炙りおかひじきと告知
すっかり間が空いてしまいました。できるだけゆっくりのんびりしながら、料理をしたり文章を書いたりする生活をしたいとずっと思っているのですが、なかなかうまくいかない。仕事が忙しいというよりも、ただものぐさで、いよいよやばくなるまで腰が上がらないだけなのですが…… それでも今年度は例年よりもちょっと忙しめで、新しく映像を撮らないといけない機会が多いので、ちょっとプレッシャーです。
昨年末くらいからリサーチを進めていたプロジェクトが先月頭にひとつお披露目になったのと、もうひとつ情報公開になったものもあるので告知です。
告知
現在開催中の展覧会:Suddenly This Overview
先月の頭から国際交流基金シドニー支部のギャラリーで展覧会が開催されています。
キュレーターはThe 5th Floorの岩田智哉さん。太平洋戦争終戦直前にオーストラリア中西部で発生したカウラ日本人捕虜集団脱走事件と、それがきっかけに戦後カウラに整備された日本人戦争墓地・日本庭園を題材に新作を作りました。新しい実践を試みる機会にしてほしいということだったので、普段とは違うテーマに取り組んでみました。
調べてもらうとわかるのですが、カウラ事件はなかなかに凄惨な事件で、それがゆえに映画や小説の題材にもされています。カウラが戦後の日豪和解の中心となってきた歴史的経緯もあって、カウラの歴史は日豪二国間関係の物語に縮減されてしまうことさえあるわけですが、日本人墓地に当時日本籍だった台湾・朝鮮出身者がいまも埋葬されていたり、カウラ自体ももともとオーストラリア先住民のウィラジュリ族にとって重要な土地であったりするなど、そこには単純な二国間関係に還元できない、ポストコロニアルな問題が横たわっています。
展覧会では、庭園設計の技法である借景や見立てといった空間―意味操作についての分析を切り口にして、衝撃的な事件と美しい和解の物語の影にしばしば追いやられてしまう、カウラの土地に横たわるコンテクストの複数性を描こうと試みました。
もうすぐ開催予定の展覧会:風を掘る/弁証法的風景
もうひとつは来月10日から札幌で開催予定の展覧会。こちらも新作です。「風を掘る」というタイトルで、データセンターと再生可能エネルギー開発についての調査に基づいた映像を発表する予定です。
このプロジェクトはちょっと建付けが特殊で、SCARTS(札幌市文化芸術交流センター)と北海道大学CoSTEP(科学技術コミュニケーター養成プログラム)の共同のもと、アートとサイエンス・コミュニケーションをテーマに、アーティストに研究者を引き合わせて新作を作らせるというプロジェクトです。今年は「リジェネラティブ」というお題目が与えられています。平たくいえば、北海道大学の研究者からお話を聞いて、それをもとにアーティストがなんか作品を作るというプロジェクトなんですが、今回はテーマがテーマだけに研究者だけじゃなくて企業や市民団体からも話を伺っています。
「リジェネラティブ」は農業分野でよく使われている概念で、おそらくお声がけをいただいたときも、食べ物のことやってくんないかな〜みたいな感じでのお声がけだった可能性が高いのですが、色々な条件や、僕自身が北海道の再エネ開発に関心があったのもあって、こちらもまた普段あんまり扱わないテーマにチャレンジする感じになりました。
例によってスケジュールが押しに押しているのですが、がんばります。
あと、横浜のArt Center NEWでもグループ展があります。こちらは過去作。2016年(10年前!)に制作したSierraという作品を展示します。
真鯛の塩焼きと炙りおかひじき
というわけで、スケジュールがバタバタもバタバタで心穏やかではいられないのですが、心の平穏は生活の平穏から。なるべく普段の穏やかな生活を手放さないように心がけています。
なんといっても今は初夏。初夏の食材が一番好きなので、この時期に料理をしないなんてありえない。そんな気持ちで日々のご飯を作っています。ヤングコーンやら初鰹やら青梅やら、大好きな食材は色々ありますが、地味ながら他に代えがたい食材がおかひじき。炒め物やおひたしが定番ですが、個人的に一番好きな食べ方が直火の炙り焼きです。今日は、真鯛の塩焼きの付け合せにして、煎り酒のソースをあわせたいと思います。

ひじきとついていますが海藻ではなくヒユ科の野菜です。そういわれてみるとスベリヒユとも似ています。
まずはソースの下準備から。煎り酒とは、酒に梅干しを加えて煮詰めたもの。醤油が普及する以前、江戸中期くらいまで広く用いられていた調味料だそうです。

本来は梅は潰さずそのまま入れるので、澄んだ仕上がりになりますが、今回はしっかり梅を効かせたいので、すり鉢で潰します。

真鯛の切り身を買ってきました。腹骨を外し、中骨を抜いておきます。せっかくなので腹骨があるので出汁をとりますが、面倒なら省いても大丈夫。煎り酒には鰹節を入れる場合もありますが、薫香が邪魔になることが多いので、個人的には入れないほうが好みです。今回のように魚のアラでとるほうが食材と馴染みの良い煎り酒になると思います。

腹骨は香ばしい香りがするまで焼きます。今回は副菜用に蕪を焼いたので一緒にオーブンに入れましたが、グリルで炙るのでも大丈夫。

焼けたら酒と一緒に小鍋に入れ、酒が半量になるくらいまで煮詰めます。煮詰めたらペーストにした梅を加えてひと煮立ちさせ、最後に少量のバターを加えてコクと濃度を与えます。仕上がりの写真は撮り忘れました。

真鯛の身のほうは串打ちしてグリルで焼きます。強火で皮目をパリッと焼き上げるのが目標。身への火入れは予熱とオーブンで行うので、皮が焦げないギリギリまで強火にして、なるべく早く皮に火を入れられるようにしたいです。

状態を確認しづらいですが、魚焼きグリルでも大丈夫。
皮目が焼けたら身側にも20〜30秒ほど火を当ててオーブンへ。オーブンは腹骨と蕪を焼いたあとの予熱をそのまま使いました。だいたい120〜130℃くらいでしょうか。皮目側からほとんど火は入っているので、盛り付けまでの5分ほど、温かいところで休ませながら中まで火が入っていくのを待つイメージです。

最後におかひじき。調理は一瞬で終わります。太い茎を除いておいたところに、軽く塩とオリーブオイルを振って和え……

把手のついたザルで直火に当てます。菜箸でひっくり返しながら30秒〜1分ほど。すぐに火が通ります。

炭をおこす環境があるなら炭火でやると更に香りが良くなります。
盛り付けて完成。地味ですがとってもおいしいです。

おかひじきは魚との相性、とくに酸味のあるソースとの相性がとても良いです。今回は温かい料理でしたが、薄造りにした初鰹の刺身と合わせるのも美味しいです。土佐酢で食べてもいいですし、粗塩を振って柑橘の搾り汁とオリーブオイルをかけてもよいでしょう。炙ったおかひじきの香りが鰹の血の香りを柔らかくマスクしつつ、大根や玉ねぎほど繊維感の強くないシャクシャクとした食感が、しっとりと艷やかな鰹の質感にとてもよく合います。
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