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ハッピーセットの話。

ムスメはハッピーセットが大好きだ。
マクドナルドのことを〝ポテト〟と呼び、土曜や午前保育のとき昼食をマクドナルドにするかとなると、両親の会話を聞いていて目をランランと輝かせる。

前にも書いたが妻はマクドナルドが大好きだ。とはいえ、頼む物が毎回変わるかというとそうではなく、必ずダブルチーズバーガーセット。テリタマだろうがニューヨークなんたらバーガーが出ようがそのスタンスは決して揺るがない。信念にも感じる。

一方私は小さいころジャンクフードを禁じられていた、というよりも田舎だったし三度三食母が作ってくれていたのでマクドナルドをほぼ利用することがなかった。初めてマクドナルドに行ったのは中学校の卒業式終わりだっただろうか。あのときの衝撃は今でも忘れない。世の中にこんなに美味いものがあるのかと思った。体に悪いものほど美味い。今でも変わらぬ私の信念はまさにここで形成された。

ハッピーセットの一番の特徴はやはりおもちゃだろう。昔はそれこそマクドナルドのキャラクターであるドナルドやハンバーグラーのものが多かった気がするが、最近はかなり時流に寄せており転売騒動なども起きている。

少子化の時代。
当然差別化しなければ生き残れない。
マクドナルドに限らず、どこも囲い込みに必死なのだろう。

我が家もご多聞に漏れず、マクドナルドの優良顧客と成り果てた。
ハッピーセットのおもちゃは必ずムスメが全部食べた後に渡すことにしている。だが、ナゲットを食べていようが、ポテトを食べていようがムスメの目は常に中身の見えない小さなおもちゃ箱に釘付けだ。

食事が終わり、いよいよ箱を開けるとき、ムスメだけでなく私も妻も固唾を飲む。箱の蓋を少しずつずらし、ビニールを引っ張りだすとき三人の視線は一気にそこに向けられる。

10秒後、「あーー!」とか「やったー!!」などと歓声を上げる。ムスメはごちそうさまも早々にさっさと手を洗い、そのおもちゃでひとしきり遊ぶ。

だが、おもちゃの賞味期限は短い。うちにはあらゆるファミレスのお子さまセットでもらったおもちゃが散乱している。ハッピーセットの景品もすぐにそこに溶けいき、気づけばおもちゃ箱の肥やしになっている。

私はそれをぼーっと眺めている。思うところはある。だが、よく考えるとハッピーセットをハッピーセットたらしめているのは、あの一瞬の家族の時間ではないかと思う。

昨日は日曜日。なんとなくマクドナルドでハッピーセットを頼もうとした。順番にタッチパネルを操作する。だが、飲み物を選ぶあたりから指が徐々に動かなくなる。決済画面、私は少し悩んでキャンセル欄のボタンを押した。

そして、何も買わずにマクドナルドを引き返した。多分、結構長い時間そこにいたのだろう。
振り返ったとき、後ろに並んでる客と目が合った。親子連れだった。やや訝しんだように見えたが、私はその視線を見ないフリをした。

ハッピーセットの中身は既存商品の詰め合わせだ。だから普通に食べても美味しい。おもちゃも置いておけばムスメはきっと喜ぶだろう。
だが、やっぱり私は買えなかった。

何をハッピーと思うかは人それぞれだろう。だが、私にとってハッピーセットはいつの間にか家族の団欒の象徴になっていた。

家に帰り、シンクの中に放置していたカップを適当に洗ってコーヒーを飲んだ。

冷蔵庫に貼り付けられた、ココスでもらった大量のラスカル軍団が何か物言いたげな目で私に何かを訴えていた、気がした。


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