何もしたくない日の話。
今日はうんざりするほど疲れた。あまりに疲れすぎて何もする気が起きない。
先ほどひと仕事終えて、背中越しに妻と会話していた。妻は味噌汁に味噌を溶かしていたが、突然私にバッと振り向いてこう言った。
「いま、サウナ行きたいって言った!?」
いや、一言たりとも言っていない。もはや、私の意思が幽体離脱して妻の耳元で何かをささやいたとしか思えない。妻は頑なに「いや、あなたは絶対言ったはずなんだけど・・・」と続けた。
私は剣道をやっていたので、「気」とか「オーラ」というものの存在自体は信じている。
とんでもなく強い相手と対峙した際、その相手から何かが解き放たれている。蛇にらみというのが近いのかもしれない。大体、そういうとき、何もできずに一瞬で距離を詰められている。
私は剣道を卒業してからもう20年近く経つのだが、ここに来てその能力が開花したということなのだろうか。あの頃に散々されてきたシゴキでは到達し得なかった境地。そう考えると仕事のストレスも偉大である。
で、実際私がサウナに行きたいかと言われれば、半分イエスで半分ノーだ。
と言うのも、最近サウナに行って分かったことは、確かに一瞬の疲れは取れるのだが、その疲れはサウナを出た直後にしっかりと返ってくる。
これを妻に話したところ、それなら行く必要ないだろと言われた。
確かに一面だけ切り取ればそうかもしれない。
だが、もし私がサウナに行かない場合、ずっと疲れたままなのだ。プラマイゼロだとしても、それが凪なのか、それとも100を足してから100を引くのかでは大きく違うというものだ。
ただし、これは肉体面に限った話だ。
サウナに行った後は必ず別のオマケがついてくる。妻からの愚痴LINEだ。「お前が寝かしつけまでしてみろ」に端を発する怒涛の波状口撃はそこらの水風呂よりもキンキンに私の心を冷やしてくる。
ところで、最近ムスメの反抗期が活発化している。言葉巧みに「パパはイヤ!!」を繰り返す。しかも言葉遣いがやたら乱暴だ。「あーーーイラつくなーーー!!」とか、「パパがやればいいだろ!!!」とか。
一応その都度注意はしているが、聞く耳を持たずほとほと困っていた。
だが、昨日ムスメと会話していたとき、その解決の糸口が見えた。
ムスメが言った。
「パパはだいすきって言わないじゃないか!!だから〇〇ちゃんはパパがだいすきって信じられないんだよ!!!」と。
ハッとした。
忙しさにかまけて彼女の心を蔑ろにしていた。そしてそれは妻に対しても、実家の父母に対してもそうかもしれないと思った。
結局何十年労働したところで、子どもの心に残るのは一緒に遊んだ思い出とか、ほんの日常の些細な出来事なのかもしれない。
私は心から彼女に謝った。それは、子どもとしてではなく、一人の人間として。
妻とムスメが幼稚園に出かける間際、私は「〇〇ちゃん、だいすきだよ」と告げた。
ムスメの返事は、「あのね、時間ないときに言わないで!!!」
4歳に説教される父親。そりゃそうだと思わず納得する。
かくも現実は残酷だ。
今、夕飯のハンバーグを作るために玉ねぎを挽いている妻が持っているのが、ブンブンチョッパーではなくノコギリに見えてきた。
どうやらこの家で幻覚を見るのは、妻だけではなかったらしい。
ところで、
