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【ショートショート】 携帯電話を川に落としたよ #アマノ文筆クラブ

「私とケータイどっちが大事なのよ!?」

そう言われても無理はない。

俺はどんな時でも携帯電話を手放すことができない。
大学の講義中も、視界の隅には液晶画面がずっとある。
友人とのおしゃべり中も、彼女とのデート中も、携帯を手放せない。
だからもちろん、今この瞬間だって、しっかりと握りしめている。

携帯が禁止されているから映画館は苦手だ。
飛行機にもできれば一生乗りたくない。

深い理由はない。
ただなんとなく、としか言えない。
自分でもあまり良くない癖だとは自覚している。
だけれど、どうしても手放すことができないのだ。

そんな俺の人生で初めての彼女が、涙を浮かべて問いかけてくる。

「私とケータイどっちが大事なのよ!?
 それ持ってるせいで、デート中に手も繋げないんだよ」

淡い褐色の瞳はつり気味で、昔家にいた猫に似ている。
柔らかなロングヘアの毛先が風にそよいだ。
震える唇をかみしめるのは、感情を堪える時の彼女の癖だ。

もしかしたら以前から何度も言おうとしていたのかもしれない。
俺の携帯依存のせいで、幾度不安にさせてしまったのだろう。
確かに今、片手に荷物をぶら下げている所為で、俺の両手は埋まっている。

そう思ったら突然、彼女に対する愛しさが込み上げてきた。

話しながら歩いていた俺たちは、丁度橋の真ん中に差し掛かる。
俺は衝動的に右手を振り上げた。

「おまえに決まってるだろ!」

橋の手すりの向こう側へ、持っていた携帯を放り投げた。
そうして空いた右手で、彼女の左手をつかまえる。

「手、繋ごう。これからいくらでも。
 俺もずっと手放せないのはやばいって思ってたんだ」

頷くようにうつむいた彼女のつむじが、ほんのり赤らんでいる気がした。



小説を書く練習がしたくて、フォロワーさん経由でタグにたどり着きました。

今回たまたま大好きな曲、チャットモンチーの『シャングリラ』が
お題になっていることを知り、ぜひ書いてみたいと思ったのです。

どうしても良いオチを思いつけなくていつも小説を書けずにいるのですが、
まずは書いて経験を詰もうと、捻りのないまま駆け抜けました。

甘野さん、お題をありがとうございました。


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