知識によって見え方が変わる、色彩の話。
真っ赤なリボン。
皆様ならどう描くでしょうか?
リボンに光が当たると、色がより明るくなり白に近づきます。
でも白を混ぜると、赤ではなくピンクのリボンに見えてしまいます。
さらに環境の色…光源の色や強さ、あらゆる状況に左右されます。
加えて、リボンは草原の上なのか夕暮れの中なのか、はたまた水中か…
シチュエーションによっても選ぶべき色は変わります。
そして画法。
補色や大気の色、黄土色などをベースにして、
その上から赤を入れることで深みを出したり時短をしたり…
さて、赤いリボンを描くとき、まず何色で塗るのが良いのでしょうか。
色のやり取りって、想像以上に繊細かもしれません。
色は状況によって見え方が変わる
左に水族館の絵があります。

大きな水生生物のヒレ辺りが、少し赤らんで見えると思います。
ですが実際スポイトで色を吸ってみると、該当部分は青系のグレーです。
隣の手のイラストでは、手のひらの影部分が青みがかって見えますが、
実際は赤系のグレーです。
色彩の世界では、青色だけで赤みを表現することができます。
覚えておきたいのは
「特定の色の主張が激しい場合、その色の反対の要素に過敏になる」
ということです。
鮮やかで真っ赤な世界では、グレーや青みに敏感に反応し、
無彩色の世界では、鮮やかな色のものに強く惹かれる事でしょう。

鮮烈な色をきれいに使いたい!と思った時…
キャンバスの全てを鮮やかな色で満たしてしまうと、
「鮮やかな色」自体のありがたみが薄れてしまいます。
「鮮やか」の反対にあたる「くすんだ色味」でキャンバスを構成すると、
彩度に敏感な状態を作り出せます。
「くすんだ色」というフリに対して「鮮やかな色」とオチが付くと気持ちいいですね。フリとオチの幅がひらくと、その分対比も強くなります。
くすんだ色ではフリが足りないと感じたら、思い切って汚いと感じる色を使ってみても良いかもしれません。
強い光を表現するには濃い影が有効なように、
反対の要素を効率よく活かしていきたいです。
色付きの光
信号機やネオン看板、イルミネーションなど…
我々の生活の中には「色付きの光」が溢れています。
よく目にしてはいますが…
いざ描くとなると、いったい何色で描けば良いでしょうか。
例えば赤信号。
強烈な赤色をしているので、彩度が非常に高いです。
ですが光っているため、明度も上がるはずです。
彩度を優先して濃い赤で描くと、光っている感じがせず、
明度を優先して明るい赤で描くと、鮮烈な印象が出てくれません。

色付きの光源は、
中心を明るく、その周りを鮮やかに描いてあげると、
色彩と発光感を両立させやすいです。光沢感なども同様。
サクッと両立したい場合は、合成モード
覆い焼き(発光)
加算(発光)
あたりがオススメ。お手軽便利で僕もたまにお世話になってます。
もしキャラクターの商業イラストを目指している場合なら、
通常レイヤーがオススメです。
例えばキャラクターの立ち絵を描いたとして、
エフェクト(色付きの光)を何かしら特殊な合成モードで描いてしまうと、
背景によって色味が大きく変わってしまいます。
キャラ絵はいろんな背景に当てられる都合上、なるべく通常レイヤーで表現できると、納品時にトラブルになりづらいかなと思います。

ようやくリボンの話です。
固有色が高彩度の場合、あまり広い面積に白っぽいハイライトを置くと
少しくどい印象になることも。
明部はもともとの彩度を活かして、
明度の高い色はハイライトやエッジに絞って使うと良いかもしれません。
また鮮やかな色は、黒が混ざっていないため明るい印象に見られがちです。
画面の暗部を暗くくすんだ色に、明部を鮮やかな色にすると、
白っぽい色を使わずとも明るい部分を表現できます。
他にも、相性の良い2色で明暗を作るのも1つの手だと思います。

影の小細工

暖色に比べて寒色は、奥まって見えやすい傾向にあるので、
絵の中の遠景や突き当りに青みを入れられると、
自然な印象になりやすいです。
空気遠近法、色彩遠近法、
どちらの理論でも青色は奥まっているように感じやすいです。
ただ、青みが画面手前に進出するとおかしな絵になる訳ではありません。
むしろうまく使えると、非現実的でファンタジーな印象になることもあるので、使い分けられると強いと思います。

影の中に発色の良い部分を作ると透明感が出ます。
絵にオーバーレイ等で加工をかけているときに陥りやすいのですが、
作品の雰囲気が良くなるのが気持ちよくて、過剰に加工してしまうことは
ないでしょうか。
影の中に高彩度の色を入れる時も、同様のことが起こりやすいと感じます。
色味を大きく変えたり、強い色を追加した際は、
少し時間を置いて見返すなどで、加工の良しあしをしっかり判断したいです。

いわゆるパステルカラーといわれて想像する色味は、
トーンを統一して使っても完成度が高くなりやすいのでおススメです。
なにより、テーマ性がハッキリしているので扱いやすいです。
各々の思う可愛い雰囲気のテーマで使ってみてください。
余談ですが…はっきりしたテーマ性はギャップを出すのにも非常に
向いています。
パステルカラーの王道な使い道を考えると…フリフリ衣装の女の子、とかでしょうか。
テーマ性が一貫していて分かりやすいです。そこにギャップ。
例えば、色味はそのままに野蛮な武器を持たせてみる。
おっきい斧やトゲのついた鉄球など…。まあ単に一例ですが…。
モチーフの振れ幅が広いとギャップとなりやすいです。
おわりに
結局のところ、赤いリボンは何色で描くべきなのでしょうか。
質感、状況、出したい印象や自分の画法…
リボン一つ描くにも、たくさんの情報整理が必要です。
ただここまで読んでくださった方の中には、
冒頭の質問とは答えが変わっている方もいるかもしれませんね。
色は隣接するほかの色や全体の雰囲気によって見え方が変わりますが、
何より、個々人の持っている色彩の経験値で大きく変化します。
「理論をもって色に触れることで、新たな捉え方を見つけられる」
これが唯一、ルールめいたものかもしれません。
池上
