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セッション定番曲その118:I'll Remember April

ジャズセッション定番曲。タイトルに「April」とありますが、何について歌った曲なのでしょうか?
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:「四月の思い出」

ジャズスタンダードの邦題は、まだ英語をちゃんと理解していなかった人が多かった時代に誰かによって付けられたので、誤訳や原題のニュアンスを伝えていないものも多いです。

ここでも「I'll」と言っているので「思い出=覚えている」よりも「思い起こす(何度も)」という感情に近いと思います。どんなキッカケで思い起こすのでしょうか。

This lovely day will lengthen into evening
We'll sigh goodbye to all we've ever had
Alone where we have walked together
I'll remember April and be glad

素敵だった一日も日が暮れて
その素晴らしかった日の出来事にさよならをする
かつては君と一緒に歩いた道に今はひとりでいる
あの四月を思い起こして私は幸せな気持ちになる

どうも主人公は大事な人とは別れてしまって、いまはひとりのようです。過去を噛み締めて。未練がましいけど、その記憶があればしばらくの間は生きてける。

I'll be content you loved me once in April
Your lips were warm and love and Spring were new

なぜ「四月」なのかというと、とても素敵な恋があったから。

I'm not afraid of Autumn and her sorrow
For I'll remember April and you

どうもこの歌を歌っているのは春ではなくて秋の入り口頃のようです。秋はどうにもセンチメンタルになる季節ですが、四月の幸せな気持ちを思い起こせば乗り切っていけそうですね。この時点ではふたりは既に別れてしまっているようです。夏に何があったのでしょうか。

The fire will dwindle into glowing ashes
For flames and love live such a little while
I won't forget but I won't be lonely
I'll remember April and I'll smile

恋の炎は燃えがって、あっというまに燃え尽きてしまったみたいです。情熱的だけど長続きしない関係。今の時点では恋は終わって、主人公の心に深く刻まれています

*歌詞はシンプルな言葉を使ってあって、想像の余地を残しているので、私の解釈が間違えている可能性もあります。主人公の側の心の動きだけが描かれていて、相手の様子はほとんど描かれていません。

ポイント2:季節もの

四季の名前や月の名前がタイトルについている曲は沢山ありますが、歌詞をよく読むと必ずしもその季節や月について直接に歌っているとは限りません。ライブなどでセットリストを考える際に、季節に合った曲を選ぶのはよくあることですが、少し調べた方が良いかもしれません。

この曲のように「今は四月ではないけれど、四月の出来事を思い起こしている」失恋の曲、という可能性もあります。

ただ、失恋といってもただ嘆いているだけではなくて、ちょっと暖かい気持ちで相手のこととふたりの関係を振り返っている。だから悲しいだけでも嬉しいだけでもない複雑な感情があります。

この曲を「春のウキウキした感じ」で演奏したり歌ったりするのは本来はちょっと違うかもしれません。(背景にある複雑な感情を理解した上であえて明るく演奏したり歌ったりするのはアリかもしれませんが・・・)


ポイント3:Sarah Vaughan

ここではこの曲は単なる「素材」という感じで、速いテンポで演奏され、自由奔放なスキャットが展開されています。歌詞の解釈もへったくれもないですが、こういうのもアリなのがジャズ(ボーカル)の面白いところです。


ポイント4:単語と発音

全体的には平易な言葉で書かれていますが、ポイントになる箇所だけ。

This lovely day will lengthen into evening

「lengthen」は「length+en」で意味は分かりやすいですが、発音に注意。「léŋkθn」で「k」と「th」の音が続きます。

lovely」も2回出てくる「L」音をちゃん発音しましょう。意外と難しいです。

We'll sigh goodbye to all we've ever had

普通だと「We'll say goodbye」と言ってしまうところを「sigh」に変えたのが素敵ですね。本当はさよならを言いたくないのが分かります。

Alone where we have walked together

ここは意地悪なくらい「w」音が連続して出てくるので頑張りましょう。

The fire will dwindle into glowing ashes

「dwindle」は耳慣れない言葉ですが、何かが徐々に減っていく小さくなっていくという意味です。

「glowing」で最後の光を放つ灰の様子を描いています。

For flames and love live such a little while

ここも意地悪なくらい「L」音が連続して出てきますね。

I'll remember April and I'll smile

ここも。

ポイント5:ボーカルのバリュエーション

Julie London

ラテンとスイングを行ったり来たりするアレンジで、色っぽく歌うJulie London、さすがです。

June Christy

テンポを落として情緒たっぷりに歌うJune Christy。まだ吹っ切れていない、未練たっぷりな感じが出ていますね。

Dinah Washington

このバージョンのイメージも強いですね。力強い歌唱。

Frank Sinatra

やはり物語を語るように歌うのが上手い人。


ポイント6:インスト演奏のバリュエーション

特徴的なメロディを単なる素材として扱って速いテンポで演奏されているものも多いですね。この曲はそういうスタイルで演奏するものだと思い込んでいる演奏者もいるので、ボーカリストが入る時は意思疎通が必要ですね。

The Modern Jazz Quartet


Bill Evans, Eddie Gomez, Jack DeJohnette


Clifford Brown, Max Roach


Eric Dolphy


Emmet Cohen, Erena Terakubo, Yotam Silberstein


これはしっとりとした演奏


ポイント7:楽曲解説

多田誠司さんが曲の構成やコード進行/スケール、イントロ/エンディングなどについて解説してくれています。(インスト版のイメージ)


◼️歌詞


This lovely day will lengthen into evening
We'll sigh goodbye to all we've ever had
Alone where we have walked together
I'll remember April and be glad

I'll be content you loved me once in April
Your lips were warm and love and Spring were new
I'm not afraid of Autumn and her sorrow
For I'll remember April and you

The fire will dwindle into glowing ashes
For flames and love live such a little while
I won't forget but I won't be lonely
I'll remember April and I'll smile



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