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妄想日報 7月22日「かぶき者」

8:47出勤。
新卒のアヤさんの最近は、なにやらせっせと『恋活』中。マッチングアプリで肩ぶん回し、登録後タチマチ数名の男性と初めての顔合わせに至ったとか。それでも
「なあんかヘンな人ばっかりなんですよ。一人目はマア私服が超ダサイ!でも、自分はファッションでは勝負してない。それは自分に自信があるからだ、なんて。反対にオシャレしてるやつにはコンプレックスがあるんだ、って勝手な持論。
『だから、ソレを金で解決しようと思ってブランドもんばっか着るんだよ。それで勘違いな自信つけて威張るもんだから、オシャレなやつはだいたい横柄でしょ?』とか、チクビ透けてるキモイTシャツでイッチョマエなことぬかすんですよ!それよかオメーずっと乳首スケてっからな!って」
しかも、驚いたことに、その後に会った男性がまた一転して笑えるくらいブランドもののロゴ満載のイデタチだったそう。
「そしたらソノ人、もう絵に描いたように店員さんとかに横柄!それで『ああ、服?…あ、マア…好きかな』とかシラこいた顔して。
そのくせ『マ、よくオシャレとは言われっケドね』とか『ソモソモ服ダセーやつとは一緒にいたくないじゃん。身につけてる服で人間ワカルってかさあ』とか言ってくるんですよ!
もうシマイに笑えてきて。最初の男がフリで、次のバカがオトして来てんじゃん!って」
手を叩いて笑いながら聞いていたユミさんが
「それ、たしかにどっちもヒドイね!後のほうのブランド馬鹿は、周りの人に『どうせオシャレですねーって言っときゃコイツ機嫌良くなるから』って思われてるだけでしょ?
ブランドもの着りゃあオシャレになれるってわけじゃないもんね。
最初の男のほうは、そのニセモノにビビって『どうせオシャレなやつらはぁ…』とか言ってるわけだから、むしろアンタがコンプレックスのカタマリ!」と、イジワルな傾斜をつけた口角をあげながらバッサリ。
オフィスでは、ベーシックカラーを主体にした清潔感のある着こなしのユミさん。だが、休日風景のお写真では、鮮やかな配色に個性的なデザインや小物を上手に使用した巧みな着こなし。よく分からないが、サダメシお洒落。だとは思うので、そこには本人のコダワリもヒトカタならずありそげ。
「うんうん、お嬢さん、そうよ!お洒落ってのはサ、やっぱりカジュアルとエレガンスとのバランス。TPOに合わせた上でのちょっとした『コナレ』『ヌケ』、これなんだよナ!」
と、そこへ大上段の構えでご参入されたのは総務でもなかなかの「クセツヨ」と評判の大鳥部長。「かぶき者のいっぺいちゃん」とネタにされ、アチコチで「絡みづらい」と囁かれるソノ御仁は
「ワッチはサア、過去に『旗本奴(はたもとやっこ)』ってののハシリをやらしてもらってたんだけど、コイツがもうお洒落もお洒落!
ビジネススーツの上から、レディースの着物をマントみたいに肩掛けして商談に出かけたり。スラックスの裾上げでトラやイノシシのケモノの生皮をツギハギしたり、ときにはソイツをワンポイントのアップリケにしたり。
わんざくれ、ボウボウ長あごヒゲに、うんと剃り上げ大ヒタイ、喫煙所じゃシーシャみたいな大キセルも燻らすべい、っテネ!」
皆がそのエキセントリックな言葉づかいと、あまりの話の整合性のなさに「え?『TPO』は?『コナレ』は?『ヌケ』は?」という非常に心細い顔をする。大鳥部長はお構いなく
「それに、お洒落は日頃のフルマイでもあるからサ。かぶいてるダチと連れ立って、飲食店のお勘定を踏み倒したり、辻々でケンカふっかけパリピなアゲアゲ乱暴狼藉。
目星つけた家の前に空き缶置いて仲間に合図、後刻チームで押し入って、タコ殴りにして有り金ぜんぶ吐き出させたりってサア。コレひと口で言やあ、秩序への反逆の美学だったんだよね。反骨ってのは、ナニヨリお洒落の真髄、真骨頂だから」
満々にドン引きした皆の「コイツ、今じゃ完全に『トクリュウ』じゃん…」という顔を残して大鳥部長は去っていった。
去り際に「かぶくのって本当に楽しい!」という『キャンメイク・トーキョー』みたいな大鳥部長の無邪気なフレーズが聞こえた。「オシャレって…」とユミさんが頭を抱えた。

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