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voice_watanabe
陣痛じゃなかった
朝から、
なんとなくお腹が痛かったり、
痛くなかったり、
でも、
初めての出産なので、
これが陣痛なのかどうかもわからない。
「もしかして」
と思って病院へ電話をした。
すると、
「何分おきですか?」
と聞かれた。
そんなこと、
測っていない。
というより、
どこからどこまでを一回と数えるのかもわからない。
今思えば、
あれはまだ陣痛ですらなかった。
でもその時の私は、
「10分くらいです」
と、なんとなく答えた。
すると、
「それなら入院の準備をして来てください」
と言われた。
いよいよ出産なんだ。
そう思い、
入院セットを持って電車で病院へ向かった。
病院に着くと、
まず剃毛。
続いて浣腸。
2000年当時は、
それが当たり前だった。
そのあと、
モニターをつけられた。
看護師さんは、
モニターを見ながら首をかしげた。
「……あれ?」
そして聞かれた。
「今、お腹痛い?」
「痛くないです」
「じゃあ、少し様子を見ようか」
初めての出産なので、
私は言われるままだった。
予定日も近かったので、
そのまま入院することになった。
「いよいよ今日かもしれない」
そんな気持ちで病室へ入った。
ところが、
何も起こらない。
夜になっても。
朝になっても。
翌朝、
先生が来て一言。
「帰っていいですよ」
私は入院セットを持って、
朝一番の電車で帰宅した。
剃られ、
浣腸され、
一泊して、
帰る。
人生初の入院は、
出産ではなく、
ほぼ前処理だけで終わった。
次回へ続く…
