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やりたいことが見つからない人へ。やりたいことの見つけ方が教えてくれたこと

── 自己分析を繰り返しても、堂々巡りだった男の話 焚き火のそばで読む、1冊の話 ── 『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』(八木仁平著)より

■ 「やりたいことが、わからない」

直樹は32歳。会社員。

「やりたいこと、何かないの?」

そう聞かれるたびに、言葉に詰まる。

今の仕事が、嫌いなわけじゃない。でも、これが本当にやりたいことかと聞かれると、わからない。

このまま、定年まで続けていいのか。

もっと、自分に合った何かが、どこかにあるんじゃないか。

そんなモヤモヤを、もう何年も抱えている。

「好きなことを仕事にしよう」と、よく言われる。

でも、その「好きなこと」が、自分にはわからない。

趣味はある。でも、それを仕事にしたいかというと、違う気がする。

自己分析の本も、何冊か読んだ。診断ツールも、いくつも試した。

でも、いつも同じだった。

やった直後は「なるほど」と思う。でも、しばらくすると、また元のモヤモヤに戻っている。

何度、自分を掘り下げても、堂々巡り。

「結局、自分には、やりたいことなんて、ないのかもしれない」

そう思うと、少し、怖くなった。

11月。一人でキャンプ場に来た。頭を、空っぽにしたかった。

■ 「火種だけで、火をつけようとしていないか」

直樹は、火を起こそうとしていた。

でも、火種に火をつけても、すぐに消えてしまう。何度やっても、続かない。

管理棟から老人が出てきた。直樹の手元を見て、隣にしゃがんだ。

「火種だけで、火をつけようとしていないか」

「え?」

「火種はある。でも、薪がない。それに、空気の通り道もできていない。」

老人は、火種の上に、細い薪を組んだ。そして、薪と薪の間に、空気が通るすき間を作った。

火種に火をつけると、今度は、薪に燃え移り、火が大きくなった。

「火は、一つじゃ、つかない。火種と、薪と、空気。三つが揃って、初めて燃える。」

直樹は、その火を見ていた。

なぜか、自分の「やりたいこと探し」のことを、考えていた。

■ やりたいことには、見つけ方がある

「実は、悩んでいることがあって」と直樹は言った。

「やりたいことが、見つからないんです。自己分析を、何度やっても、堂々巡りで」

老人は、しばらく焚き火を見た。

「やりたいことは、探すものだと思っているか。」

「違うんですか? どこかに、自分にぴったりの何かが、あるんじゃ」

「ある本に、こう書いてある。やりたいことは、どこかに落ちているものじゃない。見つけ方の、公式がある、と。」

「公式?」

「そうだ。やりたいことが見つからないのは、才能がないからじゃない。見つけ方を、知らないだけだ。」

直樹は、意外だった。やりたいことは、運命的に「出会う」ものだと思っていた。

「その公式は、こうだ。やりたいこと、イコール、好きなこと、かける、得意なこと。」

「好きなこと、かける、得意なこと……」

「お前さんは、好きなことだけで、やりたいことを見つけようとしていた。火種だけで、火をつけようとしていたのと、同じだ。」

■ 「好き」と「得意」は、違う

「好きなことと、得意なことは、違うんですか」

「全然、違う。」

老人は、続けた。

「好きなことは、興味があること。もっと知りたい、と感じること。」

「得意なことは、自然と、うまくできてしまうこと。やっていて、苦じゃないこと。」

「この二つは、別々のものだ。でも、多くの人は、ごっちゃにしている。」

直樹は、考えた。

確かに、自分は「好きなこと」ばかり探していた。「何が好きか」と。でも、「何が得意か」「何が自然とできてしまうか」は、考えたことがなかった。

「得意なことは、自分では、気づきにくい。当たり前にできるから、才能だと思わないんだ。」

「人から『よく、それできるね』と言われること。苦もなく、やってしまうこと。それが、お前さんの得意なことだ。」

直樹は、はっとした。

職場で、よく「直樹は、人の話を聞くのが上手いね」と言われる。

自分では、当たり前のことだった。でも、それは、得意なことだったのかもしれない。

■ 三つ目の薪、「大事なこと」

「でも、それだけじゃ、足りない」と老人は言った。

「好きと得意で、やりたいことは見つかる。でも、本当にやりたいことには、もう一つ要る。」

「もう一つ?」

「大事なこと。お前さんが、何を大切にして生きたいか。その価値観だ。」

老人は、焚き火を見た。

「好きなことは、火種。得意なことは、薪。でも、それだけじゃ、どっちの方向に燃やすかが、決まらない。」

「大事なことは、その火を、何のために燃やすか、という方向だ。」

「どれだけ好きで、得意なことをやっていても、大事なこととズレていたら、満たされない。」

直樹は、考えた。

自分は、何を大切にしたいんだろう。

お金か。安定か。それとも——誰かの役に立っている、という実感か。

考えてみると、自分が一番うれしいのは、誰かに「ありがとう」と言われたときだった。

人の話を聞いて、その人が楽になったとき。それが、自分の「大事なこと」かもしれなかった。

「好きなこと、得意なこと、大事なこと。三つが揃って、初めて、本当にやりたいことが燃え上がる。」

「火種と、薪と、空気と、同じだ。」

炎が、静かに、力強く燃えていた。三つが、揃った火が。

■ 翌朝、直樹は三つを書き出した

朝。霜が降りていた。

直樹は、手帳を開いた。三つの欄を作った。

「好きなこと」「得意なこと」「大事なこと」。

好きなこと。人の成長や、心の動きに、興味がある。

得意なこと。人の話を、じっくり聞くこと。

大事なこと。誰かの役に立っている、という実感。

三つを、並べて見た。

すると、ぼんやりと、何かが浮かんできた。

「人の話を聞いて、その人が前に進むのを、手伝う仕事」。

それが、自分の「やりたいこと」の、輪郭だった。

まだ、はっきりとはしない。でも、これまでの堂々巡りとは、違った。

火種だけを、探していたときとは、違った。

三つの薪が、組み合わさって、初めて、火がついた感じがした。

これから、この輪郭を、少しずつ、確かめていけばいい。

直樹は、そう思った。

管理棟から老人が出てきた。薪を運んでいた。

「帰るか」

「はい。火の組み方、勉強になりました」

老人は少し笑って、今日の焚き火の準備を始めた。

火種と、薪と、空気の通り道。三つを、丁寧に組んでいた。

一つでは、火はつかないと、知っているように。

■ この物語のタネ本

📕 『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方 人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド』 著:八木仁平(KADOKAWA)
https://amzn.to/4erv7zW

「やりたいことがわからない」という悩みを、感覚ではなく「公式」で解決する自己理解メソッドの本。

著者自身が、やりたいことが見つからずに苦しんだ経験から、誰でも実践できる方法として体系化した。シリーズ累計100万部を超えるベストセラーになっている。

「自分探し」をいつまでも続けてしまう人に、その終わらせ方を教えてくれる一冊だ。

この本の要点を3つだけ:

① やりたいことは「探す」のではなく「公式で見つける」。

やりたいことが見つからないのは、才能や運がないからではない。見つけ方を知らないだけだ。

「好きなこと×得意なこと×大事なこと=本当にやりたいこと」。この公式に沿って自分を整理すれば、やりたいことの輪郭が見えてくる。

② 「好きなこと」と「得意なこと」は違う。

好きなことは、興味があり、もっと知りたいと感じる分野。得意なことは、自然とうまくできてしまうこと。

この二つは別物だ。特に得意なことは、自分では当たり前すぎて気づきにくい。人から「よくそれできるね」と言われることの中にある。

③ 「大事なこと(価値観)」が、方向を決める。

好きと得意だけでは、何のためにやるのかが定まらない。自分が何を大切にして生きたいか——その価値観が、やりたいことの方向を決める。

どれだけ好きで得意なことをしていても、価値観とズレていれば満たされない。

もっと深く知りたい方へ:本書で重要なのは、3つを見つける「順番」だ。著者は、まず「大事なこと(価値観)」から決めることを勧めている。

価値観は、いわば目的地だ。目的地が決まっていないのに、行き方は決められない。何のために働くのか、どう生きたいのかが先にあって、初めて、好きや得意が意味を持つ。

やりたいこと探しに疲れた人ほど、「好きなこと」から探そうとして、迷子になる。でも本当の出発点は、「自分は何を大切にしたいか」という問いなのだ。この物語に興味を持った方は、ぜひ原著を手に取ってみてください。

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📝 この記事は、書籍の内容を著者独自の物語と実体験を交えて再構成したものです。書籍の詳細な内容は、ぜひ原著をお手に取りご確認ください。

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