見出し画像

♭08「そんなことはどうでもいいっ!」

「そんな事はどうでもいいッ!」

そう言われた瞬間、
私は少し驚きました。

なぜなら、
相手は建築のプロだったからです。

――

もう何年も前の話になります。

親戚筋から、
ある建築トラブルの相談を受けました。

詳しい内容は割愛しますが、
現場に到着した時には、
すでに空気がピリピリしていました。

先方の工務店さんが、
威圧するような大声で話しています。

発注者さんは申し訳なさそうな顔。

そして私の親戚は、
その大きな声に
すっかり萎縮しているようでした。

私はしばらく黙って話を聞いていました。

そして、
ひと通り話を聞いたところで、
こうお伝えしました。

「十分聞こえていますので、
もう少し静かに話しましょう。」

さらに、
自分の立場や所有する資格も説明しました。

「私は建築技術者として来ています。
是は是、
非は非としてお話を聞きます。
ですから、
必ずしもあなたの敵ではありません。
ただし、
おかしいと思うことについては
指摘させていただきます。」

そして続けました。

「もし技術的な見解が一致しないのであれば、
最終的には民事調停など第三者の場で判断してもらえば良いと思います。
弁護士さんにも知り合いはいます。
この地に赴任してきている
裁判官も顔見知りで、
公平公正な立場で判断してくれます。
ですから、
この場ではお互い建築のプロとして、
冷静に技術の話をしませんか?」

すると、
先ほどまで部屋に響いていた声が、
少しだけ小さくなりました。

そこから、
具体的な話が始まりました。

そして私は、
ある違和感を覚えました。

その工務店さんが、
同じものを指して、
ある時は
「セメン」
と言い、
またある時は
「モルタル」
と言い、
さらに
「コンクリ」
と言うのです。

そこで確認しました。

「今おっしゃったセメンというのは、
モルタルのことですか?」

すると、
「そうです。」

続けて聞きました。

「では先ほどのコンクリというのも、
モルタルのことですか?」

すると、少し間をおいて
また
「――そうです。」

という返答。

私は少し困りました。

なぜなら、
その三つは全く別のものだからです。

そして、
その時に返ってきた言葉が、
タイトルの一言でした。

「そんな事はどうでもいいッ!」

でした。

でも、
それではダメなんです。

《そこ》が大事なんです。

一般の方が混同されるのは仕方ありません。

しかし、
技術者同士が建築の話をする時には、
言葉の定義がとても重要です。

例えば、
セメントは粉です。

工場から出荷された状態の材料です。

そのセメントに水を混ぜると、
セメントペーストになります。

さらに砂を加えると、
モルタルになります。
左官屋さんが壁を塗る時などに使うものです。

そして、
モルタルに砕石などの粗骨材を加えたものが、
コンクリートです。

簡単に書けば、
セメント
↓ ➕水
セメントペースト
↓ ➕砂
モルタル
↓ ➕粗骨材
コンクリート
という関係になります。

似ているようで、
用途も性質も違います。

だから、
補修の話をしているのか、
強度の話をしているのか、
施工の話をしているのかによって、
使う言葉、素材名が変わるのです。

建築トラブルでは、
こうした言葉や認識の違いが、
原因の特定や責任の所在、
補修方法の判断にまで
影響することがあります。

だから私は、
「そんな事はどうでもいい」
とは思えませんでした。

むしろ、
そういう小さな違いを
丁寧に整理するところから、
問題解決は始まるのだと思っています。

さて。

このトラブル、
実はこの後がさらにややこしくなります(汗)。

少し長くなりましたので、
続きはまた別の機会にお話ししましょう。

続きが気になれば
フォローしておいてください。

=============

ここまでお読みいただき有難うございました。
共感いただける方が多いと嬉しい限りです。
よろしければ フォロー や ♡ を押しておいていただけると励みになります。
また次回もお付き合いください。

※趣味で以下も配信しています
▶ RC住宅を推奨しているのは
  こちらのYouTubeチャンネル
▶ 建築施工管理技士を目指す方は
  こちらのYouTube  こちらのnote
▶ 土木施工管理技士を目指す方は
  こちらのYouTube   こちらのnote
▶ SFショートやエッセイを発信しているのは
  こちらのnote
▶拙著(紙媒体)を紹介しているのは
  こちらの出版社
▶電子書籍は
工務店が語らない13の裏事情 
RC住宅に至る21のエピソード 
木造と同等価格のRC住宅  
家選びに必須の13の検討課題   


いいなと思ったら応援しよう!