久光製薬が総額3900億円でMBOを実施。敵対的買収者は現れるの?
2026年1月6日、久光製薬(東証プライム:4530)は創業家出身の中冨一榮社長の資産管理会社(タイヨー興産株式会社)がMBO(経営陣による会社の買収)を実施すると公表しました。
中冨社長は買収する資産管理会社の100%を保有しており、ファンドに頼らないMBOです(買収資金の一部を、SMBC日興証券からのB種優先株式でまかなう予定です)。
このMBOに対して、会社(久光製薬)はTOBへの応募を推奨しています。
https://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/news_release_260106-3.pdf
TOB価格は普通株式および米国預託証券は1株当り6,082円、新株予約権は1個当たり1円、総額は3,900億円と日経新聞(2026年1月7日付)は報じています。
TOBプレミアムは1月6日の終値5,200円/株に対して17%です。ただし、これは1月6日にTOBの情報が漏れて、株価が急騰したためです。
1月5日の終値4,500 円/株に対して35%なので、これが中冨社長の意図していたプレミアムだと思います。
久光製薬の株主の中には、「TOB価格がもっと高くならない?」「敵対的買収者は現れるの?」と考えている人がいるかもしれませんね。
ということで、今回は「敵対的買収者は現れるの?」について書きます。
なお、以下におけるコメントは私見です。また、計算の前提が会社や第三者算定機関と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
・TOBの概要
TOBの主な内容は以下のとおりです。
・公開買付者:タイヨー興産株式会社(中冨社長が100%保有)
・買付価格:
普通株式1株につき6,082円
新株予約権1個につき1円
株券等預託証券1株につき6,082円
・買付期間:2026年1月7日~2月19日(30営業日)
・買付予定数:64,681,878株(発行済株式総数の86.1%)
・買付予定数(下限):41,119,400株(発行済株式総数の54.7%)
久光製薬が保有する自己株式は3,684,700株です。
中冨社長および創業家の資産管理会社の一部は、保有している3,917,742株(所有割合:5.56%)を継続保有します。
創業家の資産管理会社の一部は2,658,100株(所有割合:3.77%)をTOBに応じた後、公開買付者にA種優先株式として再出資します。
また、取引銀行(三菱UFJ銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行、佐賀銀行)が保有する13,500,472株(所有割合:19.15%)についてTOBに応募することを合意しています。
売却が確定しているのは約20%なので、TOBへの応募で60%強を集めないといけません。
・久光製薬の概要
久光製薬は「サロンパス」や「アレグラ」などで有名な製薬会社です。米国などで一般用医薬品の販売が伸びています。業績は良好で、財務も健全です。
・久光製薬の株価推移
下図は久光製薬の過去10年間の株価推移です。

2018年、2021年1月~2021年6月の株価はTOB価格の1株6,082円を超えています。TOB価格に不満な株主は多いかもしれません。
なお、2025年2月期の純資産・当期利益を基準にしたTOB価格のPERは20.5倍、PBRは1.6倍です。
同業他社の中には、久光製薬よりも倍率が高い企業もあれば、低い企業もあります。株価倍率を基準にすれば、TOB価格は高くも安くもない水準です。
※2026年1月7日の終値は6,200円(前日比+19.23%)、1月8日の終値は6,440円(前日比+3.87%)でした。TOB価格の引き上げを狙っている人がいるようですね。
・久光製薬の財務情報
次に、久光製薬の財務情報です。過去5年間の財務情報、来期予想が下表です。
【久光製薬の過去5年間の財務情報(単位:百万円)】

2021年2月期から2025年2月期において、売上高は1.36倍、営業利益は1.77倍、経常利益は2.03倍、当期利益は2.35倍です。増収が続いています。
ネット・デットはマイナスなので、資金繰りには余裕があります。
2025年2月期の財務情報、TOB価格をもとに計算したEVは約324,081億円です。
EV/EBITDAは12.8倍なので、TOB価格は安くありません。
・EV=時価総額(自己株式除く)+ネット・デット=434,743百万円-110,662百万円=324,081百万円
・EV/EBITDA=274,769百万円÷25,230百万円=10.9倍
※時価総額は、発行済株式総数75,164,895株から自己株式3,684,700株を除いた71,480,195株として計算。
2026年2月期の予想値、TOB価格をもとに計算したEVは約3,356億円です。
EV/EBITDAは12.7倍なので、TOB価格はそれなりの水準です。
つまり、過去実績・来期予想をもとに計算すると、久光製薬のTOB価格は悪くない水準です。
・久光製薬のTOB価格について
久光製薬のTOB価格はそれなりの水準です。安くはありません。
第三者算定機関であるMUMSS(三菱UFJモルガンスタンレー証券)は、久光製薬の1株当り株価を次のように算定しました。
・市場株価分析: 4,172 円から4,500 円
・類似企業比較分析:4,424 円から5,128 円
・DCF分析: 5,578 円から6,570 円

TOB価格が重なっているのはDCF法だけで、市場株価法やマルチプル法よりも高い価格です。DCF法の評価額が高いのは、事業計画が増益だからです。
久光製薬の事業計画は次のとおりです。
【久光製薬の事業計画(単位:百万円)】

この事業計画の2026年2月期計画との比較が下表です。
【久光製薬の事業計画の2026年2月期比】

2031年2月期まで増収増益予想です。M&Aなどを見込んでいない計画なので、久光製薬単独でここから増収増益を達成するようです。
なお、リリースによればWACCは5.65%から6.65%です。会社の作成した事業計画によれば、TOB価格は適性水準といえるでしょう。
アクティビストが1株当り6,082円を超えるTOBをするかというと、微妙です。
もし、久光製薬の買収に手を挙げる先があるとすれば、シナジーのある同業でしょう。同業他社であれば、久光製薬の価値をもっと高くできるかもしれません。
敵対的TOBに発展するかといえば……可能性は高くないでしょう。
・まとめ
今回は久光製薬のTOB価格について解説しました。
過去に高値で取得した株主は不満かもしれませんが、TOB価格(6,082円)よりも高い敵対的買収者が出てくる可能性は高くありません。
TOB期間は2月19日までなので、しばらくは敵対的買収者が出てくることを待って、出てこなければ売るべきでしょうね。
TOBに応じるか否かを判断する際の参考になれば幸いです。
それでは!
※本記事は投資勧誘を意図するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。
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