【生存戦略】 先輩になって初めて見えた、「上下関係」の本質 ―従えばいいってもんじゃない 【理不尽の見分け方】
先に言っておくと、この記事は「下っ端は黙って従え」という話ではない。
かといって、「上下関係なんて全部いらない」と言いたいわけでもない。
下っ端として学ぶために、従った方がいい場面はある。
でも、下っ端だからといって、自分の尊厳まで差し出す必要はない。
その線引きの話を書きたいと思う。
これを読んだら、あなたは「お前が言うな……」と思うかもしれない。
たぶん、それはあながち間違ってはいない笑
私にとっての上下関係
私は普段から、上下関係をあまり気にしない。
良くも悪くも。
自分が人間として親方や先輩より劣っているとは思っていなかったし、今も新人だからってその子を雑に扱っていいとは思わない。
だって、小学生で私よりすごい子だっている。
暗算がめちゃくちゃ得意とか。
私は一桁も怪しい。
それなら、左官技術以外なら、新人と言われる人の方が得意なことだってあるはず。
少なくとも、人間として上とか下とか、そういう話にはならない。
だから、いくら偉い立場の人でも、
話がつまらなかったりしたら、たいがい真っ先に表情筋が死ぬ。
逆に、名もなき名手の面白い経験談になると、目が輝きだす。
私の表情筋は、そういうシステムで動いているもので…
でも、最低限の礼儀はわきまえているつもりだ。
その最低限の礼儀とは何なのか。
言葉にすると難しい気がしていたけれど、今にして思うと、かなり単純かもしれない。
それは、相手への敬意。
これではなかろうか。
敬意ってなんだろう?
挨拶をする。
約束を守る。
聞こえたら返事をする。
謝るときは謝る。
何かしてもらったら、小さなことでも感謝を伝える。
相手の時間を割いてもらっていることを自覚する。
腹に一物あっても、立てるときは立てる。
それでも、嫌なことをされたら、怒るときにはちゃんと怒る。
並べてみると、当たり前のことばかりだった。
相手をないがしろにしないこと。

だから、きちんと向き合うし、
こちらの尊厳を踏みにじろうとするなら、対抗する。
でも、その当たり前を、どの場面でも同じように実行できるかと言われると、案外むずかしい。
立場の違いってどういうこと?
人間として上下はないと言ったけれど、
じゃあ立場が対等かと言われたら、それは違う次元の話だった。
できる人と、まだできない人。
現場を納める人と、教えてもらいながら動く人。
自分の手で売上を立てている人と、先輩の時間を借りて育ててもらっている人。
人間としての上下ではなく、仕事上の立場の違い。
立場の違いの上下は、たしかにあると言うしかない。

ただし、
立場が上の者がそれを振りかざしていいという話ではないし、
立場が下の者が理不尽な命令に従わなければいけない話でもない。
理不尽でも、従った方がいい指示
見習いだった頃のある日。
現場に着いて荷物を降ろしていると、親方に怒鳴られた。
「おい、現場に入ったらまずこね場の段取りしろっていつも言ってんだろ!!これだから~以下略」
初耳である。
しかも、まだ荷物を降ろしている段階だった。
私は、いつもの作業手順を踏んでいただけだ。
移動中も、そんな話は一切出ていなかった。
完全に、親方の脳内劇場での出来事だった。
普通なら、なかなかの理不尽案件である。
でも、親方がその段取りでいきたいなら、そうするだけだ。
「すみません、すぐやります!」
やることいっぱいあるんだし、今できるわけないじゃん。
ぶっちゃけ心の中では、そう思っていた。
でも、言ってもしゃーない。

でも…
このパターンで口答えはしない方がいい。
私のような下っ端は、自分が知っている手順や、言われたことをやればいいだけだった。
でも親方は、現場全体の流れを見ている。
その流れは、現場によって毎回変わる。
材料の置き場。
職人の人数。
その日にどこまで進めたいのか。
どこを先に納めたいのか。
考えていることも、見えているものも、そもそも私の立場とは違う。
当時の私には、現場を仕切って納められるスキルはまだなかった。
だから、そこは従った方がいい。
言い方はアレだけど。
従うべきではない理不尽
泊まりがけの出張が多い店だった。
だから、いろんな現場に行き、いろんな人と会う。
そんな中、親方の定番ジョークがあった。
「こいつ、夜は空いてるぞ。安くしとこうか!」
始めは冗談に目くじらを立てても仕方ない、と
「いやいや、そこは高くしといてくださいよ!」
と返していたが。
何度も繰り返される気持ち悪いジョークに、私はだんだんうんざりしてきた。
そして、たまに冗談が本気か分からない人が現れる。
ついに私はキレた。
「そういうのほんっと気持ち悪いんでやめてもらえます?」

その時は冗談になに本気になってんだとか、
お前が言える立場かみたいに言う人がいた。
もちろん、「だよねー」って顔してくれる人もいた。
そこでは親方の立場が一番上だから、誰も口には出さないけど。
そんな人たちに好かれても、
私には何ひとつメリットはない。
その日は、親方フルシカトで必要な仕事だけした。
それ以降、そういう冗談は徐々に減っていった。
上下関係じゃなくて、距離感
つまり、私が言いたいのはこういうこと。
上下関係は、押し付けられるものじゃなくていい。
でも、自分でわきまえるべき立場はある。
ここを、最近よく考えるようになった。
私は基本的に、みんなで冗談を言って笑うのが好きだし、無駄に堅苦しいピリついた空気は苦手だ。
でもそれは、みんな仲良くオトモダチ感覚でいい、という意味ではない。
親しき仲にも礼儀あり。
結局、その距離感が大切だったみたいだ。

だから現場がスムーズに動く。
礼儀は媚びることじゃない
先輩になってみると、そこが前よりはっきり見えるようになった。
上下関係なんて時代錯誤だと言いたくなる気持ちは、分かる。
実際、時代錯誤な上下関係を押し付けてくる人はいる。
理不尽に従わせたいだけの人もいる。
それは重いし、しんどいし。
でも、全部を「上下関係なんて古い」で片づけると、見落とすものもある。
人間としては対等だ。
そこは、絶対に間違えたくない。
でも、仕事上の立場は、いつも同じではない。
教えてもらう立場のときは、教えてもらうための態度がある。
任される立場になったら、任されるだけの責任がある。
教える立場になったら、相手を潰さないように言い方を考えなければいけない。
私が大事だと思うのは、偉い人にぺこぺこすることではない。
新人をこき使うことでもない。
結局、上下関係とは
人間関係をスムーズにするための心構え。
それだけなのかもしれない。
現場を進めるために、自分より見えている人の判断を受け入れること。
相手の時間や経験に敬意を払うこと。
でも、自分の尊厳まで差し出さないこと。

距離感を間違えなければ、自分がラクになる。
可愛がってもらえれば、周りのサポートも手厚くなり、成長も早い。
それを得るには、ただ黙って従っていればいいんじゃない。
相手を尊重する態度が必要だ。
でも、自分の尊厳を平気で踏みにじる人にまで好かれる必要はない。
むしろ、環境が悪くなる。
そういうときは、下っ端だからと何でもかんでも飲み込んで従えばいいってもんじゃない。
今の時代だから言えることかもしれないけど。
だから、必要だと思った時にだけ、
下っ端根性を発揮すればいい。
必要がなければ、人間として立ち向かえばいい。
私の下っ端根性論は、また気が向いたら書きます。

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