謎の組織? 「後援会」の実体とは
種類は2つ、でもやることは同じ
選挙が近づくと、皆さんの家のポストには、政治家のリーフレットが入ってくるかと思います。その中には「後援会入会申込書」という、名前や住所、紹介者を書く紙が入っているのではないでしょうか。これに気づかずリサイクルボックスに入れている人や、「怪しげな組織には入りたくない」と見なかったことにする方もいることでしょう。普段は気にかけることもないかもしれませんが、そもそも政治家の「後援会」って何でしょうか。今回はこの謎について解説します。
まず、後援会には実質2つの種類があります。1つ目は、政治団体として登録された組織です。責任者、会計責任者、会計補佐を任命して、書面上及び法律上の登録をします。もう1つは、そういった届出をしていない組織です。だからといって「非公認組織」のようなものではなく、れっきとした支援団体として胸を張って活動できます。建前上、政治団体として登録した組織と扱いは同じです。従って、両者の違いはほとんどなく、まちで見かける政治家の名前がデカデカと書かれた看板を設置する際に、市議会議員候補の政治団体の場合は候補者本人6枚+団体6枚の枚数が認可され、そうでない場合は候補者本人のみの6枚に限定される、といった差異があるだけです。
それでも、「政治活動をする上で、きちんと届出をしておいた方がいいのでは」といった先入観があるためか、政治団体として登録されている後援会が大半を占めます。実情はさておき、この記事では両者をまとめて「後援会」として話を進めます。
では、この後援会はどんな目的を持ち、どのような活動をしているのか。
私はいつも“アイドルのファンクラブ”に例えて説明しています。
応援者の数だけ“当選力”が強くなる
後援会の最大の目的は、メンバーがそれぞれにできることを行い、支持者を増やすこと。つまり票を集めることにあります。ファンを増やし、“推し”を支えることを目的とするファンクラブと同じです。シンプルですね。
では、後援会を持たずに選挙に出たらどうなるか。結果は明白で、文字通りの孤軍奮闘になります。ビラ配りも事務所の運営もポスター貼りも遊説活動の運転も、全て自分でしなければならなくなり、雑務に追われて落選するのです。でも後援会があれば活動を分担することが可能になり、候補者は選挙戦でのコアな部分に注力できます。選挙のパワーは、後援会の人数に比例して強くなると言っていいでしょう。
最近の選挙でそれが如実に現れたのが、国政選挙や地方選挙での参政党の躍進です。同党には熱量の高い支援者が多かったため波及力も強く、各地で当選者を増やしました。落選したものの現職に肉薄した、票を大きく伸ばした、という結果も報道されています。後援会のパワーがどれだけ重要なのかは、これらの事例からも知ることができます。
このように、選挙結果を大きく左右する後援会。実動部隊である各メンバーの働きも大切ですが、特に重要なのが“役員”です。
組織トップの人選にはご用心
後援会の多くは、会長、役員、メンバーという構成で組織されています。役員は、会社組織に例えると“取締役”です。各メンバーが1票、2票……と積み上げていく地道な活動をするのに対し、役員は一気に数十人から数百人単位で票を動かせる力を持っています。こうした人がいることで、後援会の活動に厚みが備わるのです。
では会長は? 地元の名士にお願いして、会長の座についてもらえばOKです。名前だけでも問題ありません。もちろん人望がある人に限られます。そうした人を口説くのはそれなりに大変で、相手によっては一筋縄ではいかない場合もあります。しかし逆に考えると、この“名士を口説いて会長に就いてもらう”という難関を突破しさえすれば、当選の確率がぐんと高くなるのです。
そんな後援会長に対し、候補者が求めてほしい素養があります。候補者の話を聞き、共感してくれる力です。
候補者は時に、孤独になります。「当選できるのか」という不安の中、選挙活動中には弱音も吐けません。そんな時、悩みや愚痴を吐露でき、誰にも話せないようなことも聞いてくれる人がいないと心が折れそうになるのです。例えば「家族が反対していて家庭内がざわついている」とか、「地域住民から暴言を吐かれて怒りが収まらない」、あるいは「資金が底をつきそうで不安」といったリアルな悩みです。それに対して「今は我慢しろ」ではなく、「そうかそうか」と傾聴し、候補者が落ち着いた時に助言を与える。そんな存在が不可欠なのです。
実は私も痛い目を見たことがあります。ある選挙で新しい会長に就任してもらったところ、何を言っても「君が悪い」とか、「住民がこんなことを言っているから改めろ」と責めてくるようなタイプの人だったのです。私も会長が敵なのか味方なのか分からなくなり、次第にコミュニケーションが取れなくなって、後援会の雰囲気は最悪になりました。それ以来、相談者には「相手をしっかり見て」とアドバイスするようにしています。
票を引っ張ってくる力も大切ですが、まずは本音で話せる相手がいることが大切。選挙はチームワークが命です。
