妄想日報 5月21日「桜の樹の下には」
8:48出勤。
昼休み、次長はナオさんとお墓の話。次長のご両親が、田舎のご本家の「墓じまい」を検討されているそう。
「もう両親もわたしも、なかなかアッチ戻らないし。永代供養にしちゃおうかなとか。わたしはもう自分のお墓はなんでもいいんだよね」
「そうですよね。わたしもそう。都立霊園とか倍率が30倍くらいなんて言ってましたよ。わたしロッカーでいい」とナオさん。
「えー。わたしロッカーはイヤかなあ。樹木葬?」「でもあれも倍率高いですよ」「そうだよね。しかも、あれ他の家のお墓とまちがえそうよね?」「ソレあるあるじゃないですか。お墓参りでたまにやる面白いやつ!」
するとちょうど通りかかった坂口課長が
「そうそう。あるある。アレ間違えるんだよな!」
「安吾さん、まちがえそうだわ。またあなたおっちょこちょいだもんね」と次長。
「いやワタシじゃなくて他のひとがね。
『桜の樹の下には屍体が埋まっている』ってあるでしょ?みんな、あれワタシだと思ってんだよ。でもあれって本当は梶井基次郎なんだよね。
ワタシのは『桜の森の満開の下』なの。まあ、まぎらわしいからね」
「え?うん。つまり、おっしゃりたいのは?」とロクに要領を得られず、次長が尋ねる。
「だから、いまのハヤリか知らんけど、桜の樹の下をお墓にしたいって言われてもワタシは知らないってこと。梶井のやつが霊園と組んでナンボもらってるか知らんけど、コッチにゃ一銭も入ってこないのヨ。
でもワタシにお願いしてくる人いるんだよね。あ『桜の樹の下に屍体が』の人ですよね?って。だーからちーがうんだって!参っちゃうよネ。そういう面白い話だろ?」
まるきり分からず、みんなイノチガケの薄ら笑いでごまかした。
