【5分でわかる企業分析】ユニ・チャーム|なぜ「紙おむつの会社」は少子化に負けないのか?
「ユニ・チャーム」と聞いて、何を思い浮かべますか?
たぶん多くの方が、赤ちゃん用の紙おむつやナプキンを思い浮かべるはずです。
そして、こう続けて思うのではないでしょうか。
「日本は少子化なんだから、この会社は先細りでは?」
正直に言うと、その理解は半分しか合っていません。
ユニ・チャームは、国内の赤ちゃん用紙おむつでは今も市場シェアNo.1を守っています。
その一方で、実は事業の重心を「大人用」と「ペット用」に移しています。
さらに「アジアの新興国」へも重心を移しています。
少子化という向かい風のすぐ横で、まったく別の追い風を自分でつくりにいっている。
このギャップこそ、今日の主役です。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
この会社、何をしてる?
ユニ・チャームは、赤ちゃん用紙おむつ・生理用品・大人用の排泄ケア用品・ペット用品などをつくる、衛生用品メーカーです。
事業の柱は大きく3つあります。
ひとつは「パーソナルケア」。
赤ちゃん用紙おむつのムーニー・マミーポコ、生理用品のソフィ、大人用の排泄ケア用品ライフリーなどを含む事業です。
会社全体の売上のおよそ8割を占めます。
もうひとつが「ペットケア」。
銀のスプーン・グラン・デリなどのブランドで、犬猫用のフードやペットシートを手がけています。
売上構成比はおよそ2割です。
残る「その他」は、不織布・吸収体の加工技術を活かした産業資材事業で、全体の2%程度にとどまります。
お金を払っているのは、パーソナルケア・ペットケアともに世界中の家庭です。
ただしペットケアの財布のひもを握るのは、飼い主というもうワンクッション置いた顧客になります。
地域別に見ると、日本の売上は342,504百万円です。
一方で中国・アジア・その他地域の合計は600,000百万円を超えています。
売上のおよそ64%は、すでに海外で生まれています。
「日本の紙おむつ屋さん」というイメージのまま止まっていると、この会社の実像を見誤ります。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
実はここが儲かっている
ユニ・チャームを語るうえで欠かせないのが、「縮む市場」の中でシェアを守り切っている胆力です。
日本の紙おむつ市場は、少子化によって縮小傾向が続いています。
それでもユニ・チャームは、ムーニーとマミーポコという2ブランドで、国内市場シェアNo.1を守り続けています。
意外なのはここからです。
会社が本当に力を入れているのは、実は「国内の赤ちゃん」ではありません。
タイ・インドネシア・ベトナムなど東南アジアでは、大人用の排泄ケア用品(ウェルネスケア)の需要が高まっています。
ユニ・チャームはここで商品ラインアップを拡充しています。
あわせて日本式のケアモデルの普及を進めています。
高齢化は、日本だけの現象ではありません。
その未来を先取りする形で、大人用排泄ケアの種をアジアにまいています。
もうひとつの成長エンジンがペットケアです。
2025年12月期は、パーソナルケア事業が前期比6.3%の減収となりました。
そんな中、ペットケアは唯一5.0%の増収を記録しています。
中国と東南アジアを将来の成長市場と位置づけています。
経営資源を積極的に投下する方針を明らかにしています。
「紙おむつの会社」が、赤ちゃんだけでなく大人とペットにも賭けている。
これが今のユニ・チャームの実態です。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
なぜこの企業は強い?
ここまで読むと、「じゃあ絶好調なんだね」と思うかもしれません。
ただ、正直にお伝えする必要があります。
2025年12月期のユニ・チャームは、実は減収減益でした。
売上高は前期比4.4%減、コア営業利益は同21.4%減という結果です。
主な要因は3つです。
中国で、生理用品の品質・廃棄管理をめぐる風評被害が繰り返し起きたこと。
2024年11月・2025年3月・10月と、断続的に発生しています。
アジアで、値下げ競争が激しくなったこと。
そしてインドのGST(物品・サービス税)制度改正です。
これにより69億2,000万円の評価損失を計上しました。
つまり2025年は、戦略が間違っていたのではなく、想定外の逆風が重なった年でした。
ここにユニ・チャームの強さが見えてきます。
会社は次の2026年12月期について、売上高1兆100億円(前期比6.8%増)を予想しています。
コア営業利益は1,360億円(同24.9%増)を見込んでいます。
そして「アジア事業の回復」を成長ドライバーに掲げています。
日本・中国・アジア・その他という4つの地域。
そしてパーソナルケア・ペットケアという2つの事業。
これを同時に持つ分散構造だからこそ、一時的な逆風を受けても致命傷になりにくいと考えられます。
これが、シェアNo.1ブランドと財務体力を土台にした、ユニ・チャームの強さです。
配当については、24期連続で増配を続けています。
2025年12月期の年間配当は1株18円で、前期から3.4円の増配です。
業績が落ち込んだ年でも増配を止めない姿勢は、経営の自信の表れといえます。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
どういう人が向いてる?
ユニ・チャームと相性が良いのは、次のようなスタイルの投資家です。
アジアの高齢化・ペット市場の拡大という、10年単位のテーマに賭けたい人
国内シェアNo.1ブランドという守りの強さを評価できる人
業績の一時的な落ち込みより、中期の戦略転換ストーリーを重視できる人
24期連続増配のような、株主還元の継続性を評価する長期志向の方
ユニ・チャームは次期の方針として、ウェルネスケアでは軽失禁市場の拡大と大人用おむつの機能拡充を掲げています。
ペットケアでは、プレミアム市場の拡充と新市場創造を掲げています。
「今の数字」ではなく「会社が自分で描いている次の一手」を見たい方には向いています。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
どういう人はやめておいた方がいい?
逆に、次のようなスタイルの方には正直あまり向きません。
これは「買うな」ではなく、期待値とのズレの話です。
四半期・単年の業績を細かく気にする方には向きません。
2025年12月期は減収減益であり、風評被害や制度改正のような読みにくい要因が業績を左右する構造だからです。
中国・アジアのカントリーリスクを避けたい方にも向きません。
売上の約64%が海外であるため、特定国での風評・制度変更が業績に直結します。
紙おむつ屋だから安定・安全と単純に考えている方にも注意が必要です。
実際には海外比率・事業ミックスの複雑さが増しており、中身は見た目より変化の速い会社です。
短期の値上がり益を狙う方にも向きません。
会社が描く回復シナリオは次期以降の話であり、成果が出るまで時間軸を要します。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
まとめ
ユニ・チャームを一言で言うなら、紙おむつの会社の顔をした、少子化を戦略で乗り越えようとしている企業です。
国内の赤ちゃん用紙おむつでシェアNo.1を守りながら、アジアの大人用排泄ケアとペットケアに次の成長を賭けています。
2025年12月期は中国の風評被害やインドの制度改正が重なり、減収減益となりました。
「知っているつもりだった会社」に、こんな一面があった。
この発見こそ、今日お伝えしたかったことです。
強みは国内シェアNo.1ブランドの安定収益、そしてアジア・大人用・ペットという3つの成長軸への戦略的シフトです。
一方で、中国・アジアのカントリーリスクや、単年の業績の振れ幅は頭に入れておく必要があります。
相性が良いのは、アジアの高齢化・ペット市場という長期テーマに賭けたい方、株主還元の継続性を評価する長期志向の方です。
逆に、単年の業績変動を気にする方・短期の値上がりを狙う方には、別の銘柄のほうが合うかもしれません。
※この章の数値は 2025年12月期 決算短信 より
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出典
2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
https://www.unicharm.co.jp/content/dam/sites/www_unicharm_co_jp/pdf/ir/library/earnings/2025年12月期 決算短信〔IFRS〕(連結).pdf
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