妄想日報 7月3日「ピンクソルト」
8:46出勤。
当社の裏の通用口のある道はモウ長いこと工事中。ユミさんによると、そこで慣れない運送業者のかたがマゴついていらしたそう。
「ヤマトさん?いつもの人じゃなく?あー。だったら分かりづらいよね」とナオさん。
お声かけしたらしいユミさんが「そうそう。でもその人もうすっごいイケメン!塩ガオっていうの?わたし好きなのよ。あの塩ガオに、たまにシオ〜っていう対応されたい」「コラ!あなた!もう塩分とりすぎ」
と、またもごきげんな二人。そこに耳ざとく
「アソコの工事だしょ?あれ、いつまでチンタラやってんだかなあ」と招かれざるウチの部長の登場。そればかりか「むかしね、わたし塩ガオってよく言われてたのよ。少年隊のヒガシみたいって」と真偽の怪しい、とんだ「デカメロン伝説」をかましてくる。
そんな折たまたま通りかかったのはエキゾチックな趣きのある秘書課のピンクソルトさん。部長が見るからにデレデレしながらお声を掛け、そのお姿からお召し物からアレヤコレヤを誉めそやす。
「いやあー、何よりコウ美しい女性の凛々しく毅然とした佇まい?モー見るからにナトリウム含有量が多いんだろうなーというご様子?それに、わたしモウめっぽう弱いんですよー」
ピンクソルトさんは、そんなオベンチャラもう言われ慣れているという涼やかなご表情で
「そうデスカ。でも、私みたいなヒマラヤ生まれの岩塩からすると、日本の女性のミネラルバランスって素敵ですよ。皆さんもっぱら海塩でいらっしゃるから。ナトリウムに偏りすぎずマグネシウム、カリウム、カルシウムも豊富。身体にもいいし、なにより発酵の促進にもモッテコイでいらっしゃるでショ?」
「いや、嬉しい!照れますナー!」と勝手に舞い上がってしまい、どうにもトンチンカンな部長「発酵といえば、お陰様で、日本では2011年に塩麹の伝統も再発見されまして。塩麹は素材にまろやかな風味を加え、減塩効果ももたらします。日本の女性はその美点を生かし、尖った塩からますます穏やかで控えめな塩麹になってもらわねばなりませんね。うははは!」
先ほどから、それこそニガニガしそうに部長の発話を聞いていたユミさん。突然ここで
「ピンクソルトさん、部長みたいな男性ってどう思われますか?昔は塩ガオなんてチヤホヤされていたくらいだから、深くお付き合いしたらきっと魅力的なんだと思いますヨ!」
と、とんでもない確信犯派の急進的爆弾闘争を仕掛けてきた。
ピンクソルトさんはそのダイナマイトを
「いえ。ナシです。部長さんはナシですネ」
とあっさりヒラリかわして避難した。
かたや、もろに被弾して大やけどを全身に負った部長は
「たく、タカピーな女だよ!わたしだって本気でアンタに興味なんかなかったよ。勝手にフッてきてさあ。あー気分わるい!ヤーな女!」と一日中イライラしていた。
「ウチのあの塩ガオさん、穏やかで控えめな味になるまで、まだまだ『コウジ』中だね!」
とナオさんがうまいこと言うと深く深くお辞儀した。
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