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妄想日報 6月25日「征韓論」

8:48出勤。
始業後すぐ、もう話したくてたまらないといった顔のユミさんから昨晩のご自宅でのおハナシ。いつも仲睦まじい旦那さんから、改まってのご相談を受けたのだそうで。
「それがね、くらーい顔して『ユミ…オレたぶん鬱だ。完全にうつ病』なんて言うんだよ。いや、もうぜんぜん、ぜんぜん!見てて、まあったくソンナンじゃないから!
だから、わたし言ったんだよ『あのね、アナタは鬱じゃなくて人格障害。
だって、鬱の人は【自責】思考で苦しむの。きほんアナタは【他責】だから大丈夫!』って」
仕事に没頭していたはずの皆も一緒になって「ユミちゃんすご!」「アナタは『他責』だから大丈夫⁈」「ある種、愛がある!」と笑いながら喝采する。
そのとき、所用でウチの部へやってきた総務の大久保部長。こちらの話を聞きつけると
「『自責』と『他責』、内憂と外患、コレじつに難しい問題だからね」
と、ひとかたならぬご興味をお示しの様子。部内で気難し屋と評判のそのトシミチ部長。じつは皆がモウ大好物でウワサする頭頂部のハゲがあり、それをムリクリ持ってきたご自身のサイドの髪でもって、片手でウンショウンショと押さえつけながら
「西郷のヤツはさ、武力で朝鮮を開国させるんだ!征韓論だ!ってコウ言うんだよ。日本の近代化がなされないのは諸外国のせいだって。これアナタたちの言う『他責』だよね。
でも、アノときの私はね、日本の近代化がならんのは国内整備がなっておらんからだ、欧米を歴訪してソウ思ったんだ。マアこれ『自責』ってことになるのかな。
西郷たち征韓論の連中は、ツイには国の形を責めることであんなコトになってしまったけれどもね…。『他責』も『自責』も、本当はアンバイなんだよな。
ドチラカ一方だとそれぞれ壊れてしまう。アジア主義から帝国主義への転換にも歴史的な文脈があるように、そのときどきの状態が何より肝要だからね」
しごく大人な意見と、大きな余韻を残して歩き去った大久保部長。
その数時間後のお茶休憩のさい
「ちょっとお!私んだけはさ、私の棚に置いてある『ブレンディ』のルイボスティー・オレでお願いしてんのよ!ねええ!こんなカフェインどっさりのコーヒー出されたりするから、私の髪がなくなっちゃうんじゃないの⁈ほらコレえ、あなたのせいじゃないのぉ⁈」
先ほど聞いた覚えのある、誰かへの叱責めいた大きな声がコチラにまで届いた。
めいめい「『自責』と『他責』のアンバイって難しいんだなあ」という顔になり、そろって聞こえないフリをした。

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