼ぶほうが適当だろう。人間として生きていくための引き出しを増やしているのだから決して過言ではないはずだ。

そんな爆速の成長が楽しみである一方で、心配や不安の感情を抱いてしまうことも出てきた。

たとえば子は最近、僕たち親以外の人間にもしきりにコミュニケーションを取ろうとするようになった。笑顔を振り撒いたり、手を振ったり、こちらを向いてほしいときには「ああ!」と話しかけたり。身体と心の両方を使って他者への接近を図ろうとしている様子が見て取れる。

子のそういった接近に対し笑い返したり手を振り返してくれたりする人が多いのは幸いだが、もちろん全部が全部そういうふうに好意的な対応が返ってくるわけではない。子の疎通意志も虚しく無視されたりすることもたびたびある。

そんな日の夜は、子が寝静まったあとに夫婦で話すのだ。

「この先◯◯(子)が無視されたりすることができるだけ少なかったらいいよね…」

子を大切に思うばかりに生まれる心配や不安がある。そして一歳の子を育てている僕たちに関して言えば、それは往々にして「先回り」の心配や不安であることが多い。まだ子の身に起こっていない出来事にもかかわらず、想像してはウッと苦しくなる。

悪い出来事は起きないでほしい。
どうか傷つかないでほしい。

寝室のドアを少し開き、まだ傷を知らないその寝姿に親たちは祈るのだった。



公園に行った。

新居から10分ほど歩いたところにある公園。引っ越してきて以降、妻は子をほぼ毎日そこに連れて行ってくれている。今日はオフだったので三人でその公園を訪れたのだった。

動きたい盛りの子にとっては、部屋よりも公園、ラグよりも砂利。いつも存分に楽しんでいると聞いていたが、その話のとおり黙々と生き生きと遊んでいる子の姿を見ることができた。

成長である。

思わず、生まれたばかりの頃を思い出した。タオルに包まれただただ仰向けに寝ていたベイビー。それが一年経ったらどうだ。靴を履きジャリジャリとハイハイするキッズになっているではないか。感動せずにはいられない。

でもそれと同時に、例のごとく同じ感情を抱くのである。先に書いた、心配と不安だ。

危ないものが落ちていないだろうか、変なものを口に入れないだろうか、転んでケガをしないだろうか、毒虫に刺されないだろうか。心配はしようと思えばいくらでもできるし、不安にはキリがない。「できる限りは見守ろう」と心を構えてはいるものの、どうしても頭をよぎってしまうものだ。

そんな感情を抱いていたからかもしれない。心構えとは裏腹に、子の一歩前に先回りをしてしまった瞬間があった。子は動作を一旦止め、仕方がないと言わんばかりにまた別の違う動きを開始したのだった。

ああ、やっちゃったなぁ。

瞬間的にそう分かった。子は、それを試そうとしていた。試すことで、どうなっていくのかを知ろうとしていた。きっとそうだったはずなのだ。

だが僕は、「大切な子がケガをするのを回避する」という大義名分を掲げ、子を制止してしまった。それは確かに子を守ったかもしれない。が同時に、子が何かを知るための機会を取り上げてしまったとも言える。


悪い出来事は起きないでほしい。
どうか傷つかないでほしい。

そういうふうに思ったとき、ついつい「どうやったらそれらを回避できるだろう」と考えてしまう。親のさがなのかもしれない。

でも、その道を通ることの大切さも確かにある。むやみに傷つく必要はないというのは大前提で、大丈夫な範囲では痛みを知るべきとも言えそうだ。擦りむけばヒリヒリとするし、刺されたら腫れて痒くなる。しばらく時間が経てば、かさぶたになったり腫れが引いたりする。そのことを知っているというのは、まぎれもない一つの豊かさだから。

もちろん、大きな事故に繋がり得るものは100%ケアをする。命は絶対に守ってみせる。

その上で、それ以外のことは、先回りをせずに「彼自身が経験する機会」として尊重していきたい。どこにでも足を踏み入れる。何でも口にしようとする。おっ…と思う。けれども、できるだけ後ろ姿を見守っていこう。


まだ傷を知らない我が子がそれを負う日も近いだろう。それもまたきっと一つの「成長」だ。そして親の僕たちも忍耐強く、子と一緒に成長していきたい。そう強く思った。


ハイハイで土の付いた小さな手とズボンの膝を眺める。
明日もまた、踏み出せ前に。

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