CST概論⑨~治る運動方向~
運動方向については、症例を通して具体的にお伝えしましたが、もう少し一緒に考えたいと思います。
治る運動方向と書かせてもらったのは、運動方向を正しく判断し、刺激として加えることで、症例で紹介したように、体が治ろうと反応してくれた結果、症状が改善することがあるからです。これは、一概に治療家だけができることでなく、セルフケア(体操やストレッチなど)をする時に、自分自身で感じて方向を決めることでも、同様の反応を引き出すこともできます。
質問です。
・あなたは、どのようにして運動方向を見つけていますか?
・運動方向を見つけるという、意識を持っていますか?
・どの運動方向を選択すると体の改善や変化が見られるでしょうか?
・運動学や解剖学の知識だけで簡単に運動方向を決めていませんか?
運動方向を探す際には、治療家として、運動学と解剖学の知識は必須ですが、全ての人が同じように動くわけではありません。重要なのは、患者の体が必要とする動きをどれだけ引き出せるかということです。机上の知識だけで判断すると、逆に悪影響を与える場合もあります。患者の体から細かな反応を読み取り、適切な刺激を与えることが、治療において重要な要素です。
このような視点で運動方向を探す行為は、治療家として非常に重要な技術です。優れた治療家は、治る運動方向を見つける能力に優れています。そのためには、知識、技術、経験が不可欠です。すぐに習得できないことは仕方がありませんが、ただ待ってだけでは成長速度が遅すぎますし、目の前の患者は待ってくれません。経験がないから治せないという言い訳は、患者には通用しません。
治療家として患者の前に立てば、患者にとっては、1 年目でも 20 年目でも関係ありません。新人だから仕方ないと、待っている患者はいません。
もし、自分なら、どちらの治療家に治療してもらいたいですか?
① 新人療法士
② 20 年目の療法士
年数だけで判断すると、20 年目の治療家を選択するでしょう。
でも、それで本当に良いのでしょうか?
実際には、経験年数の有無ではなく、患者にとっては結果が全てです。もしも、経験年数が多い治療家の代わりに、新人が行って、結果的に治れば、患者は満足します。つまり、結果を出した新人に、患者はお金を支払うことになるでしょう。逆に、新人の代わりに先輩が治療し治った場合は、患者は今度から先輩を希望することになるでしょう。
私も、過去には技術や知識、対応の仕方などで、先輩と担当を変更したこともあります。患者にとっては、同じようにお金を支払うのであれば、より結果がでる方に払うのが当たり前です。厳しい世界ですが、それが治療家としての責任でもあります。
話が少し脱線しましたが、経験年数に関係なく、早く結果を出せるようになる方法の一つとして、CST の考え方が私は、大切だと思っています。
◇治る運動方向の見つけ方
1. 相手(患者)に聞くこと
自分が選んだ運動方向で、相手がどんな感覚を持つのかを聞きます。その感覚によって、運動方向が適切かどうか判断できます。良い表現の場合は、その方向で動かすことで改善の可能性が高く、悪い表現の場合は、悪化の可能性が高いです。
良い表現:楽、軽い、気持ちいい、心地よい、力が抜ける
悪い表現:しんどい、重い、痛い、違和感がある、不快な感じ
2. 8 方向(8 Direction)に動かしてみること軟部組織や関節などを動かす際に、8 方向の中で相手が良い感覚を示す方向に動かす。
※運動方向を探す上で特に重要なのは、感覚です。ただし、感覚といっても、正常範囲内の話です。必要なのは、相手(患者)が動かされたり触られたりした際の感覚です。また、治療家が触れたり動かしたりする際に感じる手の感覚も重要です。感覚が双方で高い場合、治療は容易になりますが、双方とも低い場合は困難になります。
◇感覚の磨き方
感覚を磨くには、実技練習をする事です。
えっ!それだけ? はい!それだけです。ただし、やり方があります。自分の体の感覚を高めるためには、治療側ではなく、患者側からして下さい。つまり、触られるという事です。多くの治療家が、治療技術を上げるために実技練習をしていますが、ほとんどが治療側の練習ばかり意識しています。もちろん、治療側の感覚を鍛える事も大切ですが、それと同時に治療される側の感覚を鍛える事もめちゃくちゃ大切です。だから、私は、後輩に勉強会にいったら講師の先生や補助講師の先生の治療を積極的に受けるよう勧めます。その時に、出来るだけ感覚を研ぎ澄ませて、感じる事が大切です。
自分の体にどんな刺激が入って、その刺激が自分にとってどういう影響を及ぼしているのかを感じる事で、自分の感覚レベルが上がります。実技練習で、患者側になった時に、治療されている感覚を出来るだけ、細かく相手に伝わるような表現で、フィードバックをするようにして下さい。さらに、触られている感覚が、良いか悪いかを意識してみて下さい。そして、患者側の感覚に合わせた治療と、治療側の感覚に合わせた治療とどちらが効果的なのかをしっかりと検証してください。
治療側も患者側もともに、どんな感覚なのかをしっかりと表現して、フィードバックし合う事で、治療家としての感覚レベルを効率的に上げる事が出来ます。是非とも実技練習するときは、意識してみて下さい。
◇体の声
感覚を磨くには、触られることも大切ですが、日常の中でも十分に磨くことができます。それは、体の声を聞くという作業をすることです。多くの方は、痛みや違和感など、マイナスの声には過敏に反応しますが、良い声にはあまり反応しようとしません。それは、体の優先順位が低いからです。
例えば頭痛が起きたら、すぐに頭痛薬を飲み、抑えようとします。これって、実は、体の警告信号を無視していることになるって知っていますか。痛みや違和感を体が信号として送っているということは、体のどこかに不具合が出ているので、ちょっと休憩してほしいという声なんです。ですが、ほとんどの人が、無理して、その声をなかったことにして、無視して動いてしまします。無視し続けた結果、病気になったり、ギックリ腰になったり、突然の痛みに襲われたりします。つまり、日常から体の声をゆっくりと聞いてあげる時間を作ってほしいということです。
はじめは、5分からでもいいです。頭の先から足の指先までゆっくりと、どんな感じがするのか感じる練習をしてください。それが難しかったら、体操やストレッチなどの運動をしている時に、良い感覚と悪い感覚を自分で感じて、良い感覚になるように刺激の種類を変えていってみてください。私たちは、日常生活を無意識に動いていますが、その無意識にフォーカスし、感じることに意識してみると、色んな発見があります。詳細については、また別の機会に説明したと思います。
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