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雑草を刈っていた家のインテリアデザイナーが、トランプ関税について語っていた


2010年、私はフィラデルフィア郊外のMain Line、Ardmoreにいた。Ardmoreは言わば高級住宅街。Los Angeles Lakersのレジェンド、Kobe Bryantが高校時代に住んでた地域だ。

当時の私のルームメイトの姉、Amyの家で、雑草を刈っていた。Amyが当時からインテリアデザイナーだったのか何だったのか当時の記憶は無いが、「恐らく20代でPhiladelphia Main Lineの戸建てに住むとは、めちゃくちゃリッチだな」とは思っていた。

それから15年ほど経って、先日たまたま彼女のTikTokを観ていた。


インテリアデザイナーだけに、やはり家具の話だった。


「この10年で家具の質は明らかに落ちた」
「写真通りじゃない」
「結局すぐ捨てることになる」


などと話をしている。そして彼女は、こう続ける。

“So I am hopeful that tariffs mean better quality products.”

(関税が、より良い品質につながることを期待している)

関税!?!?!?

動画には


NOT a political message, but a design observation”

と書かれていた。

彼女が共和党支持者であることは、昔から知っていた。民主党が大多数のリベラルなフィラデルフィアと違い、彼女達はペンシルベニア州の内部の出身だ。共和党一家だったのは知っていたが、まさか大っぴらにトランプ支持者とは知らなかった。だから、トランプ関税に積極的に肯定的なのには驚いた

ただ1つ、引っかかった。

仕事のプラットフォームで、ここまで踏み込んで語ったことだ。

予想していた通り、コメント欄は荒れていた。

「関税は価格を上げるだけだ」
「ナイーブ。安物が高い安物になるだけだ」
「アメリカで作れば品質が上がるなんて幻想だ」

正直、私から見れば、コメントの多くは正しい。

そして、まさに同じことを指摘している記事を、The Economistで僕は最近読んでいた。


The Economist の"America’s furniture-makers exemplify the folly of tariffs”

という記事だ。↓

https://economist.com/business/2025/11/06/americas-furniture-makers-exemplify-the-folly-of-tariffs

この記事が描いているのは、感情ではなく構造だ。


ノースカロライナ州では、以前は家具産業が盛んで、1990年には9万人の雇用があった。現在は2.8万人にまで減少している。アメリカの家具の輸入状況に関しては、以前は中国からの輸入は、今はベトナムなどに移っている。関税は価格を押し上げるが、ノースカロライナ州の家具関連の雇用も産業も戻らないだろう。「問題は関税ではなく、人材・技能・規模・住宅市場・需要構造」だろうというのが記事の内容だった。

要するに、「関税は“ハンマー”であって、問題は釘ではない」ということだ。

では、Amyは間違っているのか?

私はそうとも思わない。

彼女は「産業」を語っていない。彼女が見ているのは、実際に家具がどう壊れるかだ。
合板の弱さ、接合部の脆さ、すぐにガタつく構造、廃棄を前提にした設計などだ。つまり、現場で空間を扱う人間の身体感覚だ。一方で、The Economistが語っているのは、なぜそれが起きているのか?という構造の話である。グローバルサプライチェーンの激変、新興国とのコスト競争、家具需要の変化、アメリカ国内での技能労働の空洞化などだ。

このAmyとthe Economistの主張の違いは矛盾はしていない。両者の思考のレイヤーが違うだけだ。Amyは「質の劣化」を直感で捉え、関税に“何かが変わるかもしれない”という期待を乗せたのだ。The Economistは、その期待がなぜ裏切られる可能性が高いかを、冷静に説明しているのだどちらも見ているのは現実だ。

2010年、僕が刈っていたのは雑草だった。目に見える、処理可能な問題だった。今、彼女が見ているのは、もっと根の深い劣化だ。それを政治と呼ぶか、経済と呼ぶか、経営と呼ぶか、またはデザインと呼ぶかは、立っている場所の違いにすぎない。

関税は、確かにハンマーだ。だが、家具産業の問題は、もう釘の形をしていないのだ。

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