HouseとHome の違いについて―― 引き渡しの日に、主役は交代する
先日、フォロワーさんから以下のような
コメントをいただきました。
「知識を教えるのではなく、
生活者が自ら判断できる力を育てるという
視点に共感します。
ただ、
家づくりで本当に守るべきものは
『家』そのものなのでしょうか。
それとも、その家で長く暮らす
人の人生なのでしょうか?」
とても良いご質問だと思います。
実は同様のご質問を時々いただきます。
そして私は、その度に少し考え込むのです。
なぜなら、
この問いには簡単に優劣をつけられないからです。
世の中には、
「家づくりは人生づくりです」
という言葉があります。
確かにその通りかもしれません。
しかし私は、少し違う角度から考えています。
設計士や工務店がつくるのは《 ハウス 》です。
つまり 建物(家) です。
雨風をしのぎ、
地震から家族を守り、
安全に暮らすための器です。
一方、その建物の中で
家族が育んでいくものがあります。
それが《 ホーム 》。
つまり 家庭 です。
似ているようで、
この二つは同じではありません。
私は建築士です。
建築主さんの希望を伺い、
敷地を調べ、
法令を確認し、
図面を描き、
工事が適切に進むように監理します。
工務店さんは施工のプロとして、
責任を持って建物を完成させます。
私たちは主体性を持って仕事をします。
しかし、私たちが担当しているのは
あくまでも《家・建物・ハウス》です。
《家庭・ホーム》ではありません。
少し極端な言い方をすると、
設計士は家庭を設計できません。
工務店は夫婦関係を施工できません。
親子の会話を増やす工法もありません。
家族の幸せを保証する建材も存在しません。
それらは建物の外側にある問題だからです。
もちろん、
暮らしやすさについて
提案することはできます。
家族が集まりやすい間取りを考えることも
できます。
自然と顔を合わせる動線を
提案することもできます。
しかし、
それでもなお、
《家庭》そのものをつくることはできません。
そこに踏み込み過ぎれば、
それは設計者の傲慢になるような
気がしています。
そして迎えるのが引き渡しの日です。
多くの人は、引き渡しを「工事の終わり」と
考えます。
しかし私は少し違う見方をしています。
引き渡しとは、
《主体のバトンタッチ》
なのです。
それまでは設計者や施工者が主役です。
建物を完成させるために最善を尽くします。
そして引き渡しの日を境に、
主役は建築主さんへと移ります。
その建物を家庭へ育てていくのは、
そこに住む人たちだからです。
ですから、
「家を守ることと人生を守ること、
どちらが大事ですか?」
と問われれば、
私はこう答えます。
どちらも同じくらい大切です。
比べる対象ではありません。
良い家庭を育むためには、
安心して暮らせる建物が必要です。
良い建物も、
そこに暮らす人がいて初めて意味を持ちます。
建物は器です。
家庭はその中で育まれる営みです。
どちらが欠けても成立しません。
だから私は建築士として、
建物づくりに真剣に向き合います。
そして願うのです。
お引き渡ししたその家が、
やがて建築主様にとっての
大切な《ホーム》になりますように、と。
引き渡しの日に主役は交代します。
しかし、
その日から本当の暮らしが始まるのです。
いかがでしょうか?
拙著の 帯 には本文から抜粋して下記のように書いています。

!!!!
あほう老士 は 他のnote で、以下のように語っています。
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