アーサー王物語
『アーサー王物語』阿刀田高 講談社 1998年9月刊
本書、近所の図書館で借りてきた娘に「お父さん、面白かったよ」と勧められ、手に取ったところ、本当に面白く、あっという間に読み終えてしまいました。
アーサー王は古代イギリスの伝説の王として有名で、その名が知られていますが、実在したかどうかについては現代も議論の分かれるところで、その歴史性を証明する文献や史跡は見つかっていないとされています。
これは日本においても、神武天皇が実在したかどうかの議論に似ているなあと思うのですが、実在していたのか実在していなかったのかは、自分にとって、実はどうでもいい話で、神武東征にしても、アーサー王伝説にせよ、現代にまで語り継がれ、伝承されているということが何よりも重要であると考えます。
果たして必要性がなく、意味のない物語や逸話が数百年、数千年を経て人々の間に残るものでしょうか。
何かしらの意義や意味があるからこそ、永い時間の淘汰を経てもなお、多く人の心をうつ普遍的価値をこういった神話や古典と呼ばれるものは有しているに違いありません。
そういった観点より、神話や伝説上の人物達はその逸話が現存している時点で、現代においてもなお、読む人、知る人の中で生きているのです。
ですので、自分は実在、非実在の話はどちらでもよいと思っています。
それよりも、その物語を読み、その精神に触れたものがどの様に生きていくのか。
その伝承の何かしらに自己の琴線が触れるものがあったのであれば、それが何であるのか、その正体を突き止めずにはいられません。
さて、本書、作家の阿刀田高が現代に伝承されてきたアーサー王伝説のいくつかのエピソードを取り纏め、編纂し、出版されたものとなっております。
聖杯伝説や円卓の騎士たち、名剣として名高いエクスカリバーのエピソード等、数々のゲームやアニメ、映画、オペラなどに転用されてきた元ネタがてんこ盛りとなっています。
我々日本人が桃太郎の鬼退治、スサノオのヤマタノオロチの討伐のお話を子どもの頃から親しんでいたように、欧米の人々にとって、このアーサー王伝説は同様のものであるのだろうなと感じました。
また、アーサー王物語に貫かれている騎士道精神ですが、現実にこの騎士道精神に感化され、生きた人々が後のヨーロッパ繁栄の礎となったと自分は考えています。
そういった意味で、伝説の人物とは不滅の存在で、人々の中で生き続けているのです。
この物語はアーサーを中心に、騎士や魔法使い、美しき姫君たちの活躍するいわゆるファンタジーですが、キャラクターたちに通底している気高き精神から得ることはきっと多い筈です。
自分もハウツー本、自己啓発本は大いに読み、現代を生きていくためのスキル、ノウハウを得ることは多々ありますが、古来より変わらぬであろう人間の持つ崇高さを感じることはあまりありません。
しかし、時代の淘汰を経て今なお残る古典にはその力が残っていると常々、感じる次第です。
アーサー王に限りませんが、東西問わず、何かしらの古典から学ぶ機会を得る人が増えることを願ってやみません。
情報や知識を繰るではなく、本質的な魂を磨くことこそが、混迷さをまし、不確実となっていく世を生き抜く最良の手段であると考えるからです。
ちなみに本作は「講談社 痛快 世界の冒険文学シリーズ」のラインナップのひとつとして、世に出たのですが、このシリーズ、少年少女向けに世界の冒険文学の名作を中心にセレクトされており、大人でも十分に味わえる作品がチョイスされ、現役実力派作家達により翻案されております。
全て読んだことのある作品、作家ではありませんが、以下、かなり豪華執筆陣となっていないでしょうか。
『偉大なる王(ワン)』 斎藤洋
『バスカビル家の犬』 大沢在昌
『三銃士』 藤本ひとみ
『運命 二人の皇帝』 田中芳樹
『吸血鬼ドラキュラ』 菊地秀行
『モヒカン族の最後』 戸井十月
『モンテ・クリスト伯』 村松友視
『ロビンソン・クルーソー 』伊集院静
『偉大なる王(ワン)』 斎藤洋
『宝島』 宗田理
全24作品のシリーズとなっており、他にもまだまだ多くの名作が名を連ねております。
私もアーサー王以外の作品を早速読んでみようと思っています。
自分で読むのも良し、小さなお子様のいらっしゃる方は是非、おすすめになられてみてはいかがでしょうか。
勇気がなければ、他のすべての資質は意味をなさない。(ウィンストン・チャーチル)
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人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。