CST概論⑦~患者の感覚~
なぜ患者の感覚が重要なのでしょう。
それは、自分の体の状態を正確に理解してもらうためです。
自身の体の状態を把握することは、治療内容や回復に大きな影響を与えます。
では、どんな感覚が必要なのでしょう。
まずは、刺激に対して表現できる感覚です。感覚の表現方法は人それぞれですが、その刺激が自分にとって「良い」か「悪い」かがわかるかです。
例えば、治療で体を触られて動かされた時に、痛いと感じるのか気持ちいいとを感じるのかです。これなら少しわかるでしょうか。
感覚が高い人の場合は、触れられ方によってすぐに嫌だと感じたり、強さに敏感だったり、好みの方向性を表現したりされます。
一方、感覚が低い人は、明らかに痛みがある場合は分かりますが、具体的な不快感や方向などを表現することができません。
例として、肩が痛くて上げられないという患者がいます。
治療後、痛みは残っていますが、可動域に明らかな改善が見られた場合、患者の感覚表現によって感覚を判断することができます。
感覚が高い場合、
「あっ!だいぶ上がるようになってる!さっきよりも楽です!」
とプラスの表現をされます。
一方、感覚が低い場合は、
「まだ痛いですね。痛みはあまり変わりません。何とかしてくれませんか?」
とマイナスな表現をされます。
もしもあなたが患者だったら、どのように感覚を表現しますか。典型的な例で考えてみましょう。
<質問>次の絵を見てあなたはどう感じますか?

マイナス
・もう半分しかない
・たったこれだけ少ない
プラス
・まだ、半分もある
・こんなにもある
・多い
コップに水が半分入っているという現象は、誰が見ても同じ状況です。しかし、この現象に対してどのように意味づけするかは、自分次第です。
プラスとして受け取るのか、マイナスとして受け取るのかは、時と場合によっても変わるので、正解はないと言えますが、プラスの視点で受け取り、飲む場合とマイナスの視点で受け取り、飲む場合では、明らかに味わいも異なるものになります。つまり、自分がある現象をどのように捉えるかによって、体の感じ方も大きく影響することがあります。
この視点で、患者の表現を理解していくことが、大切になってきます。
患者の感覚レベルを一定程度把握することは、将来の治療に非常に役立ちます。ですので、患者の感覚レベルがどの程度かを意識して診るようにしてください。ちなみに、治療家の介入によって、患者の感覚レベルを向上させることも可能です。ただし、治療家が意識的に行わなければ、感覚レベルはあまり向上しません。
治療家の方は、患者の感覚レベルを診て、治療にうまく取り入れていますか?患者に感覚を高めることの重要性をしっかりと理解してもらえれば、治療で驚くような反応が見られる場合もあります。ただし、必ずしもすべての人に当てはまるわけではないので、注意が必要です。
患者の感覚が必要な理由がもう一つあります。意思疎通が可能な場合、患者の感覚に合わせて治療することで、非常に効果的な治療が行えます。このような治療方法は副作用が少なく安全です。
私が治療家としての感覚レベルが低く、患者の感覚に配慮せず自己中心的な感覚で治療していた時は、治療後にだるさや脱力感、痛みなどが現れることが非常に多かったです。
これは、刺激の種類と量を適切にコントロールできていなかったためだと考えます。しかし、私自身の感覚が低くても、患者の感覚に合わせて刺激の種類と量を意識するようにしてからは、悪くなる反応が一気に減りました。
【患者の感覚が必要な理由】
1. 自分の体の状態を把握してもらうため
2. 安全な治療ができるため
では、患者のどの感覚に頼ればよいのでしょうか?
簡単に言えば、良いか悪いかだけです。
<良い感覚>
気持ちいい、好き、楽、軽い、心地良い、温かい、力が抜ける など
<悪い感覚>
痛い、気持ち悪い、だるい、重い、嫌い、違和感、しびれる、冷たい など
表現は人によって異なります。その人にとって感じている刺激が良い感覚であれば問題ありません。逆に、悪い感覚であれば、刺激が適切ではないことが多いです。
例えば、「なんだかピリピリする」と患者が表現した場合、どのように対応すればよいのでしょう。通常、ピリピリはしびれの表現として使われるため、悪い感覚と受け取られがちです。しかし、中には良い感覚として表現される人もいますので、表現だけで判断せず、しっかりと良いか悪いかを確認することが重要です。また、感覚レベルが低い人の場合、表現の仕方がわからないため、こちらから表現方法を提示することも大切です。
※注意※ 良い感覚と悪い感覚だけで全てを判断しないようにしてください。良い感覚だから治るはずだとか、悪い感覚だから治らないと決めつけるような考え方に陥らないようにしてください。ここで伝えているのは、あくまで一つの考え方であることを忘れないでください。
重要なのは、刺激後の反応を注意深く観察し、患者だけでなく治療家として、その反応が体にとって良いかどうかを判断してください。
例えば、刺激が痛い場合でも、その後の反応が驚くほど良ければ、その刺激は良いものだったかもしれません。良い感覚を頼りに刺激を加えるべきか、悪い感覚であっても刺激を加えるべきかを比較し、より良い反応が得られる方を選択してください。ただし、反応は即時的な場合もあれば、時間が経ってから現れる場合もありますので、直後だけの反応で判断せず、経過もしっかりと観察してください。
よくある例として、刺激中は痛いが即時の効果が抜群に良い場合でも、翌日に痛みやだるさが増すことがあります。その後、回復し改善が見られる場合は問題ありませんが、だるさが持続する場合は、刺激を変える方が良いでしょう。その場合、良い感覚となる刺激に変えると、即時の効果は痛い時ほど反応しませんが、翌日に悪化せずに徐々に改善の傾向が見られることがあります。刺激に対する反応を治療家として判断しながら、患者からの情報をしっかりと聞くことで、刺激を適切にコントロールし、回復を促すことができます。
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