和菓子|フリーランス和菓子職人|《和の菓さんのう》の12ヶ月の和菓子【2025年】
こんにちは、年間100個以上の和菓子を食べるきりこです。
店舗を持たないフリーランスの和菓子職人《和の菓さんのう》さんの季節の上生菓子セット、2025年は毎月購入することができました💕
SNS で若い世代や世界に和菓子を発信しているフリーランスの和菓子職人《和の菓さんのう》さんの上生菓子。毎月、今月はどんな和菓子だろうとワクワクしながら購入しています。
今年は販売日に伺ったところ、三納さんの記事が目には入りました。


雑誌の掲載かと思えば、なんと!中学家庭科の教科書に採用されたとのこと。これは嬉しいですね。「教育図書」の教科書を通して三納さんの和菓子への思いが学べるのは素敵なことです。
子どもに記事を見せたら、食べたことがある和菓子だ💕と喜んでいました。
…ということで今回は、12ヶ月分の《和の菓さんのう》2025年バージョンをお見せしたいと思います。
購入するときの参考にしてみてくださいね。
1月のベスト『干支菓 乙巳』練りきり製 栗きんとん&小豆こし餡

左上から時計回りに
▪︎『花水仙』練りきり製 小豆つぶ餡
▪︎『御題菓 夢手毬』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『干支菓 乙巳』練りきり製 栗きんとん&小豆こし餡
▪︎『雪間草』ういろう製 小豆こし餡
▪︎『福寿草』黒糖きんとん製 道明寺芯
▪︎『雪うさぎ』羽二重餅製 小豆つぶ餡
1箱6個入り 3,200円(税込)
新年は、干支をモチーフとした和菓子がたくさん出回ります。蛇そのものを可愛らしく象ったもの、蛇や「巳」の焼き印を押したもの…etc.
趣向が凝らされた干支菓は眺めるだけでも高揚するものです。
そこで、1月のベストは白蛇を思わす清らかな練りきりに鱗模様をあしらい紅を差した『干支菓 乙巳』としました。

この紅、手書きかと思えば小さな木型で押し印をしているのだとか。十二年に一度の「干支菓」のためだけに用意された和菓子道具なんですね。
紅はほんの少しなのですが、あるとないとでは大違い。生き生きとした表情に足らしめているのは紅のアクセントがあるからなんでしょう、きっと。

【原材料名】砂糖(国内製造)、白餡、栗、小豆(北海道産)、やまいも、餅粉/食用色素(赤3号、赤106号)、金箔
中は小豆こし餡に包まれた栗きんとんなのも嬉しいところ。栗きんとんの豊潤な味わいは新年の華やかな空気感によく合います。
他にも美しい和菓子が幾つかありました。
1月の季節の上生菓子セットのなかで目を引いたのは『雪間草』。

「雪間草」とは、一面を覆っていた雪が春の暖かさで消えかかり黒々とした土が現れるーその土に萌え出た草のことを指します。【仲春】の季語なので季節の先取りですね。
蓬を練り込んだういろう生地で小豆こし餡を包み、上に氷餅をあしらい意匠としました。

ここで、春を待ちわびる心情を詠んだ歌をご紹介いたしましょう。
花をのみ待つらん人に
山里の雪間の草の春を見せばや ー藤原家隆
まだ花が咲かないと待っている人に、山里に積った雪の合間に萌え出る若草の春を見せたいものだ
また、1月の季節の上生菓子セットには御題菓が入っていました。
2025年の御題は「夢」。色糸で雅やかに仕上げられた手毬をグラデーションが美しい練りきり製で表し『御題菓 夢手毬』の意匠としました。
📝【御題菓(おだいか)】とは
毎年1月に開かれる、天皇が指定した御題に合わせた和歌を詠み披露する官中行事【歌会始(うたかいはじめ)の儀】。その歌のテーマをもとにして作られる創作和菓子のこと。

菓銘に込めた意味をお聞きするのを忘れてしまったのが残念至極です。色艷やかな工芸品の手毬に比べ、包み暈しで仕上げられた『夢手毬』はどこか儚げな印象です。近代俳人・高浜虚子が詠んだ句をふと思い出しました。
手毬唄 かなしきことを うつくしく
子どもたちが無邪気に手毬唄を歌いながら遊んでいる光景を詠んだものです。子どもたちは何気なく歌っているのだろうが、ずいぶん悲しい内容の歌を美しく歌っていることだ…と。

中は小豆こし餡。しっとりとした食感と控えめな甘さが味わえます。
2月のベスト『早蕨』蓬入り羽二重餅製 小豆つぶ餡

左上から時計回りに
▪︎『下萌え』黒糖きんとん製 道明寺芯
▪︎『恋する気持ち』吉野羹&チョコレート羊羹
▪︎『春告鳥』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『花水仙』ういろう製 柚子あん
▪︎『早蕨』蓬入り羽二重餅製 小豆つぶ餡
▪︎『梅一輪』練りきり製 苺あん
1箱6個入り 3,200円(税込)
2月は春の兆しが見えるラインナップですね。
和菓子の世界は季節の先取りなので、冷たい冬の空気も何のその、春の訪れが楽しめます。

2月ベストは、ふんわりとした蓬入りの羽二重餅にいら粉をトッピングし、ワラビの焼き印を押して『早蕨』の意匠としたもの。
粒が大きめなので最初ゴマと勘違いしたのですが、いら粉だと知ってびっくりしました。焼き色がつくように煎ってあるので余計にゴマっぽく見えたのかもしれません。ほんとはもう少し細かいいら粉の方がワラビの焼き印がきれいに入るそうですが、手元にあったのがこのサイズのみだったとか。
これはこれで面白い効果になっていると思うのですが、三納さんは残念そうな表情を浮かべていらっしゃいました。
📝「いら粉」とは
もち精白米を蒸し上げた後よく乾燥させ、さらに粉砕し少しずつ煎りあげたもの。新引粉・真引粉とも呼ばれる。

【原材料名】砂糖(国内製造)、餅粉、小豆、卵白、白餡、寒天、よもぎ/食用色素(黄色4号、黄色5号、青1号)
中はしっとりとした小豆つぶ餡。
蓬の香りとつぶ餡って何でこんなに相性がよいのでしょう。時折こぼれ落ちるいら粉の舌触りも良いアクセントになっています。
寒気の残るなか百花にさきがけて花開き、春の訪れを知らせる「梅」は早春の定番。
梅一輪 一輪ほどの 暖かさ
と詠んだのは松尾芭蕉の弟子・服部嵐雪。
ほころぶ梅に春の訪れを見出だし、喜ぶ心情が感じられる句です。

《和の菓さんのう》さんの『梅一輪』は、ぽってりとした梅の花を意匠とした一品。
練りきりに入ったスジがまるでにっこりと微笑んでいるかのようで、梅の愛らしさそのものといったところでしょうか。梅の花を型どった押印も細やかでじっくりと眺めていたくなりますね。

中は何と!苺餡。甘さ控えめな練りきり餡×小豆あんも馴染みがよくておいしいけれど、苺あんの華やかさもこれまた絶品です。
『春告鳥』と『梅一輪』を合わせてみましたよ。

『春告鳥』とはウグイスの別名です。
早春、ほかの鳥に先駆けてさえずりはじめることからつけられたもの。「春告草」と呼ばれる梅とは好相性で[梅に鶯]という例えもあるくらいです。

《和の菓さんのう》さんのは上のきんとんが何とも繊細で惚れ惚れいたします。白と若菜色が織りまじるさまは「下萌」の風情そのものです。

3月のベスト『野遊び』浮島製&蓬羊羹製

左上から時計回りに
▪︎『筍』きな粉練りきり製 筍甘露煮入り小豆こし餡
▪︎『夢見草』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『水温む』ういろう製 ピスタチオ餡
▪︎『山笑う』きんとん製 道明寺芯
▪︎『野遊び』浮島製&蓬羊羹製
▪︎『初桜』練りきり製 小豆つぶ餡
1箱6個入り 2,950円(税込)
3月は卒業式シーズン。
蝶があしらわれた『野遊び』を見て思い出したのは、桐朋高等学校(東京都国立市)第78期卒業生の土田淳真さんの見事な答辞ですね。2024年3月2日の卒業式で読み上げられたものですが、いまだに記憶に残っています。
📝【バタフライエフェクト】
気象学者のエドワード・ローレンツが提言した「1匹の蝶の羽ばたきのような非常に小さな撹乱でも遠くの場所の気象に影響を与えるか?」に由来した言葉で、転じて “ 非常に小さな事象が因果関係の末に大きな結果につながる ” という意味合いをもちます。

《和の菓さんのう》さんは、春の山野で遊ぶ情景を黄蘗色の浮島と草色の蓬羊羹で表し、練りきりの蝶をあしらい『野遊び』の意匠としました。浮島と蓬羊羹の間にある淡雪羹の白がすっきりとした仕上がりにみせてくれています。

【原材料名】砂糖(国内製造)、白餡、小豆、小麦粉、上用粉、卵、よもぎ、寒天/食用色素(赤3号、赤106号、黄色4号、黄色5号、青1号)
ふんわりとした浮島はいつ食べてもしみじみとおいしい💕三納さん曰く、今回は卵の配合を変えて作られたそうです。以前のものよりもすっきりとした味わいに仕上がっています。
こちらは『水温む』。
『水温む』とは、春になって寒さが緩み、池や川の水があたたかな感じになってくることをいいます。「ぬるむ」の語感が好きな【仲春】の季語です。

ながれ合ふてひとつぬるみや渕も瀬も
こちらは、生涯1,700余りの句を詠んだと云われる江戸時代に活躍した女流俳人・加賀千代女の歌です。冬の凍てつくような水流も春光を浴びて穏やかさをみせているさまが窺えます。
《和の菓さんのう》さんは春の穏やかな情景を、包み暈しした水縹色に染めたういろうに波紋を描き『水温む』の意匠としました。
ういろうの上には淡紅色の氷餅を添え、暖かな春の日差しを思わせます。

中は珍しいピスタチオ餡。
時折混じるピスタチオの欠片もいいアクセントになっています。ほろ苦さとほんのりとした甘みがクセになりそう💕ピスタチオの奥深い風味にういろう生地を合わせたのはさすが!と言わざるを得ないでしょう。
ういろうのやさしい甘みはピスタチオ餡を引き立ててくれています。
4月ベスト『行く春』吉野羹製&桜葉羊羹製

左上から時計回りに
▪︎『花衣』ういろう製 さくら餡
▪︎『うららか』練りきり製 黒糖餡
▪︎『桜花』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『野辺の春』羽二重餅製 小豆つぶ餡
▪︎『行く春』吉野羹製&桜葉羊羹製
▪︎『てふてふ』きんとん製 道明寺芯
1箱6個入り 2,900円(税込)
4月の終わり頃は春暖というには気温の高い日が続きますが、まだまだ風はひんやりとして心地よい…桜の名残を楽しみながら散策したくなっちゃいますね。川沿いを歩くと、散った花弁が「花筏」となって目を楽しませてくれます。

こちらは、ひらりと舞う桜の花びらを水色が織り交じる吉野羹に浮かべ『行く春』の意匠としたもの。
よく見ると吉野羹には水面のような模様が入っていますね。散り際までも美しい桜の情景を描いた情趣ある一品です。
📝「吉野羹」とは
煮詰めた錦玉に葛粉を入れて固めたもので、少し半透明のやさしい感じの仕上がり。奈良県吉野地方が良質な葛の産地であることに由来。

【原材料名】砂糖(国内製造)、小豆、水飴、道明寺、卵白、寒天、葛、桜葉塩漬け/食用色素(赤3号、赤106号、青1号)
桜葉塩漬け入りの羊羹と吉野羹の間には淡雪羹があり、両者の食感の違いを穏やかに包み込んでいます。淡雪羹の儚げな味わいがまるで過ぎゆく春を惜しむかのようですね。
淡黄、若葉色、淡紅色の三色に染め分けされた練りきりで黒糖餡を包み『うららか』の意匠としました。

「うららか」とは春の日が麗しく和やかに照って、よろずの物が輝くさまを表します。春の美しい光景や心地よさが思い浮かぶ【三春】の季語ですね。
さて、麗しい春の情景と秘めた心境の対比を和歌にこめたのが三十六歌仙のひとり大伴家持。
[万葉集]全体の1割を超える473首が収められていることから[万葉集]の編纂したとされた人物ですね。
うらうらに照れる春日に雲雀あがり心かなしもひとりし思へば
のどかに照る春の日差しの中をひばりが舞い上がっていく。ひとりで物思いにふけっていると、もの悲しく感じることよ。
この和歌に合わせて少し陰影が感じられるように撮影しましたが、いかがでしょうか。

中はこっくりとした黒糖餡。包み暈しなので半分に割ると色彩がくっきりしますね。

こちらの『花衣』は春、和菓子屋さんの店頭でよく見かける意匠です。が、中が桜餡なのは珍しい。
ういろうのやさしい甘さに桜葉塩漬け入りの餡がよく合います。

5月ベスト『唐衣』ういろう製 白餡

左上から時計回りに
▪︎『唐衣』ういろう製 白餡
▪︎『富貴草』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『新緑』練りきり製 小豆つぶ餡
▪︎『さくらんぼ』練りきり製 フランボワーズ餡
▪︎『若楓』大納言鹿の子製&求肥
▪︎『つつじ』きんとん製 道明寺芯
1箱6個入り 2,950円(税込)
5月にして夏日が訪れた2025年。
爽やかな空気の中の5月の暑さは盛夏のそれとはまったく違いますが、まだ「暑熱順化(身体が暑さに慣れること)」が十分とはいえない頃。
日常生活の中で運動やストレッチ、入浴等をして発汗量を増やし暑さに慣れていきましょう。暑熱順化には個人差もありますが数日から2週間程度かかります。
さて、5月の代表花といえば『杜若』。
美しい杜若をモチーフにした和菓子を5月のベストとしました。

みなさんは「唐衣」と聞いて何を思い浮かべますか?
私は[伊勢物語]にて詠まれた句の枕詞です。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ
こちらは、在原業平と想定される人物が東国へ流離する「東下り」で、沢のほとりの美しい杜若を見て己の心境を歌にしたもの。
この句を詠んだ地が、愛知県知立市八橋の辺りと云われています。都に残してきた長年連れ添った妻を思い涙する心情を「かきつばた」の美しさがより一層際立たせています。

【原材料名】砂糖(国内製造)、白餡、米粉、餅粉/食用色素(赤106号、青1号)
《和の菓さんのう》さんは藤色と白の二色のういろう生地をぼかしに染め『唐衣』の意匠としました。四角いういろう生地を折り紙のように折りたたみつつ、丸めた白餡を包み込んでいます。
ほかの和菓子屋さんでも『唐衣』はこの意匠をしていますが、これは平安時代の「唐衣※」の形状に美しい杜若の姿を掛け合わせたもの。※十二単の最上層に着る丈の短い衣のこと

ういろう生地ならではの透け感が何とも雅やかな一品です。
中はあっさりとした白こし餡。もっちりとしたういろう生地との相性も抜群です。

毎年楽しみにしている『さくらんぼ』。
艶やかさも然ることながら、赤い実にほんのり杏色が混じっていることで本物と見紛う仕上がりになっています。
中がフランボワーズ餡というのも楽しい💕
晩春から初夏にかけて色とりどりの花を咲かす『つつじ』。きんとん製で華やかに表現しました。


中が道明寺なのでさっぱりといただけます。
『新緑』を青楓を型どった練りきりで表現した一品。

練りきりをよく見てみると下に錦玉羹が敷いてあります。そうすることで、凹凸のある鹿の子に安定して青楓の葉を広げることができるのでしょう。
6月ベスト『あめのいろ』ライチ風味錦玉羹&淡雪羹

左上から時計回りに
▪︎『紫陽花』羽二重餅製 小豆つぶ餡
▪︎『撫子』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『青梅』ういろう製 梅甘露煮入り白餡
▪︎『あめのいろ』ライチ風味錦玉羹&淡雪羹
▪︎『沢蛍』本葛製 小豆こし餡
▪︎『枇杷』ういろう製 白餡
1箱6個入り 2,950円(税込)
『あめのいろ』は以前、三納さんが水玉がテーマのイベントで製作した『にじいろ』をベースに色合いを変えて作られた一品です。

星ヶ丘駅テラスのバルーンを使った装飾·をフローティングバブルにインスピレーションを受けて誕生した御菓子だそうですよ。

季節によってフローティングバブルは色合いを変えるので『にじいろ』はカラフルな色合いでしたが、『あめのいろ』は夏の雨をイメージした色合いとなっています。

【原材料名】砂糖(国内製造)、水飴、白餡、卵白、洋酒、ライチ果汁、寒天/食用色素(赤102号、赤3号、赤106号、黄色4号、黄色5号、青1号)
正面から見るとふんわりと水色が浮かんでいる意匠となっていますが、断面を見るといくつもの水色の連なりがあることが分かります。
淡雪羹の清らかな白が美しい…口のなかでシュワッと溶けゆく感じも好ましく、錦玉羹のプリッとした食感とのバランスも絶妙です。しかも錦玉羹はライチ風味。さっぱりとした甘みで清涼感をもたらします。
📝「淡雪羹」とは
煮詰めた錦玉に泡立てた卵白(メレンゲ)が入ったもの。卵白が入るため白っぽい仕上がりになります。
ちなみに羊羹に卵白(メレンゲ)が入ったものを「東雲羹(しののめかん)」といい、求肥に白餡、泡立てた卵白(メレンゲ)を入れて練ったものは「雪平(せっぺい)」と呼びます。

萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌(あさがお)の花
山上憶良が秋を代表する美しい花のひとつとして詠んだため秋の花の印象が強いのですが、実は撫子は6月~10月と花のシーズンが長い多年草となります。
その可憐な花姿は和歌だけではなく、和菓子職人さんの心をも動かします。この時期から秋口にかけ撫子をモチーフとした和菓子を見かけることも多くなるでしょう。

《和の菓さんのう》さんの『撫子』は、はんなりとした撫子色と白の練りきりに型押しされた繊細な細工の花びらが目を引く一品です。
『撫子』の特徴とされる花びらの深い切れ込みが型押しで表現され、凛とした風情を醸し出しています。

写真だと分かりづらいのですが、撫子型の花弁にほんのりと撫子色が色づいています。真っ白な練りきりなのに色が浮かび上がっているのが不思議で三納さんにお尋ねしてみました。
「裏打ち」という技法を使って撫子の花弁の部分に違う色が出るようにしているそうです。白のベースに色がほんのりと入ることでより撫子の凛とした佇まいが伝わってきます。

7月のベスト『香露ーmangoー』烏龍茶風味錦玉製 芒菓

左上から時計回りに
▪︎『香露ーmangoー』烏龍茶風味錦玉製 芒菓
▪︎『宵花火』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『銀河』ライチマスカット錦玉製&小豆羊羹
▪︎『朝の花』ういろう製 すだち餡
▪︎『水芙蓉』本葛製 白餡
▪︎『青楓』 練りきり製 小豆つぶ餡
1箱6個入り 3,100円(税込)
まるで台湾で有名な「芒果(マンゴー)かき氷」を思わす風情の『香露ーmangoー』。海外でも和菓子イベントやセミナーなど活躍を広げている三納さんならではの一品です。

日本のかき氷は氷そのものに味はついてないですが、台湾のかき氷はミルク味・マンゴー味・ミルクティー味・ヨーグルト味…etc. 氷自体に味がついているそう。
《和の菓さんのう》さんの『香露ーmangoー』もこれに倣って錦玉羹に烏龍茶の風味が加わり、異国情緒が楽しめる味わいとなっています。


錦玉羹の透明感を生かして銘々皿の模様を透かせてみると、また違った風情が楽しめるのも魅力のひとつ。

はんなりとした薄紫のういろうで白餡を包んだ『朝の花』は「朝顔」を模した一品。

【初秋】の季語となります。
毎年恒例の『宵花火』。
包み暈し&窪みの技法で「花火」を表す御菓子を他の和菓子職人さんのものでも存じ上げていますが、《和の菓さんのう》さんの『宵花火』は風情が感じられる色彩で好きなんですよね💕

以前、放送で紹介されていた『宵花火』の作り方を改めてここに記しておきますね。
6色の練りきり餡を組み合わせ、色が混じらないようにして掌で均等にひとつの丸い形にする。
6色の餡玉を白餡で半包みにする。
均等に潰して表面を白餡、裏面を6色とする。(6色側に)餡を入れて包餡。
包みぼかしの技法で形を整える。
三角形の棒で、円の中心から32本の線を均等に引く。
押し棒で線と線の間に、互い違いになるように窪みを入れていく。
最後に金箔をかけて完成。
8月のベスト『桔梗』カルピス羹 和梨コンポート入り

左上から時計回りに
▪︎『爽夏』ミント風味錦玉製 パイナップル餡
▪︎『金魚鉢』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『西瓜』スイカ錦玉製 羊羹
▪︎『涼』みぞれ羹 大納言鹿の子製
▪︎『万緑』きんとん製 道明寺芯
▪︎『桔梗』カルピス羹 和梨コンポート入り
1箱6個入り 2,900円(税込)
桔梗は、万葉集で山上憶良が詠んだことで知られる美しい秋の七草のひとつ。
萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花
ここで詠まれている「朝貌(あさがお)の花」は桔梗を指しています。《和の菓さんのう》さんは『桔梗』を爽やかなカルピス羹で表現しました。

実はこの『桔梗』、昨年はレモンピール入りで販売されていました。

今年は和梨コンポート入りとなっています。
どうやらレモンピールがカルピス羹の食感とアンバランスだと感じたそうで、もっと相性のよい素材として和梨コンポートを選ばれたとか。
レモンピールも爽やかさと苦みのバランスが絶妙でしたので、どちらもそれぞれの良さがあっていいなぁとは思っています。

【原材料名】砂糖(国内製造)、水飴、乳酸菌飲料、和梨コンポート、寒天/食用色素(赤106号、青色1号)
色合いも少し今年ははんなりしていますね。
和梨コンポートのやさしい味わいにぴったりな風合いです。
9月のベスト『水月』栗入り黒糖羊羹

左上から時計回りに
▪︎『焼き栗』栗きんとん
▪︎『桔梗』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『有りの実』ういろう製 梨コンポート入り白餡
▪︎『花野』蓬羽二重餅製 小豆つぶ餡
▪︎『水月』栗入り黒糖羊羹
▪︎『まさり草』きんとん製 道明寺芯
🔹1箱6個入り 2,900円(税込)
9月のベストは、水面に映った月の風情を栗入り羊羹で見立てた一品。『水月』という菓銘の響きがなんとも風雅で素敵ですね。

池や湖などに映った月の姿、水面にぼんやりと映える情景を錦玉羹の揺らめきを生かしてお作りになっています。
秋は空気が澄んでいて月が美しくみえる季節。
盃に月を映して呑んだりする慣わしもあるそうです。風流な楽しみ方ですよね。
これは、ぜひやってみたいもの。ちょうど10月は「十五夜」があります(2025年は10月7日)。
盃に月を映しながら静謐さを味わうのも良いかもしれませんね。

【原材料名】砂糖(国内製造)、黒砂糖、小豆餡、栗、水飴、ラム酒/食用色素(黄色4号)
しっとりとした栗入り羊羹に錦玉羹のプリッと感がいい塩梅。二層式ならではの食感の違いが楽しめます。羊羹は甘さ控えめですね。
栗餡と栗の甘露煮のふくよかな甘さがいいアクセントになっています。

アングルを変えて撮影してみると、錦玉羹に浮かぶ栗餡の層と栗入り羊羹の層がくっきりと分かりますね。
栗の甘露煮も大きめで嬉しいかぎり。

10月ベスト『こうもり』栗羊羹製 ラム酒&黒糖

左上から時計回りに
▪︎『こうもり』栗羊羹製 ラム酒&黒糖
▪︎『かぼちゃ』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『おばけ』ういろう製 れもん餡
▪︎『紫式部』練りきり製 小豆つぶ餡
▪︎『秋桜』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『栗雫』栗きんとん羊羹製 栗甘露煮入り
🔹1箱6個入り 3,000円
10月はハロウィン仕様の和菓子たち。
「ジャック・オー・ランタン」を型どった『かぼちゃ』や竹炭で顔が描かれた『おばけ』など、見ているだけで楽しくなってしまうラインナップですね。

その中から10月ベストは『こうもり』を選びました。

表面を細かな模様で仕上げ、怪しげなハロウィンの夜を演出しました。
夜空の黒は小豆餡なので透明度が感じられる、やや紫がかった黒に対して『こうもり』は漆黒。この色のコントラストが、煌々と照らす月に『こうもり』を見事に浮かび上がらせています。

【原材料名】砂糖(国内製造)、黒砂糖、小豆餡、栗、水飴、ラム酒/食用色素(黄色4号)、竹炭
横から眺めてみると、羊羹の層、錦玉に浮かぶ栗の層、エンボス加工のような表層がくっきりと見てとれます。何とも手間隙かかった作品に感心しきり。
和菓子は五感の芸術といいますが、季節の移ろいや行事ごとをこうして視覚でも味わえるのがいいところなんですよね。
もちろん、味わいはこの上なし!プリッとした錦玉羹となめらかな羊羹、ふわっと立ち上る栗の風味が堪能できる一品です。


11月ベスト『翡翠の実』ピスタチオの浮島製&小豆羊羹

左上から時計回りに
▪︎『黄金刻』ういろう製 薩摩芋餡
▪︎『山茶花』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『銀杏』大納言鹿の子&羊羹
▪︎『唐錦』練りきり製 ほうじ茶餡
▪︎『翡翠の実』ピスタチオの浮島製&小豆羊羹製
▪︎『錦秋』きんとん製 小豆つぶ餡
🔹1箱6個入り 3,000円
11月のベストは浮島製の『翡翠の実』。
この時期の浮島といえば梅幸茶色(茶みを含んだ淡い萌黄色)の『山路』が思い浮かぶのですが、今年は趣向を変えていて創作の妙が感じられます。

ピスタチオグリーンと呼ばれる艶やかな色合いを『翡翠の実』と銘打ち、浮島製で仕上げました。ピスタチオの欠片がちょこんと乗っているのも愛らしいですね。
ふんわりと柔らかな質感が目にもやさしい…柔らかさが仇となり、持ち帰りの衝撃で若干ひび割れてしまったのはご愛嬌。ピスタチオが練り込まれた浮島はふんわりと香ばしい風味がします。
高タンパク質、食物繊維も多くビタミン・ミネラル豊富なピスタチオは「ナッツの女王」とも呼ばれているんですよ。

【原材料名】砂糖(国内製造)、白餡、小豆、ピスタチオ、卵、小麦粉、上用粉、洋酒、寒天/食用色素(黄色4号、黄色5号、青1号)
浮島に包まれていたのは小豆羊羹。
てっきりこし餡だと思っていたので嬉しい誤算です。透明感ある紫がかった餡の色はほれぼれするほど美しい。いつまでも眺めていたくなります。

12月ベスト『枯野』きんとん製 道明寺芯

左上から時計回りに
▪︎『花水仙』羊羹製 柚子餡
▪︎『玉椿』練りきり製 小豆こし餡
▪︎『雪だるま』練りきり製 フランボワーズ餡
▪︎『落葉』大納言鹿の子製
▪︎『千両』練りきり製 抹茶餡
▪︎『枯野』薯蕷きんとん製 道明寺芯
🔹1箱6個入り 3,300円
12月は、冬枯れの侘びた風情のものと、早春を待ちわびる可憐な草花のラインナップとなりました。
愛らしい雪だるまも定番ですね💓

「枯野」とは、草の枯れ果ててひっそりとした冬の野のことを表す言葉。
うら寂しい風情ですが、その静けさも清められた部屋で新年を迎えるひとときに置き換えると何だか心地よいものです。

【原材料名】砂糖、小豆、白餡、道明寺、山芋
《和の菓さんのう》さんの『枯野』はしみじみとした意匠です。『枯野』の情趣に合わせて「松と鶴」の紗紙に乗せてみました。
浪花鼠(色)の繊細なきんとんに白練(色)のきんとんが微かに混じり、黒ごまが散らして仕上げた一品。この独特な渋い色合いは、小豆の色だそうですよ。

中は道明寺餅。あっさりとしたきんとん餡に道明寺のほのかな甘みが絡み合います。

いかがでしたでしょうか。
新年の華やかな干支菓から始まり、侘びた風情の和菓子で締めくくった2025年。来年はどんな素敵な和菓子に出会えるだろうと、今からワクワクしております。
2026年も心身とも健やかな年でありますように。
どうぞ皆さま、よいお年をお迎えください。
今回ご紹介した和菓子職人
フリーランス和菓子職人《和の菓さんのう》
□製造者:フリーランス和菓子職人 三納寛之
□住 所:岐阜県瑞穂市野白新田337-1-102
□電話番号:090-3834-3444
□定期販売日・場所
◇ 毎月第2火曜日・第3日曜日 名古屋三越星ヶ丘テラス The Kitchen2階
◇ 毎月第4水曜日 岐阜県本巣市atelierフェリス
※インスタグラムで予約可
#今年の振り返り
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どうぞよろしくお願いします。