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妄想日報 5月20日「流鏑馬」

8:47出勤。
うちの部長は、やたらと野球のたとえが多い。たしかに「アウト」「エラー」に「滑り込みセーフ」や「代打」。とかく世の中には野球のたとえが多いが、それにしてもやや過剰。
その部長に、二年目のムロさんが叱られている。
「だーからあ!あなたの仕事は、変化球ばっか使ってんじゃない⁈ここはストレート。バシッと真ん中。顧客へのアフターフォローで外角高めの球投げてどうすんのよ?」
一言もないムロさん。そこへ、気の毒なことに頼朝課長まで加わってきて
「ボクも思う。あなたの仕事って、ちょっと厳しい言い方すると、馬場に来て、烏帽子は着用するけど水干と直垂はナシで馬にまたがってる。それと一緒なの」
「え?何のたとえ?」と思うそばから
「出た!ミナモト課長の流鏑馬(やぶさめ)のたとえ!」
とナオさんが小声で教えてくる。
ムロさんが何か言い訳すると課長は
「だーからあ!それは『犬追物(いぬおうもの)』の話じゃない⁈いまあなたがやってんのは『流鏑馬』でしょう?顧客対応ってのは『流鏑馬』であって、『笠懸(かさがけ)』とか『犬追物』じゃないんだからさ。
そもそも『鏑矢(かぶらや)』の段取りが悪い!『弓手(ゆんで)』は急ぎすぎ!『馬手(めて)』は遅すぎる!なんべん『二の矢』でシナジー外したら気が済むのよ?」
そのまま、部長と課長は、互いの流儀で寄ってたかってさんざんお説教したのち
「ま、でも、やる気はあるんだから、ここからまた新たに『プレイボール!』ってな気持ちでさ」
「そうそう。ここから新たに『流鏑馬はじめませー!』ってな気持ちでね」
とその場を収めた。
ムロさんはこちらに戻ってくると、たいして懲りた様子もなく
「いやあ、二種の競技で叱られちゃいましたわー」と言って缶コーヒーを買いに行った。
ナオさんがやや呆れ顔で
「あれもっと色んな競技で叱られたほうがいいかもね。『蹴鞠(けまり)』とか『投扇(とうせん)』とか」と言った。

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