CST概論⑧~刺激の組み合わせ方~
組み合わせについて説明する前に、色々と話させて頂きましたが、前述した内容が組み合わせの考え方においての基礎となります。
基礎を理解していなければ、応用することはできず、すぐに行き詰まることになります。しかし、基礎さえ押さえてしまえば、組み合わせの考え方は非常に簡単です。
やり方は簡単で、図形の問題のように、刺激と刺激を組み合わせればいいのです。刺激の種類は一つだけで十分な場合もありますし、複数の刺激を組み合わせた方が効果的な場合もあります。
どの刺激が最適かは、まず患者に尋ねることが最善の方法です。
もしも治療家としての感覚レベルが高い場合は、患者に尋ねずに自ら刺激を組み合わせて反応を観察し、判断することができるようになるでしょう。
私も早くそのレベルに到達したいです。
刺激の種類の選択も重要なポイントですが、同様に重要なのは刺激量の選択です。
刺激量には、「強度、速さ、時間、頻度、時期(タイミング)、範囲」などが考えられます。刺激の種類と量の組み合わせは、正直、無限に存在します。その中から、患者に適した刺激を選び出すことが、治療家としての腕の見せ所です。
刺激を上手く見つけることができる人は、まさに「ゴッドハンド」と呼ばれる人たちだと思います。上手く見つけるためには、治療家としての感覚レベルを高めると同時に、患者の感覚レベルに合わせた治療を多く経験することが重要です。ただ患者の数だけ経験を積むだけでは全く意味がありません。どれだけ刺激や感覚に意識を向けながら経験を積んでいくかが非常に重要です。
ここからは、症例を通して、どのように刺激を組み合わせれば良いかを説明していきたいと思います。ただし、説明する内容がどの患者にも効果があるとは限りませんので、その点を忘れないでください。
先述した通り、型にはめるような治療を押し付けることは避けて、目の前の患者に合わせて自身で刺激を組み合わせていってください。
これから説明するのは、治療としてどんな刺激を加えたかだけしか書いていません。病気や評価については書いておりませんので、ご了承ください。
《症例 1》 患者の感覚の部分は☆をつけて表しています
◇右肩挙上時に痛みがある患者。
右肩甲骨を動かす
→☆肩甲骨外転方向が気持ちよい
→軽度外転位からさらに動かして聞く
→☆挙上がよい
→外転、挙上からさらに運動方向を聞く
→☆下方回旋がよい
→これで運動方向がある程度決まったので、ここからは、各運動方向の範囲がどれくらいほしいかを動かしながら聞く
→☆外転は少し、挙上は大きく、下方回旋はちょっとで、肩甲骨を圧する力は、やや強めのままで、そのまま止めておいてほしいとの事でした
→気持ちよさが減ってきたら教えて下さいね
→☆なんだか背中があったかくなってきました
→☆体が軽くなってきました→ ☆気持ちよさが減ってきました
→ゆっくりと肩甲骨を戻していく
→☆戻す時に、スーっとしますね
→右肩痛消失
《解説》
◇刺激の種類
触る、伸ばす、縮める、圧迫、牽引、揺らす、捻る、温める、冷やす、動かす
《運動方向(8方向)、運動の種類(自動運動、他動運動、自動介助運動、抵抗運動)》
8方向:前後屈(屈曲・伸展)、側屈(内転、外転) 回旋(内旋、外旋)、牽引、圧迫、
《症例 1 の刺激の種類、量、反応》
刺激の種類 :触る、圧迫、温度、動かす(他動運動)、運動方向(肩甲骨外転、挙上、下方回旋)
影響する器官 :皮膚、筋膜、筋、関節、脳
刺激の量 :強さ、運動範囲、時間
刺激による反応
<見た目でわかる反応>
客観的 :肩の可動域が増大
<見た目でわからない反応>
客観的 :筋緊張の低下
主観的 :温かくなる、軽くなる、痛みの消失
患者の感覚を頼りに実施した内容で、このような刺激によって、症状が改善する事があります。
普段、行っている治療をこのように分析しながら考え直してみてはいかがでしょう。 すでに、実践されている方は、さらに細かく意識し、感覚をプラスして考えてみて下さい。刺激と感覚を組み合わせる事で、新たな発見があると思います。刺激を組み合わせていく場合、種類に対する組み合わせに意識が向きやすいですが、刺激量も同時に組み合わせる事で、バリエーションが増え、より細かく刺激を選択する事ができます。
《症例 2》
◇右腰に痛みがある患者
左側臥位が楽な姿勢だということなので、左側臥位になって頂く
→☆右股関節の屈曲と伸展をすると、伸展が気持ちよい(運動方向を決める)
→☆伸展は他動でやるよりも軽い抵抗運動がよりいい感じ(運動の種類を決める)
→☆股関節と膝関節が 0°ぐらいで止めている方が一番いい感じ(運動の範囲を決める)
→☆その際に、足部の底屈も同時にした方がよりよい(他の刺激を加えてみる)
→☆さらに、伸展していく時に股関節が軽度内旋、外転していった方がよい(さらに細かく運動方向を決める)
→☆抵抗は、軽めで、0°付近で保持してほしい感じ(刺激の強さと範囲を細かく決める)
→☆保持の時間は、約 5 秒程度でいい(刺激時間を決める)
→☆体全体が伸びて気持ちいい
→☆ポカポカしてきました
→その後、楽な姿勢にゆっくりと戻す
→☆腰の力が抜けました
→右腰の痛みが消失
《症例 2 の刺激の種類、量、反応》
刺激の種類 :触る、圧迫、温度、動かす(抵抗運動)、
運動方向(股関節伸展・内旋・外転、足部底屈)
影響する器官 :皮膚、筋膜、筋、関節、脳
刺激の量 :強さ(軽め)、運動範囲(股・膝関節伸展 0°)、時間(5 秒程度)
刺激による反応
<見た目でわかる反応>
客観的:股関節屈曲の角度が増大腰椎回旋の可動域が増大
<見た目でわからない反応>
客観的:筋緊張の低下
主観的:温かくなる、軽くなる、力が抜ける、痛みの消失
《解説》
症例2について、症例1よりも詳しく解説していきたいと思います。
まずは、姿勢の選択です。患者が最も楽な姿勢で治療を行うように心掛けましょう。痛みや不快を感じる姿勢では、患者は力を抜くことができず、緊張状態になってしまいます。
治療においては、これは非常に邪魔になる要素です。治療家の姿勢も考慮しながら、患者が快適な姿勢を優先しましょう。
次に、股関節を動かし、腰の評価をしながら、治療に活用できる運動方向を探します。症例2の場合は、股関節を屈曲すると腰痛が現れますが、伸展すると逆に気持ちよさを感じるという良い感覚がありました。そこで、股関節の伸展を治療の刺激として活用することにしました。運動方向はある程度決まったので、次に患者の感覚に合わせて運動の種類を選びます。
運動方向、運動範囲、抵抗の強さ、足の位置などを患者に尋ねながら、最も心地よく伸ばせる刺激を見つけましょう。そして、刺激の種類と量が決まれば、患者に気持ちよさを味わってもらい、気持ちよさが減れば、刺激をゆっくりと終了させます。刺激を終了する際は、急に離さないように注意しましょう。刺激の終了方法も、刺激として体に入力されていることを意識しましょう。離す方法も、人や刺激の種類によっては一気に離すべき場合もあるので、試行錯誤しながら適切な方法を見つけてください。
治療家は、直接刺激を加えることが多いため、運動方向の組み合わせはイメージしやすいかもしれません。症例1では、肩甲骨の運動方向を細かく組み合わせることで効果的な治療が行われました。肩甲骨の外転に加えて、挙上と下方回旋を組み合わせることで、患者にとって気持ちよい刺激となりました。
症例2では、股関節の伸展と内旋、さらに膝の伸展と足の底屈といった複合的な運動方向によって気持ちよさを引き出すことができました。患者によっては、骨盤や腰椎の動きを組み合わせることでさらに気持ちよさを引き出す場合もあります。必要な場合は単一の部位だけで十分なこともありますが、複数の部位を組み合わせることでより良い刺激が得られる場合もあります。複数の刺激がほしい場合、手が足りなく感じることもあります。その場合は、自身の体や物を上手に活用しながら、より良い刺激を見つけるようにしています。
運動方向の組み合わせを考えるだけでも、従来と異なる視点で治療を行うことができると思います。そこに別の刺激を加える必要があるかどうかは、患者の感覚に合わせながら、治療家として判断していければいいと思います。
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