刑事犬・ゴル
ある時、夜間の勤務に入りました所、事務所と言わずその先にある受付待合ロビーまでもがザワザワしとる。
ギャンブル漫画の巨匠【福本伸行】先生の作品『アカギ』や『カイジ』ばりに。
聞けば、90歳になんなんとする高齢の、しかも重度の認知症を患っておられるお爺ちゃまが付き添いの御家族が病院スタッフに呼び出されてお話している最中にフラフラと外へ出て行ってしもうた、と。
早い話が『行方不明』ですわ。
男性事務員とかリハビリテーションの先生などが総出で病院内外を探し回ったのですが、杖をついてもヨチヨチ歩きしか出来ないお爺ちゃまの行方を摑むには至りませんでね。
病院としては極めて不名誉な事ですが、いよいよ警察の手を借りるしかなかろうという事になりましてね。
ところが、警察による大がかりな人海戦術による捜索でもお爺ちゃまの行方、杳として摑めなかったんであります。
それで行方不明発覚からおよそ3時間後、
「こうなったら警察犬を投入するしかないか」
という結論に至りまして。
既に正面玄関の施錠を行っておりましたんで、「お手数をおかけしますが宜しくお願いします」なんて言いながら警察の方を夜間通用口からお見送りしたんでありますが、ちょうどその出口付近に警察犬の……なんてお呼びするのか分かりませんが調教師さん?がしゃがんでおりまして、その方の身体で隠れてよくは見えませんでしたが例の“警察犬”と思しき大型のワンちゃんが、伏せをしたまま調教師さんと戯れております。
でも、その光景に違和感がある。
……警察犬言いましたら【シェパード】と相場が決まってますやんか?
そのワンちゃんね、どっからど~見ても、
ゴールデンレッドリバー
なんですよ。
いや、確かに調教師さんのカゲに隠れて頭部は見えませんでしたよ。でも、シェパードとゴルちゃんの毛並みって、間違えたくても間違いようがないくらい絶望的に違いますやんか!?
金色のモッフモフなシェパードって、見た事あります?
「だ、大丈夫なんか?」
それから40分程後。
インターホンがピンポ~ン鳴りまして応対に出てみますとさっきの警察の方だ。
「はい?」
するとその警官、軽く敬礼しますと言うと、
「いや~、駄目でしたわ」
当たり前やろ!
人懐っこいだけが取り柄のゴルちゃんに……まぁ犬には違いないんでニオイを嗅ぎ分ける能力はあるにせよ……そんな長時間集中力が続く訳が無いやんか!!
にしても僅か40分で「駄目でしたわ」て、諦めが良すぎるんと違うか!?
あ、お爺ちゃまは行方をくらませてから6時間半後、某大学近くのコンビニにひょっこり現れて無事保護されたんですがね。
