鬼嫁2話|三万円サバイバー
「はい、今月のお小遣い三万円ね。」
そう言って、
鬼嫁は無表情で封筒を差し出す。
中身はピッタリ 30,000円。
札の角がやけにきれいなのが、
なんだか腹立たしい。
給料は俺の口座に入る。
でも、管理権は鬼嫁。
家計簿アプリのパスワードも知らない。
俺の指紋より、
嫁の指先のほうが銀行残高に詳しい。
「3万円で足りるでしょ?」
たしかに──
昼は社食、通勤は定期、
酒も週末だけ。
だが、
同僚との飲み会が重なると一気に赤字だ。
俺の財布から、
未来が音を立てて崩れていく。
先月は悲劇だった。
外でネットを使いすぎて 5,000円引かれる。
ついでにNetflixのサブスクで 1,590円引かれる。
残り、実質23,410円。
月初から、
人生ハードモード突入。
コンビニで缶コーヒーを手に取るたび、
脳内で電卓が鳴る。
「あと27日で。残り23,410円。」
ああ、地獄の四週間。(笑)
でも不思議なもんで、
その3万円(正確には23,410円)があるから、
俺は毎月、仕事を頑張れる気がする。
あの封筒を受け取る瞬間の重み。
そこに詰まってるのは、
お金だけじゃない。
たぶん──
家族の生活、そして信頼の残高。
ある日、勇気を出して言ってみた。
「ちょっとだけ増やしてくれない?」
鬼嫁は一瞬だけ目を細めてこう言った。
「じゃあ、給料が上がればね。」
……はい、完敗。
今月も、封筒の中身は変わらず 30,000円。
正確には23,410円(笑))
でも、
少しだけ気持ちは豊かになった気がする。
鬼嫁万歳。
俺の人生、
きっとこの封筒で支えられている。
