『南風』 2026年5月号より
俳句結社誌『南風』5月号に掲載されている作品の中より、好きな句。
(以下、掲載順、敬称略。)
◆主宰作品「しばらく」 村上鞆彦 より
鴨を見る欄干に雪付いては溶け
鬼やらふ湯上りの子のにほひけり
薄氷の下きつぱりと藻のみどり
沈丁の咲きすすむ日の読書会(若林哲也句集『漱口』読書会)
春風のしばらく鳥の来ぬ木かな
◆雪月集より
髪を梳く自分の時間蝶生まる
小野伶
温き湯を上がりてよりの花疲れ
岩渕晃三
電柱に地番つばくら来りけり
前田佐吉子
白梅の雨に眼鏡を濡らしたる
阪本道子
初花や転居の庭に干すいろいろ
池之小町
薄く刷く新色の紅冬終る
田村紀子
ふりいでし雨の白さの花あしび
辻本靖子
梅一花眼そらせば見失ふ
𠮷村冨恵
窯出しの壺冬草に寝かせたり
赤川雅彦
順々に虻の震はす梅の蕊
帯谷麗加
二歩下がり仰ぐ菩薩の春の顔
星野早苗
白菜の手のつけられぬ開きやう
桑原規之
虫瘤の糠雨弾く二月かな
日野久子
◆顧問作品「桃源へ」津川絵理子 より
春の雪見て採寸の列にあり
ひとひらの花弁離さず梅の蕊
雨傘の細き柄恃む梅見かな
うららかやとんこつ味の宇宙食
駒返る草自転車の手信号
◆風花集より
ひとりの日雪のはやさがまた変はり
板倉ケンタ
夫起きてゐるらし湯たんぽの鳴りて
声かけて欲しくてしやぼん玉を吹く
市原みお
霾や銃を捨てよと銃を向け
若林哲哉
パンジーの花がら摘むといふいとま
中村幸子
春雪を巻き入れて傘畳みけり
春山へ未完の橋脚続きゆく
上田窓子
伊勢丹の伊の字の空を春の雪
陰山恵
買物の子も荷をひとつ桜草
太田美沙子
呼ばれたる気のして春の土起こす
岡原美智子
海だけを見て帰る旅春浅し
鳥山有里子
掃き癖の箒倒るる日永かな
館ゑみ子
歩行器の車輪の自在囀れる
藤本くに子
春浅し花屋に並ぶイヤリング
寺井鈴代
◆南風集より
湯のなかにひらいて雪を握りし手
五月ふみ
おほき手が雪をはらひて抱きにけり
宮本菫
犬ふぐりこころこころと揺れゐたり
初蝶来じぶんの色を知らずに来
磐田小
シクラメン一人が好きと図書委員
吉川祥子
みづうみにいつまでもゐる卒業子
横田朱鷺子
いつまでも喋るふらここ漕がぬまま
村井丈美
黙黙と手套の雨を絞りをり
卯月紫乃
レタス嚙む音の重なる夕餉かな
藤巻ことは
春手套やさしく置いて問ひただす
穴山ゆう
つの持つて節分の面渡しけり
東野礼豊
慈雨のごと昔を語る春ショール
坪倉千恵子
脚あげて下ろすにはとり冴返る
両角鹿彦
さへづりや術後の朝のおみそ汁
青居舞
寒鯉の朱や輿入れの下乗橋
小川純子
亀鳴くや電波時計の遅れゐる
野添敬子
打ち水やここだけ朝が早い道
豊冨瑞歩
日脚伸ぶ洗車の後の水たまり
神津宗寿
室の花落つるたび秒針は消え
黒澤葉摘
春を待つ肥料袋に腰おろし
岩間峯子
◆摘星集より 兼題「筍」
筍に地の奥の熱届きけり
槙枝聖子
筍を抜きたる穴を見に来る子
野村茶鳥
配り切りやつと我が家の筍剥く
青居舞
***
『南風』5月号に掲載していただいた自分の句より、二つ。
雨粒が梅の形の顎に乗り
茹でられし筍スーツケースより
南風俳句会の句会の一つである「みどりの会」は、毎月一度開催される吟行句会。2月は大阪城、雨の梅林公園だった。
「みどりの会」は毎回幹事さん達が丁寧に下調べをしてくださり、大阪、京都、奈良、兵庫など、様々なところで開催される。大変に恵まれていると思う。
***
トップの写真の『角川季語別俳句集成 夏』をついに購入。先輩句友さんが紹介されていて、ずっと憧れていた。まずは夏。厚いが意外と軽量。嬉しくて訳もなくぱらぱらしている。
