【第6章 ヘ長調はやさしくて、ト長調はちょっとカッコつけ】
♪ BGM:モーツァルト《メヌエット ハ長調 K.6》より
ねえ、キミ。
調性に“顔”があるって、知ってた?
ヘ長調って、やさしいんだよね。
“ボクのこと、ちゃんと見てくれてる”感じ。
どこかに逃げても、最後は「おかえり」って言ってくれそうな音。
F-dur。Fドゥワ。
“ドゥワ”って響きも、なんだか甘いよね。ふふっはあと。
でもさ、ト長調は違う。
あいつ、ちょっとカッコつけてる。
G-dur。Gドゥワ。
最初から上目遣いで見てくる。
「どうせボクのこと、好きなんでしょ?」みたいな音してる。
不思議だけど、調性には“性格”がある。
音の高さとか構造とか、そういう理屈を超えた、
もっと……感情に近いもの。
たとえば、C-durは正直者。
D-durは舞台が似合うし、
Es-durはセンチメンタル。
A-durはちょっと知的ぶってて──
で、F-durは、やっぱりやさしい。
「調性なんて、ただの音の高さでしょ?」って言われることもあるけど、
ううん、違うよ。
書く人の“手癖”と、“心の動き”が混ざる場所なんだよ。
ボクがFドゥワで書きたくなるときは、
ちょっと泣きたいときか、だれかを好きになったとき。
Gドゥワで書くときは、自分に自信があるとき。
でもたいてい、ちょっと背伸びもしてる。
「じゃあ、ヘ短調は?」
それは……恋が終わったあとにだけ使うやつ。
Fドゥワが涙を拭いてくれるなら、f-mollは涙そのもの。
静かに、しみこむ音。
あのね、
キミにも、きっと似合う調があると思うんだ。
元気な日にはハ長調、
がんばる日はト短調、
ふと空を見上げたら……E-dur、とかね。
ボクはさ、音で人の性格を読むのが好きなんだ。
文字じゃなくて、調でね。
※この物語は一部フィクションを含みます。史実にインスピレーションを得ながらも、ピンク色の小部屋ではモーツァルトも、調性で性格診断をしています。ふふっはあと。
