新型パジェロのニュースが、なぜベトナムから届くのか
もうこの年になると、新車のスクープ記事を見てワクワクすることは、ほとんどなくなりました😅
昔は自動車雑誌の予想イラストを見ながら、
「次はどんな形になるのだろう」
「どんなエンジンを積むのだろう」
と、それだけで何時間でも楽しめたものです。
しかし今は、新型車のニュースを見ても、
「また大きくなったな」
「ずいぶん高くなりそうだな」
「今度は電動化か」
くらいで終わることが多い。
そんな僕が、久しぶりに少し気になったのが、新型パジェロのニュースでした。
大学生のとき、初めて乗った車がパジェロでした。
結局今まで3台乗っています。
これまで所有してきた車の中でも、一つの車名として最も長く付き合ったのがパジェロです。
一時期は本気で、
「もう、ずっとパジェロでいいんじゃないか」
と思っていました。
だから今回の復活は、単なる新車スクープとは少し違います。
昔よく知っていた人が、長い間姿を消したあと、少し雰囲気を変えて戻ってくる。
そんなニュースを聞いたときに近いのかもしれません。
日本で披露されたパジェロを、ベトナムの記事で知った
新型パジェロのニュースを追いかけていて、ひとつ不思議に思ったことがあります。
検索すると、なぜかベトナム発の記事がやたらと出てくるのです。
今回、僕が読んだのはこちらの記事です。
発信元はベトナムですが、記事の舞台は日本です。
新型パジェロは、朝霧高原で開催された三菱自動車のイベント「スターキャンプ」で、一部のパジェロファンに先行公開されました。
三菱自動車の公式サイトにも、体験会の様子が掲載されています。
▶︎ 新型PAJERO 世界最速体験会 IN STAR CAMP
さらに三菱自動車は、新型パジェロを2026年秋に世界初公開すると正式に発表しました。
日本仕様は2019年に生産を終了しているため、国内では7年ぶりの復活です。
▶︎ 三菱自動車、新型クロスカントリーSUV「パジェロ」を2026年秋に世界初公開
初代パジェロが登場したのは1982年。
これまで4世代にわたり、世界170以上の国と地域で累計325万台以上が販売されました。
新型はトライトンのラダーフレームをベースに改良を加え、キャビンや前後サスペンションなどを専用開発しているそうです。
三菱自動車は、新型パジェロを、
「冒険心と挑戦心を象徴する、新たなフラッグシップモデル」
と位置づけています。
復活そのものは、もう噂ではなく、ほぼ確定情報でしょう。
それにしても、日本で披露された日本車のニュースを、なぜ僕はベトナムのサイトから教えてもらっているのでしょうか。
パジェロがベトナムで一番売れているわけではない
ベトナム発の記事が多いので、最初は単純に、
「パジェロはベトナムでよく売れているのだろう」
と思いました。
しかし、少し考えれば、それほど単純ではありません。
新型パジェロは三菱自動車のフラッグシップモデルです。
おそらく、誰もが気軽に買える価格帯の車にはなりません。
ベトナムで最も多く販売される大衆車になるとも考えにくい。
記事が多いからといって、パジェロそのものがベトナムで一番売れているという話ではないのです。
調べてみて分かったのは、
ベトナムでパジェロの販売熱が高いというより、三菱自動車というブランドに対する熱量が高い
ということでした。
似ているようで、かなり違います。
ベトナムでは、いま三菱車が伸びている
三菱自動車によると、2025年度のベトナムでの小売販売台数は4万8,096台。
前年度から11.7%増え、2年連続で過去最高を更新しました。
市場シェアも、前年度の13.3%から14.9%へ上昇しています。
▶︎ 三菱自動車、2025年度のベトナム販売台数が2年連続過去最高を更新
ここで大事なのは、三菱がベトナム市場全体で一番売れていると単純化することではありません。
三菱自動車の公式発表が示しているのは、
販売台数が過去最高を更新し、市場シェアもかなり伸びている
ということです。
そして、ベトナムで三菱の販売を牽引しているのが、7人乗りMPVの「エクスパンダー」です。
2025年度の販売台数は1万9,731台。
内燃機関車のMPV部門で7年連続1位、内燃機関車全体でも4年連続の年間販売台数1位になっています。
家族で乗れる。
荷物も積める。
道路状況や激しい雨にも対応しやすい。
そして、一般家庭が現実的に購入を検討できる。
エクスパンダーは、ベトナムの生活にうまくはまった車なのでしょう。
そのほかにも、小型SUVのエクスフォースや、3列シートSUVのデスティネーターが販売を伸ばしています。
日本では三菱と聞くと、デリカD:5、デリカミニ、アウトランダーPHEVを思い浮かべる人が多いと思います。
一方、ベトナムではエクスパンダーやエクスフォースが、街の中で三菱の存在感を大きくしています。
三菱車をよく見かける。
知人が乗っている。
次に買う車の候補に入る。
販売店や修理拠点もある。
そうした日常の接点が増えれば、三菱というメーカーそのものへの関心も高まります。
三菱は、ベトナムに30年以上根を張ってきた
三菱自動車がベトナムで事業を始めたのは1994年です。
2024年には、ベトナム事業30周年を迎えました。
ベトナムの自動車市場が、まだ立ち上がり始めた時期から、現地で生産と販売を続けてきたことになります。
車のブランドは、広告だけでは根づきません。
街で見かける。
知り合いが乗っている。
近くに販売店がある。
故障したときに修理してもらえる。
中古車として次の人へ渡っていく。
そうした生活との接点が積み重なって、初めてその国の中にブランドが根を張ります。
三菱は、ベトナムで突然売れ始めたわけではありません。
30年以上かけて地面を耕してきたところに、エクスパンダーやエクスフォースという車が、うまくはまったのでしょう。
売れている車と、語られる車は違う
ここで、新型パジェロの役割が見えてきます。
ベトナムで実際に販売台数をつくっているのは、エクスパンダーやエクスフォースです。
一方、新型パジェロは、おそらくそれほど多くの台数を販売する車ではありません。
少なくとも、エクスパンダーのように一般家庭へ大量に普及させることを第一の目的にした車ではないでしょう。
それでも、パジェロのニュースは読まれます。
なぜならパジェロは、販売台数をつくるだけの車ではなく、
「三菱自動車は、何を得意とする会社なのか」
を説明する車だからです。
トヨタにとってのランドクルーザー。
日産にとってのパトロール。
そして、三菱にとってのパジェロ。
実際にパジェロを買わない人にとっても、
「あのパジェロをつくっている三菱」
という物語は、ブランド全体に効いてきます。
エクスパンダーが市場を広げ、パジェロがブランドの天井を高くする。
売れている車と、語られる車は違う。
ベトナムでは、その二つがきれいにつながり始めているのだと思います。
篠塚建次郎さんの助手席で、腰を抜かしかけた
パジェロを語るうえで外せないのが、パリ・ダカールラリーです。
パジェロは1983年からダカールラリーに参戦。
7連覇を含む通算12回の総合優勝を記録しています。
そして1997年、篠塚建次郎さんがパジェロを駆り、日本人として初めて総合優勝を果たしました。
▶︎ 1997年ダカールラリー・篠塚建次郎、日本人初の総合優勝
僕にも、篠塚さんにまつわる忘れられない思い出があります。
昔、篠塚さんが仙台に来られたとき、運転する車の助手席に乗せてもらったことがあります。
ディーラーのイベントで抽選で当たったのですが、
腰を抜かしそうになったのをはっきり覚えています(笑)。
こちらとしては、車が横を向き、景色が飛び、地面が急に近づいてくる。
ところが篠塚さんは、近所のスーパーへ買い物に行くような落ち着き方で運転していました。
同じ車でも、運転する人が違えば、まったく別の生き物になります。
パジェロの性能もすごかったのでしょう。
しかし、それ以上に、
「世界で戦う人は、車の限界の見え方そのものが違う」
と感じました。
パジェロは世界170以上の国と地域で販売されました。
しかし、販売台数だけで世界的なブランドになったわけではありません。
篠塚さんたちが砂漠を走り、飛び、壊れそうになりながら、それでもゴールへたどり着く。
その映像と物語が、パジェロという名前を世界中の人の記憶に焼き付けたのだと思います。
ニュースは、熱量のある場所に集まる
今回の出来事そのものは、日本で起きています。
新型パジェロは日本で開発され、日本のイベントで先行公開されました。
ベトナムのメディアが、日本より先に新型パジェロを発見したわけではありません。
日本で出た情報や参加者の声、ほかの海外自動車メディアによる報道を、ベトナムのメディアが熱心に拾い上げ、記事にしています。
その記事が日本語に翻訳され、検索結果を通して僕のところへ戻ってくる。
以前なら、日本車の新型情報は日本の自動車雑誌から海外へ流れていきました。
いまは、日本で撮られた写真や動画が海外で記事になり、翻訳され、日本の読者がそれを読む。
情報が一度、海外旅行をしてから帰宅する時代です。
ニュースは、必ずしも商品が生まれた国から発信されるとは限りません。
その商品を待っている人が多い場所。
そのメーカーに勢いがある場所。
記事を出せば、熱心に読んでくれる人がいる場所。
情報は、そうした熱量の高い市場に集まります。
ベトナムでパジェロが一番売れているから、新型パジェロの記事が多いわけではありません。
三菱車が売れ、三菱というメーカーへの関心が高まっているから、ブランドの象徴であるパジェロ復活のニュースまで大きく扱われる。
そう考えると、ベトナム発の記事が多い理由も腑に落ちます。
久しぶりに、少しワクワクしている
僕が大学生のころ、パジェロの新型情報は自動車雑誌で読んでいました。
発売前の予想イラストを見ながら、
「次はどんな顔になるのだろう」
「今度はどんな四駆になるのだろう」
と、勝手に想像していました。
その後、実際に3台のパジェロを乗り継ぎました。
篠塚建次郎さんの助手席にも乗せてもらい、腰を抜かしかけました。
そして30年以上が過ぎたいま、日本で披露された新型パジェロの情報を、ベトナムのウェブサイトから日本語で読んでいます。
ずいぶん遠回りをしたものです。
もうこの年になると、新車のスクープでワクワクすることは、ほとんどありません。
今回のパジェロも、実際に買うかどうかは別の話です。
大きさも、価格も、使い方も、昔とは違います。
それでも、長く付き合った車の名前が戻ってくると聞けば、やはり少し気になります。
パジェロは日本に帰ってくる。
ただ、そのニュースは一足先に、ベトナムを経由して帰ってきました。
売れる車が市場をつくり、語られる車がブランドをつくる。
新型パジェロを追いかけていたら、車の復活だけではなく、三菱自動車の熱がいま世界のどこに集まっているのかまで見えてきました。
この年になって久しぶりに、新型車の正式発表を少し楽しみに待っています。
いかがでしたか?
自分の場合、立場もあるので
記事には、どうしても整えてから出す話が多くなります😅
でも、整えすぎた言葉は、だいたいつまらない(笑)
きれいな結論
正しい言葉
もっともらしい話
それだけでは残らない本音や違和感を、たまにメールにも書いています。
不定期配信です。
よろしければこちらから♪
↓
【登録はこちら】
