#84 やめたい習慣は、つまらなくする
昨日の記事で、表参道の喫煙スペースが人でごった返していた話をした。その流れで軽く触れた書籍『禁煙セラピー』について、記事の投稿後に調べてみた。
私はタバコを吸わないし、これから吸うこともない。ただ「やめたいのにやめられない習慣」の攻略法には、習慣づくりの観点から興味がある。
今日はこの本の内容を、禁煙の細かい話ではなく「習慣づくりのアプローチ」という切り口で紹介したい。
生粋の元・ヘビースモーカーが書いた本
『禁煙セラピー』の初版は 1985 年、日本語版は 1996 年に刊行されている。「禁煙本のバイブル」とも呼ばれる世界的ベストセラーで、原書の Amazon レビュー数は 1 万件近くに上る。
著者はイギリス人のアレン・カー。公認会計士から禁煙コンサルタントに転身した人物である。面白いのが、もともと彼自身が 33 年もの間ヘビースモーカーだったことだ。何度も禁煙にトライしては挫折し、半年間の禁煙の末にまた吸ってしまったときには、大の大人が情けなく泣いてしまったという逸話もある。
その彼が、ある方法に確立してからは本当に 1 本も吸っていないし、吸いたくもならないという。本の冒頭では「タバコをやめられない人など存在しない」と力強く断言している。この人生を送ってきた彼が言うからこそ、言葉に力が宿る。これは AI には真似できないことだ。
「我慢」を必要としないアプローチ
では、具体的に彼はどうやってタバコをやめたのか。ひとことで言えば、「我慢を必要としないアプローチ」だ。
我慢、すなわち「本当は吸いたいのに、吸えない」という状態である限り、いつか限界が来る。そうではなく、「自分は何のためにタバコを吸いたいのか」をひたすら問い直す。タバコで得られていると思っていることを、ひとつひとつ潰していくのだ。
【例①】
「タバコを吸えばストレスが和らぐ」・・・ニコチンが切れて生じたストレスを、ニコチンでごまかしているだけ。やめればストレス自体が消える。
【例②】
「喫煙ルームでコミュニケーションが生まれる」・・・これも幻想である。タバコを吸わずに豊かな人脈を築いている人はいくらでもいる。
このような話がいくつも出てくる。読むうちに「タバコを吸って得られるものは何ひとつない」と思えてくる。
やめたいことは、つまらなくする
これを習慣形成の名著『Atomic Habits』風に言うとどうなるか。
本で紹介される 4 つのルールのうち、第 2 のルールは「習慣化したいことは、魅力的にする」。その反転バージョンが「やめたいことは、つまらなくする」だ。
喫煙が「つまらないもの」になれば、タバコの代わりにガムを噛むといった細かいテクニックは不要になる。
これを知ったとき、私の習慣づくりに対する考え方がひとつアップデートされた。今までは第 3 のルール(簡単にする)が最も重要だと思っていた。ギターを上達したければ常に手に取れる場所に置き、運動したければジムの近くに住む。逆バージョンの「やめたいことは難しくする」なら、手の届く範囲にタバコを置かないといった方法がある。
「簡単にする」も「難しくする」も工夫の余地が大きく、ここにこだわるのが習慣づくりの王道だと思っていた。
ただ、それだけでは上手くいかないこともたしかにあった。私が三日坊主で終わったことの代表例が朝散歩とストレッチ。やろうと思えばすぐにできるのにまったく続かなかったのは、私にとってそれが十分魅力的な行動になっていなかったのだ。
魅力的にさえなれば、放っておいてもやる。つまらなくなれば、自然にやめる。結局「なぜそれをやるのか」にちゃんと向き合うのが一番強力なのだと、この本を読んで気づかされた。
自分の本心と向き合う
『禁煙セラピー』の中で、印象に残ったフレーズがある。
もっとも哀れなのは、喫煙者たち自身が、自分が愚かであることを自覚しながら吸い続けていることだ。
これまで私が出会ってきた喫煙者の人たちとの会話にも、思い当たる節がある。「本当はやめたいんだけどね」「お金を使って、健康を害して、自分でもバカだと思うよ」。そう口にする人は、たしかにいた。
本の中にはこんな思考実験も出てくる。
「もし、タバコを吸い始める前の自分に戻れるボタンがあったら、押しますか?」
「もし、あなたの子どもがタバコを吸い始めたら、喜びますか?」
ほぼすべての喫煙者が「ボタンを押す」「子どもには吸ってほしくない」と答えるそうだ。つまり喫煙者自身も、本当は吸いたくないのだ。
アレン・カー氏の生き方
著者であるアレン・カー氏は、2006 年に肺がんのため亡くなった。享年 72 歳。48 歳で禁煙に成功したものの、それまでの喫煙量が半端ではなかったことと、その後も喫煙者のカウンセリング時に大量の受動喫煙をしていたことが影響したとされる。
末期の肺がんを宣告されたとき、彼は「何百万人もの喫煙者を救ってきたことの代償がこの病気だというなら、払う価値がある」という言葉を残している。たしかに、肺がんになるほど大量の煙を浴びてきたからこそ、多くの人を救えたのは事実だ。亡くなり方も含めて、彼の生き方が表れていると思う。
やめたい習慣、ありますか?
私自身にも、やめようか悩んでいる習慣がある。コーヒーだ。一度カフェインフリー生活にトライしたものの、その後復活し、今は少なくとも 2 日に 1 回は飲んでいる。この本を読んだ今は、自分はなぜコーヒーを飲んでいるのか、そもそも本当に美味しいと思っているのか、考え始めると怪しくなってきた。
皆さんにも、こういう習慣がひとつはあるのではないだろうか。もしあれば、この質問を自分に投げかけてみてほしい。
「もし、その習慣を始める前の自分に戻れるボタンがあったら、自分は押すか?」
頭の中で考えるだけでなく、紙に書いたり、AI に向かって話すのもオススメだ。私もまずはコーヒーの件から、皆さんと一緒に自分の習慣に向き合っていきたい。
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▼浩平のプロフィール
・コーチ 4年目(2026年6月現在)
・京都大学工学部 / 同大学院 → 技術職 9年 → 教育ベンチャー 3年 → 独立
・座右の書:Atomic Habits
・好きな習慣:早起き / 読書 / 内省 / 筋トレ
「理系院卒 → 大手終身雇用」というレールを離れ、ライフコーチとして独立しました。自分の意思(Will)でキャリアを選択するための、読書やジャーナリング習慣の重要性について発信しています。
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