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HSPの父親である私が、仕事で消耗しない考え方を家庭でも使っている話

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観覧席で、本気で笑った。

「お父さん、クロール50m、7秒も速くなったよ!」

娘がプールから上がってきて、真っ先に私のところへ走ってきた。濡れた髪のまま、満面の笑みで。

観覧席から見ていた私には、タイムが上がっているのはわかっていた。でもその数字より、娘の顔が全部を語っていた。

「よく頑張ったな。本当にすごいよ」

自分のことのように、一緒に笑った。

娘は大会にも授業参観にも、いつも「お父さんもお母さんも来てほしい」と言う。自分の頑張りを、ちゃんと見ていてほしいのだ。その気持ちが、娘の次の頑張りにつながっている。だから私は全力でそれに応える。

これは、アドラー心理学に反する行動だ。

でも私は、それでいいと思っている。


私はHSPで、家庭でも消耗しやすい

作業療法士として16年、特養という現場で働いてきた。利用者さんとの1対1の時間は、不思議と疲れない。相手の小さな変化に気づけること、言葉の奥にある感情を感じ取れること、それがそのまま強みになる。

でも家に帰っても、HSPは終わらない。

妻のイライラが空気に乗って伝わってくる。娘の理不尽なぐずりが、自分の神経を直撃する。家族が機嫌が悪いだけで、「自分のせいかも」「なんとかしなきゃ」という感情の共鳴が、反射的に始まる。

職場で消耗して、家に帰っても消耗する。

これがHSPの父親の、正直な現実だ。

だからこそ私は、仕事で身につけてきた「消耗しない技術」を、意図的に家庭でも使うようになった。完璧な父親でも、完璧な夫でもない。ただ、長く穏やかにそばにいるために。


①課題の分離+戦略的撤退

妻がイライラしている。娘が理不尽にぐずっている。

そういう瞬間、HSPの脳は「自分のせいかも」「早くなんとかしなきゃ」という方向に一気に走り出す。感情の共鳴が起きる。相手の不機嫌を、自分のことのように受け取ってしまう。

でもここで一度、心の中でストップをかける。

「妻がイライラしているのは、妻の課題だ」 「娘がぐずっているのは、娘の課題だ」

アドラー心理学で言う「課題の分離」を、家庭の中でも使う。

これは冷たさじゃない。相手を突き放すことでもない。ただ、相手の感情を全部自分が背負い込まないための、心の境界線だ。

そしてもう一つ。心の境界線だけでは追いつかない時は、物理的に距離を置く。

「ちょっとトイレ行ってくるね」

それだけ言って、個室に入る。1〜2分、静かな空間で深呼吸する。これだけで、神経系がリセットされる。職場でも使っているあの感覚と、まったく同じだ。

戦略的撤退。

逃げているわけじゃない。自分を守るために、意図的に動いているだけだ。そしてリセットして戻ってきた自分の方が、ずっと穏やかに家族に向き合える。消耗したまま無理に寄り添うより、一度離れてから戻る方が、結果的に家族全員が楽になる。


②言葉のトーンコントロール=自分のための環境づくり

HSPは、自分が言われていなくても消耗する。

家の中でネガティブな言葉が飛び交うだけで、空気に当てられる。トゲのある言い方、否定的な言葉、感情的な声。それが自分に向けられていなくても、神経が拾ってしまう。

だから私は家庭の中での「言葉のトーン」を、意識的にコントロールするようにしてきた。

娘に対して「ダメ」「やめて」という言葉を使わない。なぜそれをしてほしくないのかを、娘が理解できる言葉で伝える。ポジティブな言い換えを探す。否定より提案を優先する。

これは娘のためだ。でも同時に、自分のためでもある。

家の中の言葉が穏やかであること。それは娘への教育ルールであると同時に、HSPの自分が家の中で心地よく呼吸するための環境づくりだ。消耗しないための、静かな工夫だ。

娘は今、「無理」という言葉を絶対に使わなくなった。4〜5歳の頃、保育園で流行った「無理」という言葉を家でも連発していた時期があった。「無理って言うと成長しにくくなるよ」と伝えて、一緒に言い換えを考えた。「難しいね」「もう少しやってみようか」という言葉に変えていった。

言葉の習慣が、思考の癖を作る。作業療法士として「言語は行動に影響する」ことを知っているからこそ、言葉の選び方には特に気をつけてきた。

そしてその環境が、私自身を守ってくれている。


③あえてのアドラー無視

私はアドラー心理学が好きだ。13年間、実践してきた。課題の分離も、目的論も、共同体感覚も、自分の人生の軸になっている。

でも一つだけ、家庭ではバカ真面目に守るのをやめたことがある。

「褒めてはいけない(評価してはいけない)」という教えだ。

アドラーは承認欲求を否定し、褒めることは相手を評価し序列を作る行為だと言う。確かにその通りの部分もある。でも私には、この教えを娘に対してそのまま当てはめることへの違和感が、ずっとあった。

冒頭のエピソードに戻る。

娘がスイミングで50mクロールのタイムを7秒更新した。観覧席から見ていた私は、速くなっているのを感じていた。そしてプールから上がってきた娘が、真っ先に「お父さん、7秒速くなったよ!」と笑顔で伝えてきた。

そのとき私はアドラーの教えを横に置いた。

「よく頑張ったな。本当にすごいよ」

本気で、一緒に笑った。

HSPで自己肯定感が低かった自分が、作業療法士としての仕事の中で「認められる喜び」に何度も救われてきた。先輩に「お前はちゃんとやれてるよ」と言われた瞬間の、あの感覚。誰かに「ありがとう」と言われた瞬間の、あの感覚。それが自分を前に進ませてくれた。

だから娘の承認欲求を、全力で満たしてやりたい。

娘が大会にも授業参観にも「見に来てほしい」と言うのは、自分の頑張りを認めてほしいからだ。その気持ちを頭ごなしに無視することは、私にはできない。それが娘の次の頑張りにつながっているのだから。

これはHSPの親だからこその、あえての「アドラー無視」だ。

全部を守る必要はない。自分の実感と照らし合わせて、取捨選択していい。アドラーも道具の一つだ。


④別室で寝る、という選択

アドラーは「過去のトラウマは存在しない」と言い切る。すべては今の目的が行動を作っている、という目的論だ。

でも私には、そのまま受け入れられない部分がある。

社会人1年目、毎晩23時まで罵倒され続けた経験は、私の身体と神経に深く刻み込まれた。「他者の気配=警戒すべき状況」という回路が、自律神経レベルで残っている。これは意志の問題ではなく、HSPの神経系が他者の気配に過敏に反応してしまうという、身体的な事実だ。

だから私は今でも、一人で眠る。

家族がいる。でも別室だ。誰かと同じ空間で寝ると、脳が完全にオフにならない。他者の寝息、寝返りの気配、微妙な温度変化。それを感知し続けながら、脳はずっと低レベルの緊張状態にある。

「家族なんだから一緒に寝るべき」という常識に、付き合わないことにした。

これはアドラーの目的論より、作業療法士としての身体の知識と、HSPとしての自分の実感を優先した結果だ。別室で眠ることで、私はよく眠れる。翌朝、妻に穏やかに接することができる。娘と笑って朝ごはんを食べられる。

自分を守ることが、家族を守ることにつながっている。


⑤瞬間プロセスレコード

作業療法の世界に「プロセスレコード」という技法がある。利用者さんとのやり取りを細かく記録し、自分がどう受け取り、どう反応したかを振り返るものだ。

私は家庭の中で、これを瞬時にやるようにしている。

感情的になりそうな瞬間、思ったことをそのまま口に出す前に、頭の中で一瞬だけプロセスレコードを走らせる。

「これを言ったら、相手はどう感じるか」 「この言葉の先に、何が起きるか」

数秒だけ、予測する。相手が落ち込む。喧嘩になる。そういう結末が見えたなら、その言葉は使わない。別の伝え方を探す。

気づいたらこれがアンガーマネジメントになっていた。数秒の間を作ることで、感情のまま動くことが減った。

完璧にはできない。イライラすることもある。でも「言う前に一瞬止まる」という習慣が、家庭の中の空気を穏やかに保つ。それが結局、HSPの自分が家の中で消耗しないことにもつながっている。


⑥夜の一人時間を死守する

これは仕事でも家庭でも変わらない、最も基本的なルールだ。

娘が寝た後、私の時間が始まる。noteを書いたり、ゲームをしたり、ただぼーっとしたり。生産性なんて関係ない。ただ一人でいる時間。

HSPにとって、一人の時間は贅沢ではない。生きていくための必需品だ。

仕事で、職場の空気を拾い続けて。家庭でも、家族の感情に寄り添って。そのどちらでも神経を使い続ける私には、完全に外からの刺激が遮断された時間が必要だ。

その時間があるから、翌日また動ける。

完璧な父親でいようとしなくていい。毎晩子どもと一緒にいなくていい。娘が寝た後の静かな時間に、自分を充電する。それが、明日また娘の笑顔に本気で向き合うための準備になっている。


完璧じゃないからこそ、長く穏やかにいられる

正直に言う。

私は完璧な父親でも、完璧な夫でもない。

トイレに逃げることもある。一人で眠ることもある。アドラーの教えを都合よく無視することもある。夜は一人の時間を優先して、家族より自分のことを考えている時間もある。

でも16年間、OTとして現場で見てきたことがある。

無理をして走り続けた人が、ある日突然折れる。逆に、こまめに力を抜きながら動いている人が、最後まで穏やかに誰かのそばにいられる。

家庭も同じだと思っている。

常に全力で向き合おうとすると、どこかで限界が来る。そうなる前に、意図的に力をセーブする。課題の分離で心の境界線を引く。戦略的撤退で物理的に距離を置く。言葉のトーンを整えて、自分が呼吸しやすい環境を作る。夜の一人時間で、静かに充電する。

それが私なりの、「やさしいままで消耗しない家庭での生き方」だ。

HSPであることは、家庭において弱さじゃない。ただ、自分の扱い方を知っている必要がある。

完璧な親じゃなくていい。

長く穏やかにそばにいることの方が、ずっと大事だから。


作業療法士16年目|特養・ユニットケア勤務|元認知症ケア指導管理士|HSP・ISFJ


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