人との距離を測るようになった私
前回は、母が作ってくれた手作りスタンプラリーのお話を書きました。
学校へ行くことが怖かった私に、母は無理に「頑張りなさい」とは言いませんでした。
ただ、少しでも前を向けるように、小さな楽しみを作ってくれました。
そのおかげで、私は少しずつ学校へ向かう気持ちを取り戻していきました。
けれど、転校をくり返す生活の中で、私の中には別の感覚も育っていきました。
それは、人との距離を少し慎重に見るようになったことです。
新しい学校へ行くと、最初はみんなが話しかけてくれます。
「どこから来たの?」
「前の学校はどんなところだった?」
「一緒に遊ぼう」
そう言ってもらえることは、とても嬉しかったです。
でも同時に、心のどこかで少しだけ身構えている自分もいました。
仲良くなっても、また引っ越すかもしれない。
せっかくできた友達とも、またお別れになるかもしれない。
そんな気持ちが、子どもながらにあったのだと思います。
もちろん、その頃の私はそんなふうに言葉にはできませんでした。
ただ、新しい場所に行くたびに、早く馴染もうと頑張っていました。
笑顔で話すこと。
相手に合わせること。
その学校のルールを早く覚えること。
方言や言い方の違いに戸惑いながらも、何とかその場に馴染もうとしていました。
でも、心の奥ではいつも少しだけ緊張していました。
ここでは、どんなふうに振る舞えばいいのだろう。
誰と仲良くなればいいのだろう。
どこまで自分を出していいのだろう。
そんなことを、無意識に考えていたように思います。
転校は、新しい出会いをくれます。
いろいろな場所を知ることができます。
たくさんの人と出会うこともできます。
でもその一方で、何度も「さようなら」を経験することでもありました。
仲良くなった友達。
慣れてきた教室。
安心できるようになった登校班。
そういうものを、何度も手放してきました。
だから私は、いつの頃からか、人との距離を少し測るようになっていたのかもしれません。
近づきたいけれど、近づきすぎるのが怖い。
仲良くなりたいけれど、別れが来ることも考えてしまう。
そんな不器用な気持ちが、子どもの頃の私の中にありました。
今振り返ると、それは悪いことばかりではなかったと思います。
人の表情をよく見るようになりました。
場の空気を感じ取るようになりました。
相手がどんな気持ちでいるのか、自然と考えるようになりました。
転校をくり返した経験は、私に寂しさも与えました。
でも同時に、人の気持ちに敏感になる力もくれたのだと思います。
私は、すぐに誰とでも打ち解けられる子ではなかったかもしれません。
でも、相手をよく見て、少しずつ距離を縮めていくことは覚えていきました。
それは、大人になった今の私にもつながっています。
人との関係は、急いで作らなくてもいい。
少しずつ知って、少しずつ信頼していけばいい。
子どもの頃の私は、転校のたびに不安になりながらも、そんなことを少しずつ学んでいたのかもしれません。
次回は、転校をくり返した私が、少しずつ自分の居場所を見つけていくお話を書いてみたいと思います。
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