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「概念の翻訳」

江戸中期から日本人がヨーロッパの知識を輸入しようとしたとき、自分たちが持つ漢籍古典の単語に当てはめて翻訳していった。例えばStatusを国とか国家と翻訳した。Res publicaは共和制と翻訳した。しかしそれらの単語はもともとが中国の歴史の中で生まれ、使われた言葉だったから、当然ヨーロッパ諸語の単語とは意味が違った。それで今でも「中国と日本はどちらが古い国か」なんて言うあほくさい議論が始まる。もともと中国大陸でも日本列島でも国やクニの意味はstatusではなかったのだから。

実は医学でも同じ事が起きていて、杉田玄白がAnatomische Tabellenを翻訳して「解体新書」として日本に紹介出来たのも、もともと彼が小浜藩の代々続く藩医の出身で、漢籍医典を熟知していたからだ。まさに父の膝の上で中国医学の古典を習った彼は、同時代の古方派の頭目吉益東洞が古典を改ざんしたりご都合主義的解釈を押し通すのを鋭く批判した。それは杉田玄白自身がそうした古典に精通していたからである。

つまり、今我々が普通に用いる「神経」という単語も中国医学に「神」「経絡」という単語があったから作れたわけで、もし彼らが全ての解剖学用語について新しく0から言葉を作らなければならなかったらそもそも翻訳自体不可能だっただろう。

しかしそこでも当然齟齬は生じた。Cordis, Lecur, Lien, Pulmones, Renisをそれぞれ心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓と訳したのだが、完全に意味が一致する単語は1つも無い。またPancreusに合致する中国医学の用語はなかったので、「膵臓」という単語を新しく作った。膵と言うのは彼らが作った文字で、国字の一種だ。 内臓を意味するにくずきを編にし、体脂肪が着いた大網をイメージして水草が揺らぐような形を作りにした。

先人の努力はどれほど敬意を表しても足りることはないが、今の我々はもともと全く文化的背景が違う単語を当てはめたのだから実は同じ意味にはなっていないということは理解するべきだろう。

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岩崎鋼 チップありがとうございます。と言うか、実はnoteのチップがどういうものか分かっていないんですが・・・。